古巣レアル・マドリーとも対戦したマジョルカの久保(右)。チームは残留争いの真っただ中だが、そのなかでも質の高いプレーを続けており、ビッグクラブも注目の選手に

新型コロナウイルスの影響で中断していた欧州フットボールの各国リーグが、続々と再開している(フランス・リーグ1やオランダ・エールディビジなどは今季の打ち切りを正式に決定している)。

本来ならすでにシーズンは終わり、移籍市場がにぎわい始めているところだが、今季はまだ消化試合を残しており、日本人選手の動向も気になるところだ。

推定市場価値(ドイツの移籍専門サイト『transfermarkt.com』を参照。7月3日時点、以下同)が最も高い日本人選手は、ポルト(ポルトガル)の中島翔哉(25歳)で1600万ユーロ(約19億3000万円)だ。

日本代表の背番号10をまとう小柄なアタッカーは、今季開幕前に2度の欧州制覇を誇る名門に加入するも、セルジオ・コンセイソン監督の信頼を得られず、レギュラーにはなれていない。中断明けのリーグ戦でも全6試合を欠場。新型コロナウイルスの影響を考慮し、出産直後の妻と自宅で療養しており、チームへの合流を見送っていたという。

この原稿を書いている時点で、チームの施設でのトレーニングを再開したばかりと報じられている。いち早くコンディションを整えて、主に中島の守備面に不満を持っているとされる指揮官との関係を修復し、名門でも存在感を示すことができるだろうか。

推定市場価値で次点の1350万ユーロ(約16億3000万円)の日本人選手はふたりいる。久保建英(たけふさ・19歳)と冨安健洋(たけひろ・21歳)──日本サッカー界の未来を担う攻守の若きトップ選手だ。

昨夏にレアル・マドリー(スペイン)に移籍し、その後にマジョルカ(スペイン)へ期限付きで移った久保は、新天地でほぼ毎試合に出場。リーグが中断される直前のエイバル戦では決勝点を奪うなど、主力と目されるようになった。

リーグ再開後は、ユース時代を過ごしたバルセロナや現在の所属元であるマドリーとの試合を含め、全7試合に出場。直近のセルタ戦では、残留を争うライバルを相手に仲間の2得点をアシストして、5-1の勝利に貢献している。

そんな"日本の至宝"には、移籍の噂が絶えない。今季終了時に所属元のマドリーへいったん戻るが、その後の行き先の候補として、ドルトムント、ACミラン、レアル・ソシエダ、パリ・サンジェルマン、マジョルカ(再ローン)などが取り沙汰されている。

一方、昨夏にボローニャ(イタリア)へ移籍した冨安は、堅守の伝統を誇るイタリアでDFとして成長を続けている。ただし、ポジションは本来のCBではなく右SB。現役時代に一線級の左SB兼CBとして鳴らしたシニシャ・ミハイロビッチ監督の下、プレーの幅を広げるとともに、強力な敵とマッチアップしながら力をつけている。

セリエA再開初戦となったユベントス戦でも右サイドの守備を任され、クリスティアーノ・ロナウドと対峙(たいじ)。チームは0-2で敗れたものの、翌日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、「ロナウドを向こうに回しながら、うまく対処。どんなときも警戒を解かなかった」と評し、チーム最高点を与えている。目標のEL出場権獲得に向けて、厳しい日々が続いていく。

セリエA第28節で、吉田(左)が所属するサンプドリアと対戦したボローニャの冨安(右)。本来のポジションではないSBでの出場も、評価を高めている

アジア屈指の守備者になりつつある冨安には、ローマやミランといったイタリアの名門や、吉田麻也の古巣サウサンプトンなどが熱い視線を送っているようだ。もっともボローニャも重要な戦力の放出は望んでおらず、残留の線が濃厚か。

続いて推定市場価値4位の日本人選手は、リバプール(イングランド)の南野拓実(25歳)で1000万ユーロ(約12億円)だ。レッドブル・ザルツブルクの一員として出場した今季の欧州CLで、欧州王者リバプールを相手に活躍し、冬のマーケットでそのリバプールに獲得された。だが、ワールドクラスの選手がそろうチームでは出番が限られ、中断前のリーグ戦では1度の先発と3度の途中出場にとどまっていた。

再開初戦となったエバートンとの"マージーサイドダービー"(0-0)には先発したが、これといったインパクトを残せず、ハーフタイムに交代。30年ぶり19度目のリーグ優勝を決めた翌31節のクリスタル・パレス戦では、チームが4点を奪った後の終盤に途中出場している。

欧州とイングランドの覇者リバプールに入団したばかりの南野には、さすがに移籍の噂は聞こえてこない。文字どおり、世界最高のチームで定位置を確保できるようになれば、それに勝る驚きはない。

推定市場価値800万ユーロ(約9億7000万円)の鎌田(かまだ)大地(23歳)は、日本人として第5位の評価額ながら、状態は一番いいかもしれない。昨夏に所属元のフランクフルト(ドイツ)に戻り、長谷部誠と共にレギュラーとして活躍。

特に中断明けは、第28節フライブルク戦と第29節ボルフスブルク戦で連続得点を記録してどちらもマン・オブ・ザ・マッチに選出されるなど、リーグ終盤に白星を増やしたチームを牽引(けんいん)した。

この目覚ましい活躍により、ドイツの大衆紙『ビルト』は鎌田の特集を組んだほど。紙面では、コンディションのよさ、指揮官からの信頼、アシスト数の多さや高いパス精度などが言及されている。

2017年7月に鎌田を獲得したフランクフルトは、昨季だけシント・トロイデンに期限付きで貸し出したものの、今季のパフォーマンスを受けて21年夏までの契約を延長するもよう。監督や仲間にも恵まれている現クラブで、さらなる飛躍を遂げると信じたい。