ここ1、2年で一気に増えたプロ野球OBのYouTubeチャンネル。その戦場に、現役時代から独自の感性で言葉とトークを紡いできたG.G.佐藤が殴り込みだ!
今はまだ「登録者数が引くほど増えない」と奮闘中だが、ゲストにも女性アシスタントにも頼らず、話芸と短尺動画を武器とするストロングスタイルは斬新! というわけで、本人を直撃してきました!
※この記事は、3月29日発売の『週刊プレイボーイ15号』に掲載されたものです。よって登録者数などのデータはすべて、雑誌掲載時の3月24日時点のものになります。ご了承ください。
※記事中に計33個出てくる注釈(※)は、インタビューの最後にまとめて掲載しています。
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■会社名ならコケても俺のせいじゃない
2021年、プロ野球界でもYouTubeは群雄割拠の戦国時代。名球会入りした超有名OBも、名うてのひょうきんOBも、こぞって「チャンネル登録といいねをよろしく」と喧伝(けんでん)している。
そんななか、「G.G.佐藤(以下、GG)がすごいことになっている」という好事家(こうずか)たちの唸(うな)りを耳にした。
猛打と「キモティー!!」(※1)で大ブレイク、北京五輪での落球事件(※2)、そして3度の戦力外(※3)を経て、営業マン(※4)になっていたはずのGGが、YouTuberとしてキモティー大復活。週プレでは北京五輪直前の2008年6月以来、13年ぶりのインタビュー!
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――GGさんのYouTubeが球史に残る面白さだと聞いて、実際見たらドハマリしてしまいまして。それでインタビューに来ました。
GG うれしいです。でも、どこでそんなこと言われてるんですか? うち、全然登録者数(*5)いないですよ。『里崎チャンネル』(※6)に比べたらミリですよ、ミリ。
――早くしないと世間に見つかってしまう!と思って、急いで来たんですが。
GG ご安心ください。今のところ見つかる気配はありません。どうしてだろう。まあまあ面白い自信はあるんだけど。やっぱり世の中、いいものが売れるとは限らないんでしょうか。
――登録者数の多いチャンネルは、だいたい超有名ゲストを呼んだり、きれいな女性をアシスタントにしたり。GGさんの『トラバースTV』(※7)のストロングスタイルは異彩を放っていますよ。
GG うちは基本、野球部(※8)のキノコ(※9)とふたり。そもそも会社の名前でやってる謎チャンネルですから。
――なぜ『GGチャンネル』にしなかったんですか?
GG 今までYouTubeの誘いは全部断っていたんです。実はこう見えて、あんまり目立つのも好きじゃないんですよ。
――13年前の週プレでも、「キモティー」は最後まで封印(※10)したままでした。
GG あの頃は求められてばかりだったので、「そう簡単には脱がねえぞ」とトガっていたんでしょう。申し訳ないです。
――代わりに「俺は球界イチの下まつげ。上まつげも合わせて2冠王だ。下まつげビーム」と。
GG それは事実ですね。ただ、あの後に北京五輪で、セ・リーグにも青木宣親(ヤクルト)という美まつげがいたと判明するんです。世の中には知られていませんが、北京では"まつげ左中間"でした。
――話を戻します。目立つのがキライでまつげがキレイなGGさんが、なぜYouTubeを始めたのですか?
GG 会社勤めも6年たつと慣れが出ます。そこにコロナがあり、世の中の先行きが見えなくなった。やりたいことはどんどんやっていかないとダメだなと。
それで「『GGチャンネル』どうですか?」って聞かれたんですけど、自分の名前でコケるのは怖いじゃないですか(笑)。『トラバースTV』にすればコケても俺のせいじゃない。それで決めました。
――保険だったんですね(笑)。
GG テーマも当初は会社の説明とか、地盤調査の話をやりたかったんです。でも、いきなりじゃ誰も反応しないだろうから、まずは野球ネタとGGのキャラクターを前に出して認知してもらう計画......だったんですけど。
――登録者数がなかなか増えてこないと。
GG でも、俺はこのプレイボーイの取材で流れが変わると信じてます。読者の皆さん、マジお願いします!
■中学時代に言われた野村監督の言葉
――ただ、本格開始は今年1月からで、動画は約20本。まだまだこれからですよね。
GG とりあえず50本たまるまでは試行錯誤です。僕は元プロ野球選手じゃ後発も後発で、同じことをやっても意味がない。
上原さん(※11)なんて、ゲストに桑田真澄さんや高橋由伸さん。黙ってても見るでしょ? 最強は清原さん(※12)。何をしたって応援したくなるもん。あの人たちと同じ土俵で勝負しようとは思いません。
――それで、世にあふれる野球YouTuberとは一線を画した忖度順位予想(※13)や南郷病(※14)といった話芸もの、そしてジャルジャルチャレンジ(※15)やら少女時代(※16)やら見事な捕球で過去の自分とサヨナラ(※17)やら、独自すぎる企画ネタで勝負しているんですね。
ちなみにツイッターも今年1月スタートですが、こちらは瞬く間にフォロワー数1万8000人以上。めちゃくちゃ巧みな使い手ですね。
GG 涌井(※18)がチームメイトに「GGさんって頭おかしいんですか?」と言われたそうです。先日は「北京五輪が中止になればいいのに」(※19)とつぶやいたら、めちゃくちゃバズったなあ......。
――それはバズりますって!
GG ツイッターは以前から研究(※20)していたこともあるんですが、僕、もともと言葉が好きなんですよ。実は今もコピーライター講座の平日コースに通っていまして。
――だから「キモティー」の前口上(※21)みたいな言葉がすらすら出てくるんですね。
GG 昔から出会ってきた言葉もずっと残っているんです。中学時代、野村監督(※22)に言われたこと。沙知代(さちよ)さんにボコボコに言われたこと。鮮明に覚えています。
――野村監督はどんな言葉を?
GG 印象深いのは、「選手は自己評価が高い」と。プレーヤーは「なぜ俺を使ってくれないんだ!」と思いがちだけれども、結局は第三者の評価で使われるかどうかが決まる世界なんだから、「常に自分がどう見られているかを考えなければいけない」と教わりました。
それで、沙知代さんの言葉(※23)が発端となった「GG佐藤」という名前を売り出すために、佐藤隆彦は何をすればいいか......なんてことも常に考えてきました。
――YouTubeも、客観的にGG佐藤をプロデュースされている感覚なんですね。
GG そう。悪くないと思うんだけどな......。野村監督、天国で「自己評価高いわ」って失笑してますかねえ。でも、会社の採用面接で「YouTubeを見て楽しそうな会社だと思いました」と言ってくれる方もいるそうなので、始めてよかったと思います。
――いい流れになってきたんですね。
GG ただ、ここに来てヤツの登場ですよ。阪神のT.T.佐藤(※24)! マジで勘弁してほしい。やっとパンチさんを出し抜いて、球界の佐藤枠(※25)はGGで安泰だと思っていたのに。営業妨害です。
――佐藤輝明はシーズンでも活躍しそうですね。
GG いや、打ちませんね。
――え、何か重大な欠点が?
GG 願望です(キッパリ)。
――活躍すれば東京五輪に選出される可能性もありますね。ポジションもGGさんと同じレフトかもしれません。
GG それはかわいそうだ。万が一フライを落としたら、背負っている「佐藤」のせいで「GG」的な何かを人々に連想させてしまう。僕は国際大会があるたびに、選手たちに対して「決定的なエラーをするなよ」と願っているんです(しんみり)。
――やはり北京のような悪夢は後輩に味わってほしくないのですね......。
GG ......俺が手に入れたポジションを奪うなよって。この"失敗キャラ"は取られたくない。僕以上のミスはダメです。WBCで内川がミス(※26)したときが一番ヒヤッとしましたね。
――東京五輪では、野球競技が北京以来の復活です。
GG 北京で一緒だった稲葉さん(※27)が監督です。北京のメンバーだったマー君(※28)、涌井、青木あたりが選ばれたらうれしい。金メダルなんて獲(と)ってくれたら、たまらんですね。俺の傷も多少は癒えるかなって。
■とにかく一回、GGに抱かれてほしい
――ここで、仕事を終えたトラバースTVのアシスタント、キノコさんが到着です!
キノコ あの......なんで取材されてるんですか?
GG 驚くなよ。ベタボメしてくれてるぞ。今日は俺たち、自信つけて帰れるわ。
――キノコさんはGGさんとのお付き合いも長い(※29)そうですが、あの野球選手離れした話芸は昔からですか?
キノコ 確かに、一緒に飲んでいても、GGさんの引き出しはほかにはないなと思います。ワード選びとか。順位予想の理由も「コアラのマーチくれるから」とか「仕事欲しいから」ですし。
――あんなにふざけた順位予想は見たことないです。
キノコ それにしても、登録者数が全然伸びないんです。どうすればいいんでしょう。
GG 里崎チャンネルのマネしたら間違えて見てくれるんじゃねえかな。あれはすごいよ。俺がテレビで解説するときの情報源は『里崎チャンネル』(※30)だからね。
キノコ 偉そうに言うことじゃないですよ!
GG 里崎さんが早く監督になればいいんだ。そしたら俺が引き継いで、キノコを切って、袴田さん(※31)と『里崎チャンネル』をやる。
キノコ トラバースTVをどうするか考えましょうよ。
GG 野球だけじゃなくてさ、経営とかビジネス色も出していきたいよね。あとは行徳(※32)の街ブラとか、近所の高校を強化して甲子園目指すとか。中学生の野球アカデミーもつくったし。俺はまた流行語大賞を狙うよ。
キノコ 「キモティー」を超えるやつつくりましょう。
GG いや、キモティーで。
キノコ まだそこ掘るの!
GG 本当は北京で金メダル獲って、流行語大賞ももらうつもりだったのに。このまま登録者数が伸びなかったら、キノコに譲って俺は逃げる。俺の代わりはGカップのサトウさんって人をアシスタントで入れろよ。
キノコ GGサトウで。
GG つまんないからちょっと黙ってて。
キノコ 自分で言ったんじゃないですか! とにかく、泥水すすってでもはい上がりましょうよ。僕、トクサン(※33)と知り合いなので、コラボをお願いしてきますよ。
GG ......そういうのはいいや。負けたみたいになるし。
キノコ プライドたけぇな!
GG コラボは里崎さんが「登録者数10万人いったらやってやる」って約束してくれたんだよ。あと9万8000人......。
キノコ 一歩ずつ頑張っていきましょう。読者の皆さんも、やってほしいことがあればコメント欄に書いてください。
GG とにかく一回見てほしいよね。GGに抱かれてほしい。抱かれたらきっとわかります。お願いします!
●G.G.佐藤
本名・佐藤隆彦。1978年生まれ、千葉県出身。法政大学卒業後、米フィリーズ1Aでプレーした後帰国し、2003年のドラフトで西武に入団。4年目の07年にレギュラーの座をつかみ、爆発力のある右の大砲として活躍。08年北京五輪日本代表。11年に戦力外通告されると、翌12年はイタリアリーグでプレーし、13年に帰国してロッテに入団。14年限りで現役引退。現在は測量・地盤改良会社の株式会社トラバース千葉営業所所長を務める傍ら、野球解説者としても活動している。
【注釈一覧】
(※1)「キモティー!!」......西武時代に考案した、お立ち台で最後に絶叫する決めゼリフ。
(※2)落球事件......準決勝の韓国戦で2失策、3位決定戦のアメリカ戦でも落球をしてしまう。
(※3)3度の戦力外......2011年西武、12年イタリア、14年ロッテ。
(※4)営業マン......現役引退後、父の佐藤克彦氏が社長を務める測量・地盤改良会社トラバースに入社。現在は千葉営業所所長。
(※5)登録者数......人気の目安。
(※6)『里崎チャンネル』......歌って踊れるロッテOB・里崎智也氏のYouTubeチャンネル。登録者数42万人は日本プロ野球界トップ級。
(※7)『トラバースTV』......GGがMCを務める、株式会社トラバースの公式YouTubeチャンネル。登録者数は2380人。
(※8)野球部......株式会社トラバースの軟式野球部。監督は佐藤克彦社長。プロ野球選手のセカンドキャリア支援として、元西武の林﨑遼、梅田尚通ほか独立リーグからも選手を多数獲得。
(※9)キノコ......トラバースTVのアシスタントを務める、同社野球部・木ノ内正樹主将の愛称。独立リーグの新潟アルビレックス・ベースボール・クラブを経て入社。実家は新潟県上越市の理髪店「カットハウスきのうち」。
(※10)最後まで封印......インタビュアーが執拗に言わせようとするも、「アレを見たければ球場へ見に来てください」とかわされた。
(※11)上原さん......元メジャーリーガー上原浩治氏の『雑談魂』は登録者数23万人。ゲストのブッキング力がえげつない。
(※12)清原さん......清原和博氏の『清ちゃんスポーツ』は登録者数37万人。ドキュメンタリー系企画の引きがとにかく強い。
(※16)少女時代......韓流アイドル少女時代の『Gee』をGGが歌い踊る短尺動画。GGいわく「俺はTikTokに向いてるかも」。
(※17)見事な捕球で過去の自分とサヨナラ......あの五輪代表ユニフォームを着たGGが難しい捕球にチャレンジする短尺動画。
(※18)涌井......西武や北京五輪でチームメイトだった現楽天の涌井秀章投手。GGとはツイッターでよく絡む。
(※19)「北京五輪が中止になればいいのに」......正確には「おはようございます!東京五輪はさておき、2008年の北京五輪は今からでも中止にして欲しいG.G.佐藤です!」。1万2000件のいいね。
(※20)以前から研究......バズツイートだけを集めた「まとめ」など。
(※21)前口上......お立ち台でキモティーと叫ぶ前のくだり。「愛の波動砲」などのワードが代表的。
(※22)野村監督......故・野村克也氏。GGは中学時代、妻の故・沙知代氏がオーナーを務める「港東ムース」で指導を受けていた。
(※23)沙知代さんの言葉......猫背の佐藤隆彦少年を沙知代氏が「ジジイじゃないんだから」と叱咤。
(※24)T.T.佐藤......タイガース・テルアキ・佐藤の略で、阪神の新人・佐藤輝明のこと。GGの造語。
(※25)球界の佐藤枠......現役だけで11名。バラエティ部門はパンチ佐藤氏が長らく君臨していた。
(※26)WBCで内川がミス......2013年第3回WBCの準決勝、プエルトリコ戦で内川聖一(現ヤクルト)が犯した走塁ミス。
(※27)稲葉さん......現日本代表監督の稲葉篤紀氏。
(※28)マー君......実はGGは現役時代、楽天・田中将大を通算3割6分以上、3本塁打と打ち込んだ。
(※29)お付き合いも長い......西武時代にGGのトレーニングを指導していた根鈴雄次氏(ねれい・ゆうじ/元エクスポス3A)が、木ノ内氏所属の新潟アルビレックスの打撃コーチでもあった縁から。
(※30)情報源は『里崎チャンネル』......「昔話に頼らず、キャラとトークを武器に最新の情報を発信している。あれはできないよ」(GG談)。
(※31)袴田さん......里崎チャンネルのアシスタントを務めるフリーアナウンサーの袴田彩会さん。
(※32)行徳......トラバースの本社がある千葉県市川市行徳。
(※33)トクサン......登録者数61万人の『トクサンTV』を主宰する野球YouTuber。