森保監督にはオーバーエイジも含めて、本番を想定したメンバー、戦い方で臨んでほしいと語るセルジオ越後氏

年度末に余っていた予算を日本サッカー協会が一気に使ったのかな。それは冗談にしても申し分のないマッチメイクだね。

五輪代表(U-24代表)が26日と29日にU-24アルゼンチン代表と、W杯2次予選のモンゴル戦(30日)を控えたA代表が、25日に韓国代表と親善試合を行なうことになった。

アルゼンチン戦も韓国戦もどちらも楽しみだけど、A代表の最終予選進出はすでに決まったようなもの。東京五輪が開催される前提で考えるなら強化の優先順位が高いのは五輪代表だ。

もともと五輪代表の強化はうまくいっていなかった。誰が中心でどんなサッカーで勝利を目指すのか、チームの形が見えていなかった。そこに新型コロナウイルスが発生し、昨年1月のU-23アジア選手権以降、試合を行なえていない。それだけに今回のアルゼンチンとの2試合は貴重だ。

アルゼンチンは南米予選を1位で通過したときの主力がそろい、オーバーエイジ(25歳以上)の選手も招集している。読者の皆さんの中には、コロナ禍の今、なぜ強豪のアルゼンチンがほぼベストのメンバーで来日し、完全隔離という不自由な条件下に置かれてまで日本と親善試合をするのか、と不思議に思う人もいるかもしれない。

答えはすごくシンプル。彼らは本気で東京五輪の金メダルを狙っているということだ。欧州には五輪をそれほど重視せずにベストメンバーをそろえない国もある。でも、南米のアルゼンチンはいつも本気。実際、2004年アテネ大会、08年北京大会では金メダルを獲得している。

最近は以前ほど若手が育たなくなったともいわれるけど、今回も南米1位通過。チャンスだと思っているのだろう。

また、すでに欧州でプレーしている選手が多いとはいえ、いずれもそれほどメジャーなクラブに所属しているわけではない。注目を集める五輪の舞台で活躍し、今より大きなクラブへステップアップしたいという野心も強いはず。そういったハングリー精神は南米独特のものだね。

その意味で、事前に日本の環境を知り、コロナ感染予防に努めながら試合をする経験を積むことは、本番で大きなアドバンテージになるわけだ。

それだけモチベーションの高い強豪を迎えるわけだから、日本もしっかりと強化につなげなければいけない。この原稿の締め切り時点で招集メンバーは不明だけど、森保監督にはオーバーエイジも含めて、本番を想定したメンバー、戦い方で臨んでほしい。

一方、A代表の韓国戦は強化よりも興行的な意味合いが強いかもしれない。それでも、韓国は日本が常に負けてはいけない相手だし、ホームでやる以上、ノルマは勝利だ。

また、コロナ禍にあって、カタールW杯の最終予選の開催方式もどうなるかわからない。韓国とも対戦する可能性を考えれば、ここで快勝していいイメージを持っておきたいね。

日本代表のテレビ中継の視聴率低下が指摘される昨今だけど、韓国との対戦となればよくも悪くも注目度は自然と高くなる。5日後のW杯予選のモンゴル戦よりよほど盛り上がるだろう。そこでどういうプレーができるか。

暗い話題が多い今の世の中にあって、今回のアルゼンチン戦、韓国戦で「サッカー面白いな」「日本もなかなかやるな」と思ってもらえるような好ゲームを期待したい。

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