毎日厳しい暑さが続いているね。新型コロナウイルスの影響による過密日程をこなすJリーグの選手たちの体力的な負担は相当なものだろう。
僕もコリンチャンスの2軍にいたときに、トップチームの前座として真夏の昼間に試合をしたことがあるけど、途中から頭がボーッとしてくるし、今みたいに給水ボトルも用意されておらず、ハーフタイムにロッカールームに戻るまで水を飲めなかった。まるで昔の日本の部活みたいで、本当に大変だった記憶がある。
その点、今は試合中でも給水を取れるし、食事やサプリメント、体のケアなど疲労軽減への意識も高い。
ただ、それでも選手の負担は昔とは比べ物にならないくらい大きくなったと思う。なぜなら、昔と今とではサッカーの質が全然違うからだ。今のサッカーはFWもDFも、選手はとにかく運動量を求められる。
また、地球温暖化の影響なのか、日本の夏は昔よりも暑くなったよね。日本代表戦の解説などで中東に行くと、試合を見ているだけでも暑くて息が切れたりするんだけど、最近の日本の夏の暑さもそれに近づいているように感じる。
それに加えて、日本サッカーならではの問題もあると思う。勤勉な国民性らしく、攻守に常に忙しいというか、ずっと同じリズムでプレーし、試合運びに緩急がない。
以前、サンパイオが横浜F(当時)にいたときに、「日本人は3-0でリードしていても、0-0みたいなプレーをする。(同僚に)何回言ってもダメ。みんな前に行きたがる」と嘆いていたけど、それは今でも変わらない。
(中村)俊輔(横浜FC)や遠藤(G大阪)みたいに、試合の流れに応じてタメをつくれる選手がチームにひとりでもいればだいぶ変わるし、周りの選手もラクになるんだけど、現実は多くのチームが体力的に負担の大きい試合運びをしている。
では、こうした酷暑下ではどういうサッカーをすべきなのか。かつて、高校サッカーの名門、四日市中央工業の城先生は「夏(インターハイ)と冬(高校選手権)では戦い方が全然違う。冬はいくらでも走れるけど、夏の場合、前半は無理せずしっかり守って、なるべくボールをキープして相手を疲れさせる。そして後半に勝負をかける」と言っていたけど、それに尽きると思う。
相手に先に点を許せば、追いつくために激しいプレスをかけるとか、どこかで無理をする必要が出てくるからね。
そして、今のJリーグでそれに近いサッカーを最も実践できているのが首位の川崎だ。過密日程にあって、タメをつくれるキーマンの家長や大島をうまく休ませながら使い、さらに5人交代をフルに活用し、スピードのある若手や決定力の高い小林 悠を後半に投入する勝ちパターンを確立している。
数字を見れば一目瞭然。川崎は総得点34(以下、数字はいずれも第11節終了時点)のうち、実に20点を後半に、さらに細かく見るとラスト15分に8点を挙げている。また、選手の1試合平均走行距離は18チーム中16位と少ない。効率のいいサッカーをしている証拠だ。
もちろん、そうしたサッカーを実践するには選手層の厚さに加えて、選手の技術、経験も必要になるけど、川崎の首位独走は決して偶然ではないということがよくわかるよね。