まだ最終節は終わっていないけど、ひと足早く今季のJリーグを総括したい。
ひと言で言えば、異常なシーズンだった。2月の開幕直後に新型コロナウイルスの感染拡大でシーズンは中断。その後、J1は7月にようやく再開したものの、前例のない過密日程で試合をこなすことになった。
真夏でも週に2試合ペース。コロナの感染者が出て試合が延期になることもあったし、リーグ戦のほかにルヴァン杯、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)もあった。
Jリーグが放映権料、スポンサー収入を確保するためにはそうするほかに選択肢がなかったとはいえ、選手は本当にキツかったと思う。全員にお疲れさまと言いたい。特にACL出場クラブはどこも最後はボロボロになっていた。見ていて気の毒だったよ。
そんななかで圧倒的な強さを見せて優勝したのが川崎。この連載でも何度も取り上げたけど、川崎は自分たちで主導権を握り、巧みなパスワークで相手の守備を走らせる。だから体力の消耗が少ないし、過密日程を乗り切る選手層の厚さもあった。
Jリーグ、というか日本のサッカーでは90分を通して一本調子のサッカーをするチームが多い。でも、川崎は前半に無理をせず、5人の交代枠をうまく使いながら後半に勝負をかける。実際、後半に挙げた得点は多かった。また、若手も伸びていて、4人目、5人目の交代で出てくる選手のレベルも高かったね。
ただ、ライバルチームの自滅も大きかったとは思う。連覇を目指していた横浜Fマも、昨季2位のFC東京も期待に応えられず、同じく強豪の鹿島も出足で大きくつまずいた。そのせいで終盤に優勝争いのスリルがなくなったのは残念。
また、例年であれば終盤の残留争いで死に物狂いになって戦う下位のチームが、特別ルールで降格のない今季はあっさりと負けを重ねていた。その影響もあるだろう。
もちろん、それでも川崎の攻撃的なサッカーが素晴らしいのは間違いないし、優勝は順当な結果だと思う。
僕が選ぶMVPは家長。DFの谷口、ジェジエウ、MF三笘(みとま)とシーズンを通して好プレーを見せた選手はたくさんいるけど、やっぱり家長は別格。
前線の右サイドにキープ力があってタメをつくれる彼がいるといないとでは、川崎の攻撃の質が大きく変わる。文字どおりの大黒柱。来季も同じレベルでプレーできるなら、日本代表に呼ばれないとおかしい。年齢(現在34歳)は関係ないし、誰も文句はないはずだ。
日本代表といえば、今季ブレイクした三笘にもチャンスを与えていいと思う。彼のタイミングのよい仕掛けは魅力的だった。相手DFに寄せられても簡単に倒れないし、シュートもうまい。これからどれだけ伸びるのか、楽しみな選手だ。
川崎はここ数年、継続して同じサッカーをやっている。選手層も厚くなっているし、チームの顔である(中村)憲剛が引退しても、大きな戦力ダウンにはならない。また、コロナの影響でライバルチームは大型補強をする財政的な余裕がないはず。来季も川崎が優勝争いの中心になるのは間違いない。
むしろ、川崎には憲剛がいなくなっても、5人交代制から本来の3人交代制に戻っても、今季出場しなかったACLを戦いながらでも、連覇を達成して、強さを証明してほしいね。