興梠がJリーグの歴史に名前を残すストライカーであることは疑いようがないと語るセルジオ越後氏

1年だけスゴい成績を収める選手はたくさんいるけど、何年も継続して活躍できる選手は少ない。特に、目に見える数字(=得点数)で評価されるFWで、そうした選手は貴重だ。

浦和の興梠(こうろき)がJリーグ歴代4位となる通算155点に到達した(以下、数字はいずれも第24節終了時点)。2013年に鹿島から移籍し、今季で8シーズン目。昨季にはJ1記録となる8年連続2桁得点をマークするなど、こつこつとゴールを積み重ねてきた結果だ。素晴らしい記録だと思う。

興梠にはオルンガ(柏)のようなスピードや高さなどストライカーとしてのわかりやすいスゴさはない。それでもコンスタントに結果を残せるのは、質の高いポジショニングがあってこそ。常に相手の逆を突こうと狙い、緩急を巧みに使い分け、瞬間的にフリーの状態をつくる。それを繰り返す。

本当はポストプレーも高いレベルでこなせるんだけど、無理せずシンプルにボールをはたいて、周囲の選手を生かしながら自らもチャンスを狙う。FWには「俺が、俺が」という性格の選手が多いんだけど、彼は頭脳的だ。

残念ながら日本代表にはあまり縁がなく、選ばれても出番が少なかったけど、これだけの数字を残しているのだから、もっとチャンスを与えるべきだったんだろうね。また、彼がJリーグの歴史に名前を残すストライカーであることは疑いようがない。

毎年のように大型補強をする浦和でレギュラーの座を守り、サポーターの期待に応え続けるのは大変なこと。さらに言えば、浦和というチームは好不調の波が激しく、監督も戦術もころころと変わる。

今季もチームとしての点を取る形が見えず、興梠も例年以上に苦労しているようだけど、なんだかんだと得点を重ね(8得点)、9年連続2桁得点に近づいてきた。ここまできたら達成してほしいね。

一方、新人のMFながらゴールを量産しているのが、東京五輪世代の三笘(川崎)だ。大卒とはいえ、新人最多得点記録(13点)に迫る11得点を挙げている。

今季の開幕はベンチで迎えたものの、同じポジションの長谷川の故障もあり、徐々に出番を増やし、途中出場から効率的にゴールを奪っている。リーグ首位を独走する川崎にあって、彼のスピードに乗ったドリブルとテクニック、そして思い切りのいいプレー姿勢がいいアクセントになっているね。

大きくバケるか、バケないかはわからないけど、今の調子なら日本代表に選んでも面白いし、選ばれるだけの結果も出していると思う。しばらく国内での日本代表戦がないのは残念だ。

ただ、三笘に関してはこれから相手のマークが厳しくなるし、毎試合スタメン出場するようになったときに、どういうプレーができるか、そこを見てみたい。

例えば、タイプ的に似ている神戸の古橋のように、厳しいチーム状況にあって守備の役割もたくさんこなしながら毎試合90分フル出場、そして三笘と同じく11得点を挙げている選手もいるわけだからね。

シーズンの約3分の2が終わり、本来はここから佳境に入るところ。でも、今季はすでに川崎の優勝が決定的。コロナ禍における特別ルールで緊張感あふれる残留争いもない。見る側からすれば物足りなさを感じる部分もあるけど、こうやって選手個人に注目するのもアリだ。

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