今季のJ1リーグを総括した宮澤ミシェル氏 今季のJ1リーグを総括した宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第181回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、J1リーグの総括。川崎フロンターレの独走優勝という結果に終わった今シーズンのJ1リーグ。宮澤ミシェルはこの結果に対して、「圧倒的の強さのチームの登場は待ちに待っていたもの」と語った。

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新型コロナ禍の影響による中断があって、再開できたけれど感染対策や無観客試合、過密日程など本当にいろいろと大変なシーズンだったね。

選手にとっても、サポーターにとっても苦しいシーズンになったけれど、それでもサッカーがある日常を実現できたことはうれしかった。

J1リーグは川崎フロンターレが独走し、シーズン途中からは彼らに太刀打ちできるのは、どこのチームかという構図になった。それくらいフロンターレの力は抜きん出ていたし、そういう圧倒的な強さのチームの登場は待ちに待っていたものでもあったよね。

どんぐりの背比べ的なリーグ戦も混戦模様がおもしろい。でも、世界のサッカーを見渡せば、クラブ間のヒエラルキーが明確なのは当たり前で、それがあるからこそ各クラブがその差を埋めようとしてアイデアを出して戦っている。J1リーグもいよいよそういう時代を迎えようとしているってこと。

その点でコンサドーレ札幌や大分トリニータはおもしろいサッカーをしていた。3バックを敷いて、独自のコンセプトのもとで戦っていたから、来季も注目していくよ。

ただ、ほかのJクラブのほとんどは、川崎Fのようにパスで繋ぐスタイルを取り入れようとしていたよね。

それだと『フロンターレ・イズム』のある川崎Fに一日の長がある。なにせ川崎Fは風間八宏前監督の時代からいまのスタイルに取り組んで、鬼木達監督に代わってもそれを継承しながら上乗せしてきたからね。

川崎Fと同じ路線を望んだほかのクラブは、選手のレベルが上回ったときには川崎Fに勝てるだろうけど、それが独自コンセプトかというと疑問は残る。いまの川崎Fの強さは、数年前に彼らの描いた『ヴィジョン勝ち』によるものなのに、それを後追いしているだけなのが目に見えているからね。

どうしたら川崎Fに勝てるサッカーを構築できるのか。同じスタイルを目指すなら、川崎Fの持たないスパイスを手にしないといけないし、それができないのなら違う道を模索した方が勝てる可能性は高まると思うな。

もっと勝負を突き詰めるクラブが出てきてもいい。本当はパスサッカーがやりたいスタイルだとしても、現実を見てそれだと勝てないのなら、守備に徹したカウンターサッカーで勝利を追い求めるのもひとつの道。

最強のサッカーは、『やりたいサッカー』と『勝てるサッカー』が直結していること。でも、それができないなら、勝つ可能性のあるサッカーを追い求めないと。育成年代なら話は別だけど、プロリーグだからね。頑張っても勝てなかったら、選手もサポーターも楽しくないもの。

3位になった名古屋はそういう道を選んだよね。風間さんを監督に迎えてポゼッションスタイルを志向したけど、それを定着させられなくてさ。真逆に舵を切ってフィッカデンティ監督の守備から構築するスタイルで結果は手にできた。

数シーズンは苦しんだガンバ大阪が2位。ザーゴ新監督のもとで新たなスタイルに取り組んだ鹿島アントラーズは5位。Jリーグの歴史を築いてきた強豪2クラブにとっては、復権への足がかりをつかんだシーズンになったんじゃないかな。

宮本恒靖監督が続投するG大阪は、4バックと3バックを併用しながら守備のとこからアグレッシブに行くスタイルになって持ち直したね。宇佐美貴史が前線で存在感を発揮して、井手口陽介も中盤で躍動していた。なにより若い選手たちが本当によく頑張ったよ。それを最後方から34歳のGK東口順昭が支えてさ。いいチームになってきたよ。

守備は目処がついたから、あとは攻撃だよな。0対5で負けた29節の川崎F戦のように攻撃で何もできないと、アグレッシブに守備をしたくても相手にすかされて何もさせてもらえなかったからね。そこを宮本監督が構築できるかが来季の課題だな。

鹿島はザーゴ新監督のもとでスタイルの変革に取り組んで、開幕当初は勝てなかったけど、シーズンが進むなかで少しずつフィットしてきた。まだ変革の最中にあるから、来季はもっと形になってくるんじゃないかな。

課題は、中盤のレオ・シルバを欠く試合があったときに穴を埋めらられるかと、攻撃のところでもう一枚、強烈な選手がほしいよな。そこがクリアできたら、勝負になる可能性はあるよ。

新型コロナ禍にあっても、こうしてサッカーの話で一年を締めくくれることに感謝しかないよ。まだ影響は受けるけれど、来シーズンも確実にやって来る。みなさんもくれぐれも健康には気をつけて、来年もまた一緒に熱くサッカー談義に花を咲かせましょう! 

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