久保建英について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第166回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、久保建英について。ラ・リーガの開幕戦では、ウエスカに所属する岡崎慎司との日本人対決が実現した久保建英だったが、出場は77分から。そんな中で、今後久保がレギュラーを勝ち取るために目指すべきポジションについて宮澤ミシェルが語った。

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月曜日は寝不足のまま仕事した人も多かったんじゃないか?

スペインのラ・リーガの新シーズンが幕を開けたけど、開幕カードから久保建英のいるビジャレアルと岡崎慎司のウエスカが対戦だもの。

いきなり日本人対決で始まるなんて、たまたまだとわかってはいても、ラ・リーガが日本のファンを意識して試合を組んだのかと邪推したくなるよね(笑)。

まあ、本当に日本向けに組んでくれるのなら、キックオフは日本時間の土曜深夜にしてほしいところだよな(笑)。

ビジャレアルとウエスカの試合は1-1で引き分けだったけど、今季1部に昇格してきたウエスカにとってはいいスタートを切れたと思うよ。

岡崎はスタメン出場して、随所に『らしさ』を見せていた。味方がボールを持ったときの動き出しとか、前線からの守備とか、ゴールにはならなかったけどダイビングヘッドとかさ。

でも、一番よかったのは表情だよ。「岡崎はサッカーを楽しんでるなあ」って観ている人に思わせるような充実した表情をしていたよな。

一方の久保は77分からの途中出場で、与えられたプレー時間は短かったけれど、持ち味はしっかり発揮していたね。スピードのあるドリブルで相手のファウルをもらったり、キッカーを任されたFKでも、いいボールを蹴っていた。

このパフォーマンスを続けていけば、久保にもスタメンのチャンスは必ずまわってくるはずだよ。

左利きの久保がレギュラーを狙うなら、本来は右サイドやトップ下のポジションが最適だけど、ビジャレアルにはどちらのポジションにも、いい選手がスタメンにいる。

右サイドのサムエル・チュクウェゼは、圧倒的なスピードを持っていて、昨季から攻撃の起点になっている選手。久保もスピードはあるけど、それを上回っているよね。

トップ下のジェラール・モレノは『チームの顔』で、スペイン代表にも選ばれている選手。彼を中心にして攻撃はつくられていくから、よほどのことがない限りモレノと入れ替わるのは難しい。

1トップに入るパコ・アルカセルは、ドルトムント時代の2018-2019シーズンにはブンデスリーガの得点ランク2位になった実績もある選手。彼が長期離脱する事態になれば、フォーメーションは見直されるから、久保にも利き足を活かせるポジションがまわってくる可能性はある。でも、いまのところ現実的ではないよな。

そんな状況だけど、ひとつだけ久保が狙えるポジションがある。それがモイ・ゴメスがスタメンを張る左サイド。

左サイドは、縦に抜けてクロスを上げるのなら左利きの選手を置く利点がある。だけど、中央に切れ込んでシュートする場合は、左利きだと体の向きで不利になりやすい。

でも、久保は昨季所属したマジョルカでも左サイドからの攻撃を見せたし、左サイドからゴール前に入っていってパスを受けて右足でシュートすることも上達したから、左サイドで起用されても問題ないと思うよ。

なにより久保は、どんなスタイルのサッカーやどのポジションで使われても、自分の持ち味を出せる選手だからね。技術と状況判断に優れているから、まわりの選手もいざとなるとボールを預けちゃう。だから、2,3試合、左サイドで試合に使われたら、周囲との連携力も高めていくと思うよ。

まだシーズンは始まったばかりだけど、久保の場合はシーズンのなかでもどんどん成長するし、そこはウナイ・エメリ監督もわかっているだろうから、どこかのタイミングでチャンスを与えていくと思うんだ。それがどこになるのか。

ビジャレアルは次節はエイバルと対戦し、第3節ではバルセロナに挑む。久保と乾とメッシ。それにしても、今年のラ・リーガは序盤戦から目の離せない試合が続いていくね。しばらくは寝不足上等で参りましょう!

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