1983年の第1回放送から今年で38年。「野球報道のあり方を変えた」ともいわれるフジテレビの『プロ野球 珍プレー好プレー大賞』が12月13日(日)に放送される。今年は「珍プレーの元祖」ともいわれる歴史的シーンの真実が明かされる。
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白熱の乱闘シーンにまさかの珍エラー、さらには試合前の選手たちの素顔など、数々の名シーンをお茶の間に届けてきたフジテレビの『珍プレー好プレー大賞』。
今年はコロナの影響でペナントレースは120試合制で行なわれたが、それでもセ・パ両リーグあわせて全720試合。その中から選りすぐりのシーンをピックアップする作業は、まさに想像を絶するものだとか。
「シーズン中からニュース映像や記事を見て、面白いものがあればその都度、リストアップしています。ただ、全試合の全プレーを確認できるわけではありませんから、そこはCSの『プロ野球ニュース』の担当者とも連携して情報を共有しています。
シーズンが終わった段階でピックアップした映像を一度、すべて確認していますが、例えばエラーだけでも年間何百個も生まれるわけで、そのほとんどをチェックするわけですから気の遠くなるような量にはなりますね(笑)」(フジテレビ『プロ野球 珍プレー好プレー大賞』ディレクター・戌亥芳昭氏)
その基準として戌亥氏が意識しているのは、「野球のルールを知らない人が見ても面白いと思ってもらえるような、極力、説明が必要ないシーン」だという。
「言ってみればラーメン屋さんのテレビで、音なしで映像だけを見ても楽しめるものですね。そうした映像に軽妙な音楽や効果音、さらにナレーションを加えて編集するとさらに面白くなる。
もちろん、大前提として選手へのリスペクトも欠かせません。ですから珍プレーで楽しませてくれた選手については、なるべく好プレーも入れて、プロ野球選手としてのスゴさもお伝えできるようにしています」
これまで同番組に20年以上携わってきた名物ディレクターの戌亥氏に、特に印象深い「珍プレー名人」を聞いた。
「清原和博さん(西武ほか)は、強面の風貌と迫力ある乱闘シーンで長きに渡り番組に大いに貢献してくれました。本当に不機嫌なときはカメラマンにも当たるんですよね(苦笑)。それでいていたずら好きな一面もあり、本当に愛された選手だと思います。
達川光男さん(広島)のデッドボールのアピールは名人芸の域でしたし、試合中にコンタクトレンズを落として、みんなに探させるシーンは視聴者にも大人気でした。また、星野仙一さん(中日ほか)の迫力あふれる乱闘シーンは外せませんし、野村克也さん(ヤクルトほか)は緻密な指揮官としての顔とは対照的な、オフのお茶目な姿が印象的でした」
一方、パンチの愛称で親しまれた佐藤和弘(オリックス)の男気あふれるキャラクターや、"ぴっかり投法"で知られる佐野重樹(近鉄ほか)の自虐ネタなども、珍プレーファンには忘れられない名シーンだ。
「パンチ佐藤さんのヒーローインタビューでの『下痢するまで飲みたいです!』や、佐野重樹さんが『ゲゲゲの鬼太郎』のテーマにのせて自らの薄毛を歌うシーンなどは、今の時代では考えられないことですよね(笑)。
高津監督(現ヤクルト監督)も現役時代はアフロのかつらで『♪大都会』をよく熱唱してくれました。こうした珍プレー名人たちの遺伝子は、現役では杉谷拳士選手(日本ハム)にしっかりと受け継がれていると思いますので(笑)、今後もプロ野球界と珍プレー両方を盛り上げ欲しいと思っています」
今や「珍プレー」という言葉は広く世間に定着した感があるが、実はこの言葉が生まれたきっかけとなったプレーがある。80年~90年代におもに中日で主力として活躍した宇野勝の"世紀のヘディング"がそれだ。
1981年8月26日、後楽園球場で行なわれた巨人戦の7回裏。巨人・山本功児が打ち上げたショート後方へのポップフライを、補球態勢に入っていた宇野がまさかのヘディング。打球は大きな放物線を描いてレフトフェンス際を転々とした。
「まさに珍プレーの元祖ともいえるプレーで、これにみのもんたさんが面白おかしくナレーションを入れて当時の『プロ野球ニュース』で放送したことから、『珍プレー好プレー大賞』という番組も始まりました。
実は今年、この伝説のプレーが生まれてからちょうど40年にあたることもあり、宇野さんに旧後楽園球場跡地にご登場いただき、ご本人とともに"現場検証"を行ないました。40年目にして語られる伝説のプレーの真実を、ぜひ放送でお楽しみいただけたらと思っています」
『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞2020 全集中 ○珍プレー誕生の地へ 時を戻そうSP』は、12月13日(日)20時よりフジテレビ系列にて放送される。