川崎にはアジアチャンピオンズリーグでも結果を出すことにこだわってほしいと語るセルジオ越後氏

今季ももう川崎の優勝で決まりか。そう思わずにはいられない強さだった。

GWに行なわれたJリーグの首位・川崎と2位・名古屋の2連戦は、川崎が2連勝。勝ち点差を大きく広げて早くも独走状態に入った。

1戦目はホームの名古屋が積極的なプレスをかけると予想していた。でも、むしろ受け身のプレーで立ち上がりから主導権を握られ、開始わずか3分で失点。その後も立て直せないまま0-4で大敗した。王者を相手に気持ちの部分から負けてしまった印象だ。

コロナ陽性の疑いで(その後確定)フィッカデンティ監督が急遽(きゅうきょ)不在となったのも影響したかもしれないね。

一転して2戦目は立ち上がりから名古屋が激しい守備を仕掛け、見応えのある試合になった。川崎は前半にセットプレーから先制し、後半に2点目、3点目と追加点を奪ったけど、その後は運動量が極端に落ちた。名古屋の猛攻を受けて2点を返されるも、なんとか3-2で逃げ切った。

名古屋は2試合で計7失点。守備が売りのチームらしくない、ミスからの失点が多かった。もったいなかったね。川崎との勝ち点差を詰めるためには絶対に勝たなければいけない。そんな首位攻防戦のプレッシャーが選手の動きを硬くしたのかな。

一方、川崎は2戦目の最後に疲れを見せたものの、王者らしい危なげない戦いぶりだった。この2連戦では、守田(サンタ・クララ)の穴を埋めるべく今季新加入したボランチのシミッチが特によかったね。

開幕当初はチームにフィットしていない部分もあった。でも、この2連戦では多くの局面に顔を出して味方をサポートし、効果的なサイドチェンジやラストパスで存在感を発揮した。中盤に彼がいることで、GKチョン・ソンリョン、DF谷口、ジェジエウ、FWレアンドロ・ダミアンとの強力なセンターラインが確立し、チームとして機能していたね。

今のJリーグで川崎は頭ひとつ抜けている。はっきり言って敵なしだよ。鬼木監督は素晴らしいチームをつくり上げた。ただ、Jリーグの歴代優勝チームと比べても最強という声には、現時点で同意できない。

単純比較が難しいのは大前提にしても、まず今と昔ではJリーグにいるトップ選手のレベルが違う。例えば、1996年の鹿島はレオナルド、ジョルジーニョと現役バリバリのブラジル代表選手がいて、その周りを日本代表の主力クラスの選手たちが固めていた。

また、その鹿島の後に黄金時代を築いた磐田にしてもやはりブラジル代表主将のドゥンガがいて、中山、名波、藤田と日本代表の大物がそろっていた。

でも、今はJリーグでプレーする大物外国人は少なくなったし、日本代表の選手の大半が海外でプレーしている時代。ケチをつけるつもりはないんだけど、鹿島や磐田といった昔の優勝チームと比べると、どうしても川崎のメンバーは小粒に見えてしまうんだ。また、簡単に独走を許してしまう他チームのふがいなさもある。

もちろん、川崎の選手やファンからすれば、そんなふうに言われたら面白くないよね。だからこそ、今季はぜひアジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも結果を出すことにこだわってほしい。川崎は過去に出場したACLで強さを見せられていない。その壁を乗り越えられるか。Jリーグの代表としてACLも席巻してほしいね。

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