バルセロナについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第194回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、バルセロナについて。CLではパリ・サンジェルマンに完敗だったバルセロナだが、その後のリーグ戦では2連勝。意気消沈するかと思われた中での復調の兆しを宮澤ミシェルは、「予想外だった」と語る。

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バルセロナはもう今シーズンはダメだろうと思ったんだけど、息を吹き返してきたね。

CL決勝トーナメント1回戦でパリ・サンジェルマンにトータルスコア5-2で完敗した時には、バルサはこのままリーグ戦でもズルズル負けが込んでいくと予想していたんだよ。

なぜなら2月は守備が散々だったからね。コパ・デル・レイ準々決勝で格下のグラナダに3失点して、続くラ・リーガでのベティス戦も2失点。この2試合は攻撃陣の調子がよかったことで負けずに済んだんだけど、その後にあったコパ・デル・レイ準決勝のセビージャ戦は2-0で完敗。そしてこの直後にあったのがPSGとのCL決勝T1回戦の1stレグ。

攻撃陣が封じられて得点を奪えないと苦しい試合展開になってしまうチーム状況は、PSG戦でも変わらなくて、1-4で惨敗。ショックだったよな。メッシのバルサがよかった頃を知っているから、なおさらでさ。

ただ、これまでのバルサの積み上げたイメージで見るから衝撃的なんだけど、ちゃんとサッカーの内容を見れば当然と言えるものだったね。

現代サッカーが難しいのは、失点が増えているから守備陣が悪いと割り切れるほど単純なものではないんだよ。攻撃と守備が表裏一体だからね。

これまでのバルセロナはメッシという超スーパーマンが攻撃で圧倒的な存在感を発揮するから、守備陣の負担が少なくてすんだ。でも、メッシが全盛期を過ぎて普通のスーパーマンになってしまうと、彼が守備をほとんどしないツケを守備陣が払わされちゃう。

そういう状況だったから、今季のバルサはもう終わったと思ったんだ。でも、CLに負けて憑き物が落ちたかのように攻守のサイクルが好転した。

CL後の最初のゲームになったリーグ戦では4-1でウエスカを圧倒し、続くレアル・ソシエダ戦にも6-1で快勝して2連勝。

あんなに苦しんでいたチームがわずかな時間で蘇っちゃうんだから、サッカーは本当に不思議だよ。

もちろん、フォーメーションを4バックから3バックへ変更したとか、デンベレをワントップに置いたことが機能したとか理由はあるんだよ。

だけど、そういうのは表面的なものに過ぎないはずだよ。世界トップレベルの選手たちが集まっているから、いまさら布陣や戦術によっての新発見はあまりないと思うんだ。

それよりも布陣や戦術が含んでいる意味合いは、メンバー全員の気持ちをひとつにして同じ方向に向かわせるって部分が大きいんじゃないかな。

いずれにしても、バルサが息を吹き返したことで、ラ・リーガは俄然おもしろくなってきたよ。28試合を終えた時点での順位は、首位がアトレティコ・マドリード。そこから勝ち点4差の2位にバルセロナが続き、3位のレアル・マドリードも首位まで勝ち点6差の位置にいる。

残り10試合ほどのなかで逆転優勝が起きても不思議はないし、バルサはコパ・デル・レイでも決勝に駒を勧めているから国内二冠に輝く可能性だってある。

メッシは今シーズン限りでバルサから移籍するという噂があるけれど、もし本当にそうだったら、あれだけタイトルをクラブにもたらしてきたメッシが、無冠でバルサを去るなんてのは寂しすぎるよな。

バルサのメンバーがそういう部分も意識していたら、復調したチーム状況はしばらく落ちないと思うから期待しているんだ。 

リーグタイトルの行方が最後の最後までもつれそうだってのもあるし、なによりメッシがあのユニフォームを着るのも今季限りかもしれないだけに、1試合も見逃さないで、しっかり目に焼き付けてもらいたいよね。

ただまあ、来季もバルサに残ったら、それはそれで万々歳ってことで!(笑)

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