2021年のJ1リーグについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第188回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、J1リーグの展望について。2月26日に開催されるオープニングマッチ「川崎フロンターレ対横浜F・マリノス」でいよいよ開幕する2021年のJ1リーグ。そんな今シーズンの展望を宮澤ミシェルが語った。

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今シーズンのJ1リーグの行方を予想すると、やっぱり川崎フロンターレが中心になるだろうな。昨シーズンは記録づくめで優勝したメンバーがほとんど残っているからね。

ボランチの守田英正が移籍で抜けたのは痛いけれど、その中盤には左利きのジョアン・シミッチを名古屋から獲得した。川崎Fの場合、新加入選手がチームのスタイルにフィットするのに苦労するケースが多いけど、シミッチは比較的早い時期に適応できる気がするよ。

テクニックがあるし、視野も広いし、なにより川崎Fのスタイルを築いた風間(八広)さんが、名古屋を率いた頃に獲った選手だからね。シミッチは川崎Fのようなパススタイルのサッカーは得意なんじゃないかな。

不安要素はACLだな。川崎Fにとって過去の結果を見れば鬼門の大会。ACLの開催が新型コロナウイルスの影響でどうなるのか不透明な部分はあるけど、これが川崎Fにどう転がるのか。悪い流れにハマるとACLだけではなく、リーグ戦のタイトルにも影響を及ぼすかもしれないね。

大本命がこの5シーズンで4度目の優勝を狙う川崎Fなら、その対抗馬は名古屋グランパスと期待しているんだ。

昨シーズンは川崎Fとも1勝1敗の地力があるところに、オフにはFWに柿谷曜一朗(C大阪)と齋藤学(川崎F)、MFに長澤和輝(浦和)、CBに木本恭生(C大阪)、SBに森下龍矢(サガン鳥栖)を補強した。今シーズンに勝負をかけているのが伝わってくるよ。

GKのランゲラック、CBの丸山祐市と中谷進之介、ボランチの米本拓司と稲垣祥で構成する守備陣は固くて、そこに木本と長澤が加わって厚みが増している。守備の安定感がベースのチームは大崩れしないから、いい補強をしたよね。

あとは攻撃陣が得点を取れるか。金崎夢生や前田直輝、マテウス、ガブリエル・シャビエルがいて、柿谷と齋藤が加わった。このメンツならリーグ戦ではゴールは奪えると思うよ。ただ、ACLを考えたときには強烈なインパクトはない。そこが課題だな。

この2チームを追うのが、鹿島アントラーズだろうね。昨季はアントニオ・カルロス・ザーゴ監督のもとで世代交代が進んだし、MFに補強した新外国人のディエゴ・ピトゥカは前評判が高い。

あとは、なにより昨季33試合18得点でベストイレブンに輝いたFWエベヴェラウドが中国からの巨額オファーを断って残留したのが大きいよ。「アントラーズで歴史をつくりたい」が残留の理由だそうだけど、こういうコメントを聞くと応援したくなるってものだよな。

鹿島の課題は決定力だよな。エヴェラウドは残ったけど、今季は彼へのマークは厳しくなる。それによって手薄になる急所を突ける点取り屋が現れるかどうかだな。

この3チームが優勝争いの軸になって、昨季2位のガンバ大阪、4位のセレッソ大阪、FC東京、横浜F.マリノスが絡んでくるんじゃないかな。

ほかには個人的にサンフレッチェ広島が気になっているんだよ。昨季はリーグ3位の15得点を決めたレアンドロ・ペレイラがG大阪に移籍。その代わりに昨季は横浜F.Mで22試合13得点をあげたジュニオール・サントスを獲得した。彼が決定力を発揮できれば、上位争いに加われるのかもしれないね。

今季J1に昇格してきた徳島ヴォルティスは、新監督のダニエル・ポヤトスが来日のメドが立たないそうなんだ。開幕も不在になる可能性があるっていうから、新体制での船出なのに大変だよな。困難を乗り越えて7年ぶりのJ1を戦い抜いてもらいたいよ。

下位4チームが自動的に降格する今シーズンは、優勝争いとともに残留争いも例年以上に厳しくなると思うよ。

J1は戦力差はそれほど大きいリーグではないから、下位だと予想したチームが上位進出しても不思議ではないし、逆に上位や中位は手堅いと思ったチームがスタートダッシュでつまづいて、そのまま下位に低迷することだってありうる。開幕戦は今季の行方が占える大事な試合だけに、しっかり20クラブの戦いぶりをチェックしていきますよ!

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