今季3勝を挙げた「プラチナ世代」の古江。最終戦だった11月29日のリコーカップでも2位に入り、史上3人目の若さ(20歳186日)で生涯獲得賞金が1億円を突破した

今年の最終戦、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)ツアーチャンピオンシップリコーカップは、原 英莉花(はら・えりか)が初日から首位を譲ることなく完全優勝。渋野日向子(しぶの・ひなこ)ら1998年度生まれの「黄金世代」のひとりが、混乱の年を締めくくった。

しかし、今年の主役は黄金世代ではなかった。2000年度生まれの「プラチナ世代」と呼ばれる、古江彩佳(ふるえ・あやか)がシーズン3勝(賞金ランキング2位)、西村優菜もルーキーで初優勝(同7位)。さらにその下、01年度生まれの笹生優花(さそう・ゆうか)も2勝を挙げた。

ツアーは今季と来季が統合されたため、来年の全日程が終了するまで順位は変わるが、笹生は現時点で賞金ランキングトップだ。

もともと、プラチナ世代の実力は"折り紙つき"だった。ジュニア時代から注目されていた古江は、18年のトヨタジュニアゴルフワールドカップで日本の団体優勝に貢献。19年の富士通レディースでは、史上7人目のアマチュア優勝を果たし、プロテストを経ることなくJLPGAのプロになった。

古江の武器は、オールラウンドな能力と安定した試合運び。曲がらないドライバーから、リカバリー率ツアートップのショートゲームまで、まったくスキがない。今季は9月にプロ初優勝を飾ると、11月には2週連続優勝。14戦3勝で、早くも生涯獲得賞金が1億円を突破した。

150cmと小柄な西村は、18年の世界女子アマチュアチーム選手権で、団体2位になったときのメンバーだ。受験人数が増えて「史上最難関」といわれた昨年のプロテストをパスすると、今年11月の大会では最終日に6打差を逆転して初栄冠。持ち味である正確なショットに加え、爆発力があるところも見せた。

このふたり以外にも、プラチナ世代はタレントをそろえている。もともとこの世代のエースは、古江と滝川第二高校(兵庫県神戸市)の同級生だった安田祐香だ。

ショット力に優れた逸材で、17年に日本女子アマを制し、19年にはアジアパシフィック女子アマのチャンピオンに。プロではまだ結果を残していないが、今年は姉でゴルファーの安田美祐をキャディに起用するなど、飛躍のために奮闘している。

ほかにも、日本女子アマ、日本ジュニアの両タイトルを持つ吉田優利ら、有望選手を挙げだすと切りがない。そんな女子には後れを取ったが、男子でも新陳代謝が起こり「黄金世代」が到来している。

11月のダンロップフェニックスを制した金谷拓実は、渋野らと同じ98年生まれ。17歳で日本アマチャンピオンになり、マスターズ、全英オープンに出場した。

昨年は世界アマチュアランク1位になり、国内ツアーでアマ優勝を果たして、今年になってプロ転向するとすぐに優勝。ショットの正確性、ゲームマネジメントの評価が高く、初優勝の直前には「もちろん優勝を目指してやっている」とコメントする強気な一面も。今後も優勝数を増やしていきそうだ。

その金谷と、フェニックスで4ホールにわたるプレーオフを繰り広げた石坂友宏は、99年生まれのルーキー。さらに、金谷に次いで世界アマランク1位になった中島啓太(00年生まれ)、下部ツアーでアマ優勝を飾った杉原大河(99年生まれ)など、すぐにでもツアーで勝てる実力を持つアマチュアもゴロゴロいる。

いくらアマでの実績があるとはいえ、いきなりプロのルーキーイヤーで結果を残すのは簡単ではない。20歳前後の選手たちが、次々と優勝カップを持ち帰ることができるのはなぜなのか。

プロゴルファーで解説者のタケ小山氏は「(03年の)宮里藍の出現以降、ジュニアの環境は劇的に変化しました。大会、育成機関も増えています」と分析。コーチング技術の向上、計測、映像装置の進化も影響を与えているという。

また、男女ともプロになる前に、ツアーで数年の経験を積めることも大きいと話す。

「ジュニア(おおむね6~18歳)の選手も、主催者の推薦でツアーに出場できる機会が増えて経験値が高くなっている。結果、プロになってからも臆することなくプレーできるのでしょう」(タケ氏)

事実、女子の古江や西村らはアマ時代、年間数試合をツアーでプレー。黄金世代の勝みなみは、20試合以上出場した年もあった(今季から、JLPGAはアマの推薦出場を8試合以下に規定変更した)。男子の金谷も、高校時代の15年からツアーに出場している。

選手の低年齢化、早いサイクルの世代交代はこれからも続きそうだ。タケ氏も「宮里藍や石川遼に憧れた『藍キッズ』や『遼キッズ』はまだ出てくる。ジュニア時代のツアー経験を生かし、すぐに活躍する流れも止まらないでしょう」と予想する。

一方で、本来はプロの興行のためにあるツアーを、ジュニアの育成目的に利用することには疑問もあるという。

さらに女子では、毎年20名ほどのプロテスト合格者しか新規にプレーすることができないため、これから競技人口が減っていくことも考えられるなかで「新しい才能が20名しか生まれない」(タケ氏)ことも危惧されている。

一方の男子については、「女子のように盛況になることも考えられますが、才能あるアマチュアの選手が、試合数が多く、賞金額が大きい海外に出ていく可能性もある」と言うタケ氏。

こうしたさまざまな問題がありつつも、ゴルフファンは新しい才能の出現を待ち望んでいる。来年、ゴルフ界はさらに変化を遂げるのか。今から楽しみだ。