これから川崎と対戦するチームにはぜひ意地を見せてほしいと語るセルジオ越後

シーズンの半分を過ぎたJリーグで、川崎が首位を独走している。

イレギュラーな過密日程のなか、試合ごとに細かくメンバーを入れ替え、5人の交代枠をうまく使い、着実に勝ち点を積み重ねている。7月のリーグ再開直後は"横綱相撲"という感じではなかったけど、試合を重ねるごとにスキがなくなり、他チームを圧倒するようになってきた。

右MFの家長が前線でタメをつくり、2列目以降の選手が細かくパスをつなぎながらサイドを崩し、中央の小林悠、レアンドロ・ダミアンが泥くさくゴールを狙う。攻撃はすべてが噛み合っているといっていい。

三笘(みとま)、旗手(はたて)、山根ら新戦力の台頭も大きいし、中盤の大島のパスさばきも素晴らしいけど、それ以上に大きいのはやはり家長の存在。彼は別格だね。

今の川崎は右サイドに張る彼がボールを持っている間に、ほかの選手が攻める準備を整えている。あれだけタメをつくってくれれば、後ろの選手は上がりやすい。FWのポストプレーよりもはるかに効果的だ。

守備に目を向ければ、最終ライン中央の谷口とジェジエウのコンビが安定感抜群。GKのチョン・ソンリョンもいい選手で、やっぱりセンターラインがしっかりしているチームは強い。

まだまだ先は長いけど、今後川崎が大崩れするとは思えないし、優勝の可能性は高い。ほぼ決まりだろう。

ただ、今季の川崎のサッカーが素晴らしいのは間違いなく、それにケチをつけるつもりもないんだけど、厳しいことを言えば、他チームがふがいなさすぎるとも思う。

例えば、昨季王者の横浜Fマはなかなか調子が上がってこないし、開幕前にJリーグで実績のある外国人を補強したFC東京も、橋本、室屋と日本代表選手を簡単に欧州へ手放し、その穴埋めをできていない。これでは厳しいよ。

コロナの影響による特別ルールの今季はJ2降格がない。つまり今季はシーズン終盤にかけての緊張感あふれる残留争いが見られない。また、人気チームがぶざまな負け方をしても(応援規制で)サポーターからブーイングを受ける厳しさもない。

それに加えて優勝争いまで早々と決着してしまえば、どうしたってJリーグ全体が盛り上がらない。

だから、これから川崎と対戦するチームにはぜひ意地を見せてほしい。具体的には、川崎の強力な攻撃陣相手にただ引いて守るのではなく、もっとボールの出どころに対してプレッシャーをかけるべき。これまでは家長、大島に自由にやらせすぎ。いくらコロナ禍といってもピッチ上でソーシャルディスタンスを取る必要はない。

特に家長には、べったりとマンツーマンのマークをつけるくらいでちょうどいい。どんなにうまい選手でもガツガツと激しい守備をされるとイヤなもの。距離を縮めて、家長に周りを見る余裕を失わせ、イライラさせられるか。

折しも欧州各国のシーズンが開幕したばかりだけど、守備の当たりの激しさはJリーグとは別物だと感じる。時には殴り合いが始まるんじゃないかと心配するくらいにやり合っている。

ファウル覚悟の激しいプレーというと語弊があるかもしれないけど、そのくらいの戦う気持ちを持って相手を潰(つぶ)しに行くことも必要だし、それが独走する川崎を止める第一歩じゃないかな。

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