欧州スーパーリーグ構想について語った宮澤ミシェル氏 欧州スーパーリーグ構想について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第198回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、欧州スーパーリーグ構想について。4月18日に発表されるや、多くの批判を浴びた欧州スーパーリーグ構想。サッカー界に大きな波紋を広げたこの騒動を宮澤ミシェルが語った。

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欧州スーパーリーグ構想は早々にポシャっちゃったね。創設を発表するや否や世界中から猛烈なバッシングを受けたけど、サッカー界に一石を投じることはできたんじゃないかな。

伝え聞くところによれば、レアル・マドリードとユヴェントスが中心になって、欧州各国の20クラブほどで新たなリーグ戦をやろうとしていたそうなんだよな。

スペインからはバルセロナとアトレティコ・マドリード、イタリアからはミランとインテル、そしてイングランドからマンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リヴァプール、アーセナル、チェルシー、トッテナムの6クラブの合計12クラブが参加を表明していた。

ただ、批判を受けたことで、ほとんどのクラブがすぐに参加を撤回しちゃった。変わり身の早さもどうかと思うよ。

一方で参加を見送ったパリ・サンジェルマンとバイエルン・ミュンヘンの株は上がったというよね。もしも、この2クラブまで参加を表明して、いわゆるビッグクラブのすべてが同じ未来像を描いていたら、世間の反対にあっても果たして計画は止まっていたかはわからないよな。

個人的にはスーパーリーグ構想には反対だな。レベルの高い選手を揃えたチーム同士が対戦して常にクオリティーの高い試合を提供することに魅力は感じるよ。でも、起きる確率は低くてもジャイアントキリングがあるのもサッカーなんだ。

それに新たなクラブが世界の頂点に上り詰める可能性がほとんどなくなるのも、どうかと思う。

例えば、ドイツではライプツィヒがこの数シーズンはいい選手を輩出しながら、クラブ自体も好成績を残しているし、CLでも決勝トーナメントに進んだことでクラブの収入も増えている。これを継続していければクラブの地位を高められるよね。

だけど、欧州スーパーリーグ構想では、先に挙げた12クラブに3クラブを加えた15クラブは成績にかかわらず参加が固定されていて、5クラブほどが成績に応じて参加できるシステム。これだとこれからクラブを大きくしようという夢は、なかなか叶わないからね。

ただ、今回の一件は本当に欧州スーパーリーグ構想が完全な悪者かというと、そうとも言い切れないんだよな。

ビッグクラブは魅力的なサッカーを提供するために、高い年俸で選手を雇うなど自分たちのチームに莫大な投資をしている。そこには故障などさまざまなリスクが孕んでいるんだけど、それも覚悟の上だよな。

だけど、CLやEURO(欧州選手権)などを主催するUEFA(欧州サッカー連盟)や、その上位団体でW杯を主催するFIFA(国際サッカー連盟)は、そうしたリスクはほとんど抱えていない。それでいて莫大な収益が生まれると、連盟には大きな額が入っていく。

そりゃあ、ビッグクラブにしたら自分たちの努力の上前をピンハネされているような気分にもなるよ。

この話が出始めたのは昨日今日のことじゃないからね。ビッグクラブが長年にわたって溜め込んだ不満が解消される気配がないから、彼らは今回行動に出たんだよな。

今回の一件を受けてかどうかはわからないけど、UEFAはCLのシステムを変更することを決めた。でも、ビッグクラブが抱える火種が消えたわけではないからね。この問題はこれから先も燻(くすぶ)り続けるんじゃないかと思うよ。

気がかりは欧州スーパーリーグに参加を表明したクラブへの制裁だよ。仮に今年のCLから除外されることになれば、ベスト4に残っているレアル・マドリード、チェルシー、マンチェスターシティーが対象になって、対象外なのはパリ・サンジェルマン(PSG)だけになってしまう。

ベスト8で負けたチームを組み上げて準決勝をやることになっても、それで盛り上がれと言われても厳しいものがあるよな。近日発表されるという制裁内容が、これ以外のものになることを願うばかりだよ。

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