現地時間12月22日、NBAの2020-21シーズンが開幕する。
新型コロナウイルスの影響で、今季は82試合から72試合に短縮されることが決定。それでも、昨季の覇者ロサンゼルス・レイカーズは優勝からたった2ヵ月でキャンプを始め、米四大スポーツの歴史上で最も短いオフを過ごすことになった。
レブロン・ジェームズなど主力選手は、休養のため何試合か出場を回避する可能性もあり、戦力低下は避けられない。
そんななかで日本のファンが気になるのは、昨年12月に「NBA初の日本人対決」を実現させた八村 塁と渡邊雄太の動向だろう。
まず、ワシントン・ウィザーズで2年目を迎える八村は、昨季48試合に先発出場し、1試合平均13.5得点(新人5位)、6.1リバウンド(新人1位)という成績を残した。
だが、3ポイントシュート成功率は28.7%と低調だったため、オフは3ポイントとハンドリングを中心にトレーニングを行なった。その様子を視察したスコット・ブルックス監督も、「3ポイントシュートが非常によくなった」と評価している。
また、コーリー・ゲインズアシスタントコーチと共に相手選手のクセを学ぶなど、ディフェンスの向上にも取り組んだ。八村はディフェンスも課題とされているが、今季はよりその力が試されそうだ。
ウィザーズはキャンプ開始早々、以前から噂されていたジョン・ウォールのトレードを発表した。ウォールはアキレス腱断裂の影響で昨季を全休したが、爆発的なスピードと、「NBAオールディフェンシブチーム」にも選出されるほどの守備力を誇り、2年連続でチームをプレーオフ進出に導いた選手だった。
ウォールを欠いた昨季のウィザーズは、25勝47敗で東カンファレンス9位。7月末からフロリダ州で再開されたリーグ戦でも初戦から7戦連続で敗北し、プレーオフ進出を逃している。
昨季のチーム平均得点はリーグ7位だったが、平均失点は29位と、ディフェンスはリーグワースト2位。ウォールの復帰を待ち望んでいたファンのショックは計り知れない。
一方で、攻撃力は大幅アップが期待される。何せウォールのトレード相手は、2017年のMVPで、得点王とアシスト王をそれぞれ2回受賞しているPG(ポイントガード)のラッセル・ウェストブルック。歴代2位のトリプルダブル記録を持つトッププレーヤーだ。
今季は、右肩の故障で昨季途中離脱したエースのSG(シューテイングガード)、ブラッドリー・ビールも復帰するため、強力タッグの爆発力に大きな期待がかかる。
さらに、今年のNBAドラフト全体9位で指名されたデニ・アブディアも楽しみな選手だ。ユーロリーグで2年を過ごしたイスラエル出身の19歳は、成長途中ではあるものの、ボールハンドリングスキルを高く評価されており、パス志向も強い。
206cmのアブディアが、チームが固定できていなかったSF(スモールフォワード)のポジションを担うとしたら、PF(パワーフォワード)での起用が明言されている八村の頼もしい相方になるだろう。
ここにベテランC(センター)のトーマス・ブライアンを加えた5人の先発に、八村が「NBAトップに入るシューター」と称賛する"シックスマン"ダービス・ベルターンズなども控える。生まれ変わったウィザーズで、八村が攻守で貢献できれば、自身が目標に掲げるプレーオフ進出も決して夢物語ではない。
一方の渡邊雄太は「この先」に注目だ。
渡邊は昨季までの2年間、1シーズンに45日間だけNBAでロースター(公式戦に出場できる資格を持つ選手枠)登録が許される「2ウェイ契約」で、メンフィス・グリズリーズの傘下チームでプレーした。
NBAでは2年間合計で33試合に出場し、1ゲーム平均2.3得点、1.5リバウンドという成績。本契約を目指したが、オフにFAになった。
今季の開幕前は、2018-19シーズンの覇者、トロント・ラプターズと「エグジビット10」形式で契約し、キャンプに参加。この「エグジビット10」とは、無保証の最低年俸かつ1年限定の契約で、開幕までに評価が得られれば「2ウェイ契約」に切り替えることができる。
昨季は馬場雄大がダラス・マーベリックスと同じ契約で開幕ロースター入りに挑んだが、開幕前に契約を解除されてNBA出場は叶わなかった。
渡邊は以前からディフェンス面で高い評価を得ている。複数のポジションをガードでき、ディフェンスの際にほとんどファウルをせず、スチールやブロックができる点が魅力とされている。
また、下部のGリーグで得点力が劇的に向上。平均17.2得点、3ポイント成功率は36.4%を記録するなど力をつけている。ラプターズのニック・ナース監督も「いいシューター」と評価しているようだ。
渡邊が引き続きNBAでプレーするためには、キャンプ中にチームから評価を得て、「2ウェイ契約」を勝ち取る必要がある。
現在(12月7日時点)、ラプターズの「2ウェイ契約」のスポットにはまだ空きはあるが、すでに実績があるOG・アヌノビーやパスカル・シアカムなど、強力なライバルたちとポジションを争わなければならない。
渡邊の前に立ちはだかる壁は非常に厚い。それでも12月4日に行なわれたオンライン会見では「登録選手を蹴落としてでも残りたい」と覚悟を述べた。その思いを果たし、今季もNBAで八村との日本人対決が見られることを望むばかりだ。