バルセロナvsビジャレアルについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第168回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、バルセロナvsビジャレアルについて。バルセロナの今季リーガ開幕戦となった、久保建英を擁するビジャレアルとの一戦。スコア上では4-0と大勝し、上々の滑り出しに見えたバルセロナだが、宮澤ミシェルは「ひ弱に感じられた」と語る。

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久保建英が育成年代を過ごした古巣バルセロナの本拠地カンプ・ノウに乗り込んだ一戦は、ビジャレアルが0-4でバルセロナに大敗した。

ビジャレアルが今季すでにラ・リーガで2試合を消化していたのに対し、バルセロナはプレシーズンマッチを戦っていたとはいえ、これが今季の初戦。相手を研究して対策を練れた分だけ、バルセロナに分があったという見方もできるよね。

今季からビジャレアルを率いるウナイ・エメリ監督にすれば、開幕から2試合を戦ったメンバーがどこまでバルサに通用するか試したい考えがあったのかもしれない。

もしかしたら、バルサは世代交代に乗り出したばかりだから、これまでのようにボールを回せるイメージがなかったんじゃないかな。それで通用すると踏んだんだと思うよ。

だけど、結果はビジャレアルの惨敗。蛇に睨まれたカエルのように何もできなかったし、特に中盤と前線はひどかったね。

ビジャレアルのDFラインにすれば、中盤の守備は寄せが甘くてパスコースを絞り切れないわ、両サイドのスペースは空くわ、サイドから攻められてスライドして守ったら逆サイドに穴ができるわで、いいところなし。

展開的に開始早々にあったビジャレアルの得点機をモノにできていたら、もしかしたら展開は変わっていたかもしれないけど、勝負の世界で『タラレバ』は言い出したらキリがないからね。

そんな試合にあって、久保建英はインパクトの大きな仕事をしたよ。

後半29分からピッチに投入されたけど、チャンスをつくる回数は4-4-2の右MFでスタメンで出場したチュクウェゼよりも久保の方が多かった。

サイドで仕掛けて敵陣まで侵入するし、トップ下の位置からは味方を使うパスを出せるし、ゴール前ではシュートまで持っていける。スタメンが相手に飲まれたプレーしか見せられなかったのに対し、久保はどんな相手であっても攻撃力を発揮できる力を見せた。

バルサ戦の内容を考えれば、久保は今後スタメン出場の可能性が大いに高まったと見ていいと思うよ。ELだって始まるからね。スタメンのチャンスを得たときには、しっかり得点に絡む結果を残してもらいたいね。

そうじゃないと、相手が疲弊した時間帯ではいい仕事ができる選手っていう評価になりかねない。久保にはスーパーサブではなく、スタメンでバリバリ活躍する姿を見せてもらいたいんだ。

一方のバルセロナは大勝したけれど、ひ弱に感じられたんだよね。そこが今シーズンの長い道のりを考えると心配なところだよ。

ビジャレアル戦は17歳のアンス・ファティが2ゴールを奪い、メッシも開幕戦でPKをしっかり決めた。結果を見たら開幕前のゴタゴタはどこ吹く風に感じるものだったけど、この試合の内容でバルサが見据えている強敵との対戦を想定すると、やっぱりFWに核となる選手がいないのは不安材料なんだよな。

ラ・リーガならレアル・マドリードやアトレティコ・マドリード、チャンピオンズリーグなら決勝トーナメントに残るような強豪クラブと対戦して主導権を握れない展開になった時に、いまのメンツで戦えるのかはまだ懐疑的だよ。

クーマン監督は4-2-3-1の布陣を組んでいるけど、ポイントになるのはトップ下に入るコウチーニョだね。

攻撃の部分に関してはもちろんなんだけど、相手に主導権を持たれた展開になったとき、守備でどれだけ存在感を示すことができるのか。守備がウリの選手ではないけれど、だからこそ、どれくらい汗をかけるかが重要になってくるんだよね。

なんせメッシには過剰な守備は期待できないからね。グリーズマンやアンス・ファティ、デンベレなどの両サイドに起用される選手とともに、コウチーニョが守備でも頑張らないとキツイよ。もし守備的MF任せにするようだと、昨季CLのバイエルン戦での二の舞になるのは目に見えるよ。

いずれにしろ、バルサはクーマン新監督のもとでようやくスタートを切ったところで、ここからどう変化していくのか、しっかり見ていきたいね。

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