全国高校サッカー選手権大会ついて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第153回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは全国高校サッカー選手権大会について。多くの競技と同じく新型コロナの影響で開催の可否が検討されている全国高校サッカー選手権大会。「開催されるのか? 中止なのか?」 不安を抱える選手たちに宮澤ミシェルがエールを送った。

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インターハイの中止が決まって、高校野球は春のセンバツに続いて、夏の甲子園も開催が見送られた。誰が悪いわけではないけれど、最終学年の子どもたちの気持ちを慮ると、彼らにかける言葉は浮かばないよ。それぞれ、代替大会が開催されそうなのがせめてもの救いだよな。

高校野球は最大の目標の大会がなくなってしまったけれど、高校サッカーに励んできた選手には、全国高校サッカー選手権という高校サッカー生活で最大の目標は残っている。今も、新型コロナという脅威は去ってはいないけれど、気持ちを切り替えてしっかり前を向いていると信じているよ。

そうじゃなきゃ、彼らだってやり切れないだろうからね。いつも通りの練習をするのは難しい状況だけれど、目標を見据えて練習でしっかり汗を流してほしいな。

全国高校サッカー選手権は、多くの都道府県では9月以降に予選があって、年末年始に本大会が行なわれるけれど、その開催可否は8月に検討するようだね。

いまのところ「安全第一」で開催の方向で検討するということだけど、「安全第一」なのは当たり前。子どもたちの健康を最優先にしながら、どうやれば開催できるのかを徹底的に話し合ってもらいたい。

全国高校サッカー選手権は、甲子園と同じで人生での思い出になる舞台だからね。出場できた人だけではなく、出場できなくても予選に挑んだ日々は、歳を重ねるほど貴重な宝物になる。

出場選手のなかにはJリーグや大学からスカウトされることを狙っている子もいれば、この舞台を最後に競技としてのサッカーから離れる子もいる。高校で競技としてのサッカーは引退という選手ほど、この舞台にかける思いは強いよね。

もちろん、上のレベルを目指している選手にしても、いまは通過点に過ぎないかもしれないけど、現役を退いた後になれば、かけがえのない思い出になる。だからこそ、すべての高校生が思いっ切りプレーできる場を、どうにか実現させてほしいよ。

スカウトの立場からすれば、高校選手権が行なわれようと、中止になろうと、目星をつけている選手は基本的には変わらないんじゃないかな。

最終学年になってから急激に伸びた選手は、もし高校選手権が行なわれなければ、才能を見落とされるかもという心配がある。でも、これは杞憂(きゆう)だろうね。急成長する選手は評判になるし、その声はスカウトの耳にも届くものなんだよね。

それはスカウトが、高校生の指導者との関わりを大事にしながら情報を収集しているから。それに選手の能力を判断するときは、ひとつの大会でのパフォーマンスだけではなく、普段からのプレーを見て決めている。紅白戦でのプレーぶりや、練習に取り組む姿勢。そういういところからしっかり選手をチェックしているんだよね。

じゃあ、スカウトには大舞台は不要かといえば、そうでもないんだな。たくさんの観客がいたり、追い込まれたりという状況は、普段の練習では見られない選手の一面を浮かび上がらせたりする。目星をつけている選手がどんな一面を見せるのか。それはポジティブなこともあるだろうし、ネガティブな場合もあるだろうけど、つぶさに観察しながらそういう面を見ていく。

誰でも彼でも獲得できるなら、そこまで見て判断する必要性はないんだけど、Jリーグのクラブにしろ、大学のチームにしろ、選手数の『枠』は決まっている。どの高校生をスカウトして自チームに来てもらうかで成績は変わる。だからこそ、必死でいろんな面を見ているんだよな。

高校生の時期って、精神的に揺らぐ時期でしょ。自分に自信がすごくあったり、逆に割に評価されているのに自信が持てなかったりして。僕も高校から大学に進むときに、進路を含めてすごく悩んだんだよね。決断が毎日のようにコロコロと変わっちゃうくらい。

きっと人生で初めて経験する分岐路だからだよね。それまでは将来というものは漠然としていたのが、高校の最終学年になれば、すぐそこにある未来になる。どんな選択をすれば、夢や目標に近づくのか。どんな人生を歩んでいきたいか。それを考えたら揺れるのも仕方ないよね。

そういう不安定な時期に、新型コロナ禍という前例のない事態が起きて、彼らは将来についてもすごく不安のなかにいると思うんだ。全国高校サッカー選手権が行なわれれば、ひとつの救いにはなるはずだよな。それだけに大会開催を実現できるように、僕にできることがあればしっかりサポートしていきたいと思っているんだ。

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