サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第195回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、チャンピオンズリーグについて。いよいよ始まるCLベスト8の戦いの見どころを宮澤ミシェルが解説する。
*****
いよいよチャンピオンズリーグの準々決勝だね。ベスト8やベスト4になってくると白熱する試合になるケースが多いから楽しみだよ。
ベスト4をかけて行なわれる4試合のなかで最大の注目は、やっぱりバイエルン・ミュンヘンvsパリ・サンジェルマンだよな。昨年の決勝カードがこのラウンドで再現するのがもったいないように思うけど、決勝戦のような一発勝負じゃない舞台での対決だと、両チームがどんな戦い方をするかは見たいんだよね。
去年の実績に加えて、今シーズンの戦いぶりを考えると、バイエルンが優勢な気がするよ。ボールをポゼッションして押し込むこともできるし、守備を固めてカウンターでの一発狙いもできる。戦い方に幅があるのが強みだし、2連覇しても不思議はない力がある。
ただ、不安要素もある。レヴァンドフスキが右膝靭帯のケガでPSG戦に出られなくなったことだよな。数少ないシュートチャンスを確実にモノにできるストライカーの不在で、バイエルンの選手たちが慌てないとも限らないからね。
バイエルンが浮足立つ展開の可能性がないとは言い切れないほど、PSGもメンツがすごいよ。特に攻撃陣のネイマール、ムバッペ、ディマリアの3人のコンディションが揃えば、バイエルンの守備陣に大きな風穴をあける力はある。守備陣は相手にレヴァンドフスキがいないことで重圧は減っていいプレーを見せる気もするんだ。
この戦いが事実上の決勝戦と言ってもいいんだけど、でも、このカードの勝者が決勝まで勝ち上がるとは限らないのがCLのレベルの高さだよ。
バイエルンとPSGの勝者が準決勝で対戦することになるのが、マンチェスター・シティとドルトムントの勝者。普通に考えればプレミアリーグで圧倒的な強さを見せているマンチェスター・シティが勝ち上がると思うけど、ドルトムントのFWハートランドが大暴れするのも見たいところだよな。
シティを率いるペップ(ジョゼッペ・グアルディオラ)にしたら、今年こそCLのタイトルを獲りたい思いは強いんじゃないか。バルセロナではCL優勝を手にしたけど、バイエルンでもシティでもリーグでは圧倒的なチームをつくりあげたのに、CL優勝には届いていない。しかも、シティでは3シーズン連続で準々決勝で敗れている。まずはハートランドをしっかり抑え込んでドルトムントに勝利できるかだよな。
注目しているのが、チェルシーだね。ラウンド16でアトレティコ・マドリードに勝利したけど、あの手堅いサッカーのアトレティコを黙らせちゃうんだもの。あの3バックの押し返すパワーは、なかなか見られるものじゃないよ。
一般的に3バックの場合、相手の攻撃を受けると中盤の両WBはDFラインまで下がっちゃうんだよね。でも、チェルシーは3バックが強いから、よほどのことがない限り両WBは中盤で相手をチェイスできる。中盤で人数をかけてボールを奪えるから、攻撃にも素早く転じられるんだよ。ポルトもいいチームだけど、ベスト4に進むのはチェルシーだろうな。
スペイン勢の最後の砦となってしまったレアル・マドリードとリヴァプールは、どちらのチームのセンターバックが意地を見せるかだろうな。リヴァプールはファン・ダイク、レアルはセルヒオ・ラモスを故障で欠いているシーズンになっているけど、この大黒柱の不在が大一番でどう影響するかだよな。
ラ・リーガの解説をしているから心情的にはレアルに勝ってもらいたいけど、リヴァプールはリーグ戦でも苦しんでいて、来季のCL出場権を手にできるか微妙なラインにいる。CLに出場できないとなったら、クラブが負う金銭ダメージはとんでもなく大きいからね。そういう事情を考えると、選手はCL優勝に向けて遮二無二にゴールを狙うと思うよ。
新型コロナウイルスの影響で世界中の混乱はまだ続いていて、選手たちだって不安だろうけど、ピッチでベストパフォーマンスを発揮してくれてる。世界最高峰のサッカーが見られることには本当、感謝しかないよな。
これは毎年、感じていることだけど、欧州リーグはCLでベスト8が始まるとシーズン終了に向かって加速度が増す気がするんだよね。この難しいシーズンのエンディングにどんなドラマが待っているのか。そこを堪能するためにもCLベスト8以降の戦いをしっかりチェックしてくださいね!