ＡＣＬについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第１７９回。
現役時代、Ｊリーグ創設期にジェフ市原（現在のジェフ千葉）でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、ＡＣＬについて。ヴィッセル神戸の準決勝敗退により、残念ながら日本のチームが姿を消してしまったＡＣＬ。しかし、準決勝でのヴィッセル神戸の戦いぶりを宮澤ミシェルは、「本当に粘り強く戦ったよ」と称賛した。
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ヴィッセル神戸はＡＣＬ決勝トーナメントの準決勝で蔚山現代（韓国）に延長戦の末に１－２で敗れた。ＶＡＲ判定に恵まれなかっただけで、試合内容だけなら決勝進出にふさわしい戦いはヴィッセル神戸の方が見せてくれたと思うよ。
ＡＣＬ制覇の目標達成まで見えただけに悔しさは大きいと思うんだ。でも試合後の選手たちからは、敗戦の理由をＶＡＲのせいにすることなく、「次は圧倒的な強さで優勝してやるんだ」という前向きな気持ちの伝わるコメントが聞けて、とても好感を持てたよね。
それにしても、ヴィッセル神戸の今季のＪ１リーグでの戦いぶりを知っていると、よくぞここまで勝ち上がったというのが率直な感想だよね。
ＡＣＬはグループリーグの戦いでさえ厳しいと思っていたんだよね。広州恒大（中国）とのグループリーグ初戦は３－１で勝利したけれど、続く広州恒大との第２戦、水原三星（韓国）との第３戦はともに０－２で敗れて２連敗。
「やっぱりダメか」と思ったけれど、決勝トーナメントでは粘り強く戦ったよね。決勝トーナメント１回戦で上海上港（中国）に２－０で完勝したのも効いた。あの勝利があったからこそ、続く準々決勝の水原三星戦では１－１からＰＫ戦にまでもつれこんだゲームをモノにすることができたんだと思うよ。
その中でも、古橋亨梧は目覚ましい活躍を見せてくれたね。決勝トーナメントを通してアグレッシブなプレーが光っていたけど、特に準々決勝で決めたＦＫはさすがだった。あの大舞台で壁の下を狙えるなんて本当に度胸があるよ。
準決勝はアンドレス・イニエスタを故障で使えなかったけれど、イニエスタ頼みのチームではなくなっていたね。最後はシーズンを通しての課題であった守備のところが破綻したけれど、攻撃も守備も本当に粘り強く戦ったよ。
９月に就任した三浦淳寛監督のもとで、自分たちの強みと弱みを再確認し、戦力を見直したことがよかったんだろうね。それがあったからこそ、１１月２５日から１２月１３日までの１８日間で６試合も戦うハードスケジュールのなかで結果を残せたんだと思う。
今季のＪ１リーグでは１２位前後と低迷しているから、神戸には来季のＡＣＬの出場権はない。だけど、視点を変えれば再来年シーズンに向けて、来季から取り組んでいけるってこと。次のＡＣＬ出場機会に向けて、来シーズンはもう一段も二段もステップアップしたチームへ成長してもらいたいね。
今年のＡＣＬには神戸のほかに、ＪリーグからはＦＣ東京と横浜Ｆ．マリノスも出場したけれど、ＦＣ東京と横浜ＦＭはともに決勝トーナメント１回戦で敗退。国代表の戦いとは違って、他国から補強のできるクラブ同士の戦いのＡＣＬは、やっぱりひと筋縄ではいかないよな。
ＦＣ東京に関して言えば、やっぱりシーズン途中に戦力が抜かれてしまうのがシンドいよ。昨年は久保建英、今年は室屋成と橋本拳人。それでも長谷川健太監督は新たな人材を登用して成長させながら乗り切ろうとしていたけど、本来なら年明けから作りだしたチームが成熟していく時期だからね。やっぱりしわ寄せは受けているよな。
それだけに夏場から新たに作り直したチームで臨んだのだと捉えれば、ＡＣＬでグループリーグを突破したことに、よくやったと言っていいんじゃないか。
マリノスにはもっとも上位進出をしてもらいたかったし、彼らのスタイルでＡＣＬを席巻してもらいたかったよね。
今シーズンのＪ１リーグ戦は故障者をたくさん抱えていたこともあって不安定な戦いが続いたけど、ハマったときの破壊力は相変わらず。それがＡＣＬを前に故障者も戦列に戻ってきたから、期待感は大きかったんだ。
決勝トーナメント１回戦で水原三星に２－３で逆転負けは残念。とはいえ、この試合でもマリノスらしいサッカーをしっかり発揮した上での敗戦だったからね。それが勝負というものだと納得するしかないよな。
ＡＣＬもＪリーグも残すところあとわずか。新型コロナ禍のなかで今シーズンはどうなってしまうかと心配したなか、どうにか今季のフィニッシュラインも見えてきたね。年が変わったからといって、元通りにはならない状況だけど、来年もサッカーが日常生活のなかにある素晴らしさを享受できるように、しっかり健康に気を配って参りましょう！
