2019年の日本大会で初のベスト8進出を果たした日本代表。2年後も歓喜の瞬間を味わうために強化を進めていく

昨シーズンは2020年の3月に中断、その後中止になったラグビーのトップリーグだが、今季は1月16日に開幕する。来年から新リーグが始まることが決まっているため、18シーズン続いたトップリーグが"ラストシーズン"を迎える。そんななか、2023年のラグビーW杯フランス大会に向けた、日本代表のポジション争いはすでに始まっている。

昨年12月14日、フランスのマクロン大統領も参加した組み合わせ抽選会がパリで行なわれた。日本代表(世界ランキング10位)は19年のW杯日本大会で史上初のベスト8進出を果たしたこともあり、初めて第2シード入り。

同じプールDには、元日本代表指揮官エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が率いる優勝1回のイングランド(同2位)、ベスト4進出2回を誇るアルゼンチン(同8位)が入った。

19年大会で準優勝したイングランドは、同大会の準決勝で"オールブラックス"のニュージーランドに勝利。アルゼンチンも昨年11月14日、ニュージーランドに歴史的初勝利を飾っている。成長著しい日本代表も同じ組になったことで、グループDは「死の組」と報道された。

ほかにはサモアかトンガ、カナダかウルグアイあたりが同組になるだろうが、最低でも強豪のどちらかに勝つことが、決勝トーナメント進出の絶対条件になった。

伝統的にセットプレーや接点(タックルなどコンタクトが起きるポイント)が強くて総合力の高いイングランド、タックルや接点が強くランナーもそろうアルゼンチンに勝利するには、「セットプレー」や「接点」で最低でも互角の戦いをすることが必須。それは世界のトップを目指すに等しい。

それは日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHCも承知している。23年W杯に向けて「スクラム、ラインアウトを強化し、もっとディフェンスもやらないといけない。

(課題は)選手層の厚み。ポジションでいえばセカンドロー(LO・ロック)で、テストマッチで戦える選手をどれだけ抱えることができるか」と強調。さらに、19年W杯で4トライを挙げた"スピードスター"WTB(ウイング)福岡堅樹(けんき・パナソニック)が代表を引退したため、指揮官は「次の大畑(大介)、福岡を探すことも次の仕事」とも述べた。

19年W杯の日本代表メンバー31人のうち引退したのはふたりのみ。多くの選手がフランス大会にも挑戦するだろう。ただ、トップリーグで新たな戦力が台頭しなければ選手層は厚くならない。

23年W杯を目指す新たな選手たちは、今年の4月末に発表される日本代表候補に名を連ねたいところ。その時点で門戸が閉じることはないが、23年が近づくにつれ、そこに加わることが難しくなっていくからだ。

まず、指揮官が名指しで課題のポジションに挙げたLOは、W杯出場4回のベテランのトンプソンルーク(元近鉄)が現役を引退。W杯で活躍したジェームス・ムーア(宗像[むなかた]サニックス)らは健在だが、同レベルの選手があと3、4人は必要だ。

その候補のひとりが、「3年以上の居住」の条件がギリギリ間に合わず、19年W杯の出場を逃した30歳のグラント・ハッティング(神戸製鋼)。南アフリカ出身のハッティングは、201㎝という長身が武器。

接点だけでなく、ラインアウトやハイボールなどの"空中戦"で絶対的な強さを発揮する。長身の割に足も速く、オフロードパスも得意なため、両サイドでトライを取りにいくFL(フランカー)でもプレーできるのが指揮官としてはうれしい。

2015年から日本でプレーする、神戸製鋼のハッティング。LOを課題とするジョセフHCにとっても、201㎝の高さは大きな魅力だろう

ほかには、昨年にサンウルブズでも活躍したマイケル・ストーバーグ(近鉄)、日本人選手であれば元日本代表の宇佐美和彦(キヤノン)や小瀧尚弘(東芝)らの奮起を待ちたい。

一方のBK(バックス)にも有望選手が多い。WTBの福岡に代わる選手としては、東海大時代からジェイミー・ジャパンで躍動していた大卒3年目のWTB/FB(フルバック)野口竜司、新人ながら昨季6試合で7トライを挙げたWTB竹山晃暉(こうき)と、いずれも福岡と同じパナソニック所属の逸材がいる。

ジョセフHCに見いだされた25歳の野口は、判断力、キックやパスのスキルに長(た)けている。元陸上選手の下でスピードトレーニングを重ね、速さもアップ。19年は、春まで代表候補に入っていただけに、23年W杯にかける思いは人一倍強い。

2019年は惜しくもW杯出場が叶わなかったパナソニックの野口。同チームの竹山と共に

昨季、リーグが最後まで行なわれていたら新人賞間違いなしだった24歳の竹山は、福岡のような「ひとりで取り切るタイプのWTB」ではないが、スキル、判断力、スペース感覚に長け、トライへの嗅覚が鋭い。日本代表で同チームの先輩でもある松田力也と共に練習したという、プレースキッカーとしての能力の高さも魅力だ。

さらにWTBでは、明治大出身で突破力に優れたルーキー、山﨑洋之(クボタ)はトップリーグで大きなアピールしたいところ。7人制ラグビーで東京五輪を目指す、松井千士(ちひと/キヤノン)のスピードも注目したい。

公にはされなかったが、昨季も代表候補選手は50人ほどリストアップされていたという。特に今までジェイミー・ジャパンに選ばれていない選手たちは、代表候補が発表されるまでのトップリーグのファーストステージ7試合、セカンドステージ4試合の計11試合が勝負になるだろう。

ジョセフHCやファンをあっと驚かせ、23年W杯の日本代表に自ら名乗りを上げる選手がたくさん出てくることを楽しみにしたい。