本田について「サッカー選手としては相当厳しい立ち位置にいる」と語るセルジオ越後氏

欧州の冬の移籍市場が閉じる直前のタイミングでふたりの日本人選手の新天地が決まったけど、経緯もその後の展開も、何もかも対照的だった。

まずは南野。昨年1月に加入した名門リバプールから同じイングランドのサウサンプトンに半年間の期限付き移籍。

これは南野が戦力外となり、代理人が必死になってチームを探した移籍ではない。もっと試合に出たい南野、もっと南野に成長してほしいリバプール、そして、得点力不足を解消したいサウサンプトンの3者にとってメリットのあるいい移籍じゃないかな。

そして、移籍後すぐのリーグ戦に先発フル出場。それだけ期待されている証拠だし、南野自身も挨拶(あいさつ)代わりのゴールを決めて好スタートを切った。

残念ながらリバプールでは定位置を確保できなかった。サラー、フィルミーノ、マネといったワールドクラスの怪物たちに追いつけなかった。

でも、悲観することはない。過去にもヒデ(中田英寿)がローマでトッティを超えられなかったわけだし、香川もマンチェスター・ユナイテッドでポジションを奪えなかった。ビッグクラブの壁はそれだけ高いということ。挑戦するだけでも価値がある。

そして、厳しい現実を知り、今のままではダメだと行動を起こした。試合に出られないままブランドにしがみつくよりも全然いい。

サウサンプトンでは当面、先発のチャンスをもらえるはず。試合に出続ければコンディションももっと上がるし、あとはそこで目に見える結果を残せるかどうか。プレミアリーグはレベルが高いから簡単なことではないと思うけど、ぜひ活躍してリバプールに呼び戻されるか、別の強豪クラブへの移籍を目指してほしいね。

そして、もうひとりは昨年12月にボタフォゴ(ブラジル)を退団して無所属となっていた本田。ポルティモネンセ(ポルトガル)への加入が発表されたものの、その後、選手登録が間に合わず破談になった。驚いたね。

そもそもポルティモネンセは選手の売買、スポンサー契約などで日本とは経済的に縁の深いクラブ。純粋な戦力としてというよりは、商業的な意味合いの強い獲得だった。

一方の本田自身もあれこれ言っていたけど、ここで活躍して羽ばたくというよりは、自分のイメージやサイドビジネスのためにまだ海外にいたかったというのが本音だろう。

それは入団発表ひとつとっても明らか。クラブでの会見よりも先に、自分の会社の音声サービスを使って発表した。要するに自社媒体への誘導、宣伝だ。それを認めるポルティモネンセもどうかとは思う。その後の破談の経緯も含め、クラブと本田の本気度には疑問符がつく。

本田はもう半分ビジネスマン。弁が立つし、キャラクターもユニーク。プロサッカー選手としてメディアをうまく利用しながら好感度を上げ、それを自分のビジネスにつなげている。

もちろん、生き方はいろいろだし、引退後の人生もあるわけだから否定するつもりはない。また、彼はサッカーを通じた社会貢献活動も行なってきた。

ただ、裏を返せばサッカー選手としては相当厳しい立ち位置にいるということ。ここ数年はクラブを転々として、ピッチ上ではよい印象を残せていない。それなのに、「東京五輪出場を目指す。俺を選べ」と言われても、あまりに現実味がなさすぎる。応援はしたいけど、まずは今後どうするんだろうね。

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