渋野日向子。1998年11月生まれ、21歳。2018年にプロテスト合格。ファイナルQT40位となり、2019年JLPGAツアー前半戦の出場資格を得ると、5月の公式戦・ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップで初優勝。7月の資生堂アネッサレディスオープンで2勝目を挙げると、翌月、海外初試合となった全英AIG女子オープンで優勝。2019年は最終的に国内4勝、海外1勝を挙げた。ロレックスランキング13位(8月17日時点)

昨年、日本人女子選手として樋口久子氏以来となる42年ぶりのメジャー制覇を遂げた渋野日向子が、8月20日に開幕する全英AIG女子オープンで連覇に挑む。

渡英直前、リモート会見に臨んだ渋野は強い意気込みをこう言葉にした。

「2連覇のチャンスがあるのは私だけ。(コロナ禍によって)大変な思いをしている方々に、プレーで勇気や笑顔を与えられたら」

今年の開催コースであるスコットランドのロイヤルトゥルーンGCは湾に面したリンクスコースで、林間コースで好天に恵まれた昨年大会(イングランド・ウォーバーンGC)とは異なり、スコットランド特有の強い風や目まぐるしく変化していく天候との戦いでもある。穴ぼこのように開いたポッドバンカーも点在し、コースの形状はトリッキーだ。

渋野にとってリンクスコースは、前哨戦であるASIスコットランド女子オープンが初めての経験となった。結果は、14オーバーの予選落ち。2日間でとったバーディーはひとつと、渋野自身も「いや~、しんどかったですね」と苦笑いするしかないほど、初リンクスに打ちのめされた。

しかしリンクスを一度経験したことで、自身の課題も見えた。「今、私が直せること」としてグリーン周りを挙げ、本番までにマネジメントの修正を行なう。

リンクスでは、風に負けない低い弾道のボールも求められるが、その点に関してもぬかりなく練習してきたことを渡英前に打ち明けていた。また昨年同様、キャディバッグを担ぐのが師匠の青木翔コーチであることも渋野には心強いだろう。

「いろいろ青木コーチと相談しながら、ひとつひとつのショットの正解を見つけていきたいです」

新型コロナウイルスの感染拡大により、国内ツアーの開幕が遅れに遅れたことで、渋野は長いオフの期間に肉体とスイングの改造に取り組み、アプローチのバリエーションを増やしてきた。

また、緊急事態宣言が下されていた4月から5月にかけては、練習の量を意図的に減らし、球を打つのは1日せいぜい1時間から2時間程度。その狙いを青木コーチはこう話していた。

「昨年末から3年計画でトレーナーさんについてもらって、スピードとパワーを重点的にアップするメニューに取り組んできました。しかし、コロナの不安がある中で、シーズンが開幕すると来年末まで1年半は走りっぱなしになる。練習をやり過ぎると身体と気持ちがとても保てません。現時点では手綱を緩めた形で練習しています」

およそ三ヶ月遅れで開幕した今季、初戦のアース・モンダミンカップでは予選カットラインに一打及ばず、予選落ち。いつも明るく笑顔を絶やさない渋野も、その日だけは声を落とした。

「このオフにやってきたことが、すべて意味のないことだったのかなと思うぐらいの内容でした。練習をたくさんしても、試合でできなければ意味がない。死ぬほど練習しなきゃいけないんだなって......」

そして、「試合勘を取り戻すのに、時間がかかりました」と、いつ開幕するのか先の見えない中、自粛期間を過ごしていた影響も否定しなかった。

全英AIG女子オープンの前週に、自身今季2試合目となるASIスコットランド女子オープンへの参戦を決めたのは、初戦の失敗を教訓に、英国のコースに慣れることと共に、試合勘を取り戻す目的もあるはずだ。

英国で2戦を戦ったあと、渋野は国内には戻らず、米国に渡って9月の「ANAインスピレーション」(カリフォルニア州ミッションヒルズCC)、10月の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」(ペンシルバニア州アロニミンクGC)と、海外メジャー2試合に備えることも表明している。「チームしぶこ」が長期的な目標に掲げるのが、五大メジャーの全制覇である。

渋野は言う。

「自分が何かを達成することで、喜んでくださる方がいる。あと四つ、成し遂げて違う世界を見てみたい」

畑岡奈紗。1999年1月生まれ、21歳。2016年10月、17歳263日でJLPGツアー公式戦の日本女子オープン優勝。史上初めて、アマチュアで公式戦を優勝した選手となった。翌シーズンからはUSLPGAに参戦。現在まで、JLPGAツアー5勝(うち4勝が公式戦)、USLPGAツアー3勝を挙げている。ロレックスランキング5位(8月17日時点)

河本結。1998年8月生まれ、21歳。2018年にプロ転向。ステップアップツアーで4勝を挙げ、賞金ランキング1位となる。2019年3月のアクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKIでJLPGAツアー初優勝。2019年の賞金ランキングは6位。2020年からは主戦場をUSLPGAツアーに移す。ロレックスランキング63位(8月17日時点)

全英AIG女子オープンに出場する日本人選手は他に、渋野と同じ黄金世代(1998年度生まれ)から、すでに米ツアーで3勝を挙げている畑岡奈紗と今季から米国を主戦場とする河本結、アマチュア時代の14年に、KKT杯バンテリンレディスにおいてJLPGAツアー史上最年少となる15歳293日で優勝した勝みなみ。さらには怪我から復帰後好調の野村敏京にベテランの上田桃子、1999年生まれの稲見萌寧の7人が参戦予定だ。

畑岡は、ASIスコットランド女子オープンで、野村とともに日本人選手最高位となる1アンダー12位でフィニッシュ。現在USLPGAツアーの賞金ランキングで2位につけており、渋野に先を越されたメジャータイトルに対し「もし優勝できるチャンスがきた時は、絶対に獲りたい」と意気込む。

「最低1勝」を今季の目標に掲げて海を渡った河本は、米女子ツアーが再開された試合で4位に入った。今季はここまで4大会に出場して、トップ10は2度。調子を上げてきているだけに、渋野に続く快挙に期待したい。

日本勢の前に立ちはだかる海外選手は、ツアー再開後2大会連続優勝のダニエル・カンをはじめ、テニスの全豪オープン・男子シングルスを制した父を持ち、渋野と同い年のネリー・コルダ(アメリカ)、成長著しいブルック・ヘンダーソン(カナダ)あたりか。

世界のトップ選手と競演し、もはや日本人選手によるメジャー制覇が奇跡でもなんでもないことを証明する4日間を期待したい。

<メジャー>全英AIG女子オープンはWOWOWで連日生中継!

大会連覇を狙う、スマイリングシンデレラ渋野日向子! また、エース畑岡奈紗らを筆頭に、日本勢は総勢7名がメジャー制覇に挑む! 今シーズンのメジャー初戦、ついに開幕!

・第1日 [WOWOWライブ] ※無料放送
【前半】8月20日(木)夜7:00【後半】8月20日(木)夜11:00 
・第2日 [WOWOWライブ]
前半】8月21日(金)夜7:00【後半】8月21日(金)夜11:00 
・第3日 [WOWOWライブ]
【前半】8月22日(土)夜10:00【後半】8月22日(土)深夜0:30 
・最終日 [WOWOWライブ]
【前半】8月23日(日)夜9:00【後半】8月23日(日)深夜0:00 

※放送時間変更の可能性あり

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