高嶺朋樹について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第182回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回からは特別編をお届け。宮澤ミシェルが注目する東京五輪世代のサッカー選手を紹介するぞ! 第1回目は、コンサドーレ札幌に所属するMF・高嶺朋樹(たかみね・ともき)。そのポテンシャルを宮澤ミシェルは高く評価しているという。

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明けましておめでとうございます!!

まだまだ難しい状況にあるけれど、元旦の天皇杯サッカー決勝戦や、全国高校サッカーがあるお正月を迎えることができたね。これまで当たり前だと思っていたことが、行なわれている奇跡。このことに感謝しながら、これからも感染拡大防止にしっかり頑張って、健康に一年を邁進してまいりましょう!

今年は延期になっている東京五輪がある。日本サッカー界としてはここでメダルを獲得し、日本中の目をサッカーに全集中させて来年のカタールW杯へと繋げていきたいよね。

そして東京五輪世代が日本代表を突き上げて、さらなるレベルアップをしてカタールW杯での成功につなげてもらいたい。それができるタレントが東京五輪世代には揃っているだけに、ボクの注目しているU-23世代の選手をピックアップして紹介していくよ。

いの一番に取り上げる選手は、筑波大からコンサドーレ札幌に進んだ高嶺朋樹。筑波大出身のルーキーといえば三笘薫(川崎F)だよね。去年のJリーグでのインパクトは大きくて、新人最多記録に並ぶ13ゴールを奪ってベストイレブンにも選ばれたけど、高嶺だって負けてはいなかったよ。

昨シーズンはペトロヴィッチ監督の3-4-2-1のシステムで、中盤のボランチとして30試合に出場してレギュラー格になった。身長は177cmと思えないくらいピッチでは大きく見えるんだよね。彼の深めた自信の大きさが、そう見せているのかもしれないね。

高嶺の何がいいって、最大の武器は左利きだってことだよね。そこから蹴り出されるロングパスやミドルパスの精度が、また素晴らしいんだよ。

チームに左利きの選手が2~3人いると、ピッチ幅をワイドに使える。しかもパス精度が高いから相手が前線や中盤からプレッシャーをかけにくくなる。

日本代表の左利きの選手でボランチができる選手となると、中山雄太(ズウォレ)がいるだけ。しかも、いまは左SBとしての起用がメインになっている。ここに高嶺が加わっていくことができれば、日本代表の層は格段に厚くなっていくよね。

高嶺はボールを奪う能力もプロになってどんどん向上しているんだけど、それにも増してCB出身のボクが高嶺を買う理由は、DFラインからボールを引き出した後のプレーがいいんだよね。

ボランチがDFラインからボールをもらうときは相手ゴールに背中を向けているから、リスク回避のためにそのままDFラインにパスをはたく選手が少なくない。ただ、これだとCBからすると、相手のプレッシャーを下げられないから、パスコースが減っちゃうんだよな。

でも、高嶺はボールを受けたらターンして前を向けるし、ターンをしなくていいように体の向きを斜めにしてボールをもらったりもする。このあたりに非凡さを感じるんだよね。

もちろん、まだまだすべての面でレベルアップできる余地は残している。12月にあった東京五輪代表合宿には、天皇杯組の川崎FやG大阪の選手たちはメンバーから外れたけれど、札幌のチームメートであるDF田中駿汰とMF金子拓郎とともに高嶺も招集された。

東京五輪世代のボランチといえば、川崎Fの田中碧の名がまっさきに浮かぶけれど、高嶺もここから成長を続けていければ、五輪代表はもちろん、日本代表だって狙えるポテンシャルを秘めているよ。

その東京五輪の代表にはオーバーエイジ枠で遠藤航(シュツットガルト)を推す声が大きくなっている。いまブンデスリーガでもっとも評価されるボランチだから当然なんだけど、高嶺には「遠藤航は不要だね」って思わせるほどの存在を目指してもらいたいな。そして、日本代表に入っていって、遠藤航とボランチのポジションを争ってほしい。それができる能力を秘めている選手だから、大きく期待しているんだ。

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