ロティ―ナ監督について語った宮澤ミシェル氏 ロティ―ナ監督について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第178回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、ロティ―ナ監督について。昨年よりセレッソ大阪の指揮をとってきたロティ―ナ監督だが、今季限りでの退団が発表された。彼のサッカースタイル評価していた宮澤ミシェルは、「来季もJ1クラブを率いてくれることを期待している」と語った。

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セレッソ大阪との契約が今シーズン限りで終わることになったミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が、来季も監督としてJ1クラブを率いてくれることを期待しているんだ。

C大阪サポーターは、本拠地ヤンマースタジアムで11月29日に行なわれた横浜FC戦の試合前に、ロティーナ退任への抗議の横断幕を掲げたそうだけど、気持ちはわかるよ。

ロティーナ監督1年目の昨シーズンは5位。今シーズンも31試合を終えた時点で18勝4分け9敗で、ACL出場権を確定できる2位を十分に狙える位置につけている。

新型コロナ禍で母国に帰りたいというのなら話はわかりやすいんだけど、ロティーナ監督は今後も日本で指揮をとりたいようだからね。結果を残しているんだから、契約を延長してもよかったんじゃないかと思うよ。

もちろん、クラブにも考えがあっての決断だったのは理解しているよ。ただ、結果を残しているなかでのこうした選択は、そこに至る経緯をきちんとサポーターに説明した方がいいよな。サッカー観は100人いたら100通りあるものだから、完全に納得できることは数少ないんだけど、説明がないことでクラブとサポーターの間に溝ができてしまうのは残念だよ。

結局、C大阪がどういうスタイルのサッカーをやりたいかってことなんだよね。

ユン・ジョンファン監督を迎えた2017年にルヴァンカップと天皇杯の二冠になって、J1リーグでも3位。翌年はACLを戦ったこともあってJ1リーグは7位、ルヴァンカップと天皇杯でもタイトルを逃した。シーズン終了後にはユン・ジョンファン監督が退任し、しかも、二冠達成の主力選手だった山口蛍や杉本健勇、山村和也なども他クラブに移籍しちゃったよね。

そんな主力選手の抜けたチームを任せられたのがロティーナ監督。昨季は強固な守備を築いて失点数はリーグ2番目の少なさで、今季もそれを継続して好成績につなげている。

ロティーナ監督はスペイン時代から守備的な戦いを得意にした人で、2016年に東京ヴェルディの監督になって来日し、そこでの手腕を見込んだC大阪がチームを託した。

『守備的な監督』というとゴール前をガチガチに守り固めてカウンター狙いというサッカーを思い浮かべがちだと思うけど、ロティーナ監督のはそれとは違うんだ。

選手のポジショニングを大事にしていて、相手陣と自陣のゴール前では人数をかけて勝負する。1試合あたりの選手のスプリント回数も走行距離も決して多くはないんだけど、「ここだ!」というところでは全選手がギュッとスピードアップする。

パッと見ただけでは、その凄さはわからないかもしれない。でも、2、3試合ほど見たら、ほかのJ1クラブにはない戦い方をしているのがわかるし、その面白さに気づくとハマるよね。

しかも、中盤には清武弘嗣、坂元達裕、レアンドロ・デサバトがいて、DFラインにはマテイ・ヨニッチがいて、右SBが走り屋の松田陸、左SBがクロスの上手い丸橋祐介とタレントも揃っている。

右サイドの坂元なんてロティーナ監督のもとで花開いた選手の代表格だしね。昨年のモンテディオ山形でもボールを持ったら突貫小僧のように仕掛けていたけど、ロティーナ監督のもとでは持ち味をさらに前面に打ち出している。そのプレーぶりはセビージャのヘスス・ナバスの若い頃を彷彿とさせるんだよ。

そういう選手がいるけど、基本はやっぱり守備。しっかり守って、ボールを奪ったら攻撃をシンプルに仕掛けていく。ただ、噛み合わないと守りっ放しという試合もあるんだけど、でもそういうサッカーがJリーグにあってもいいと思うんだよな。

いまのJリーグは、川崎フロンターレのようなパスをつなぐポゼッションスタイルや、横浜F・マリノスのようにインテンシティの高いスタイルを取り入れようとするクラブが増えている。でも、同じようなスタイルばかりになってもJリーグがつまらなくなっちゃうよ。

確かに今シーズンの川崎Fのようにゴールをバンバン決めるサッカーは面白さがわかりやすい。でも、サッカーの面白さってのは、それだけじゃないからね。C大阪のようなサッカーにも違った面白さがある。まあ、派手さはないから伝わりにくいってのはあるにせよね。

来季のC大阪はどんな監督を招聘するんだろうね。いろんな名前が候補に出ているけど、C大阪が新たに技術委員長に風間八宏氏を迎えたことで、ポゼッションを志向する監督を迎えるんだろうなとは予想しているよ。

楽しみな反面、途中で投げ出さないことを願っているよ。「やっぱりやめました。ロティーナ監督、戻ってきてください」では、かっこ悪いからね。

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