「世界的な知名度がある彼の残留はJリーグにとって意味がある」と語るセルジオ越後氏

Jリーグにとってうれしいニュースだ。

神戸がイニエスタとの契約を2年延長すると発表した。その前日に神戸が「イニエスタに関する重要な記者会見」を行なうとアナウンスした際には、今年37歳という年齢、長期故障明けということもあり、引退の臆測も飛んだ。でも、フタを開ければ、自ら減俸を申し出ての契約延長。ファンもほっとしただろう。

コロナで観客数制限が続き、各クラブとも財政的に余裕がないなか、イニエスタのような大物外国人の獲得は、今まで以上に難しくなっている。その意味で、世界的な知名度がある彼の残留はJリーグにとって意味がある。

ただ、楽天やJリーグにとっての宣伝効果はともかく、ピッチ上のパフォーマンスに関していえば、正直、物足りない。これまで30億円以上ともいわれた年俸に見合う働きをしてきたかといえばノーだ。

誰もが憧れる、素晴らしい技術を持った選手なのは間違いないし、まじめでプロフェッショナルな取り組みは神戸の日本人選手に与える影響も大きいと思う。

ただ、チームを勝たせるという点においては、ジーコやドゥンガなどJリーグ創設以来、各チームで名前を残した大物外国人と比べて見劣りする。

神戸は2018年のイニエスタ加入以降、19年シーズンの天皇杯で優勝したものの、長丁場のリーグ戦では真価を発揮できていない。イニエスタ以外にも大物のビジャやポドルスキを擁しても優勝争いに絡めなかった。

イニエスタは人格者らしく、ピッチ上でもいつも冷静だ。激しいファウルを何度も受けても、怒りを露(あらわ)にするような場面はあまりない。でも、チームのリーダーとしては時として物足りなさも感じてしまうんだ。

例えば、ジーコやドゥンガは圧倒的なプレーを見せるのはもちろん、常にチームの先頭に立って戦っていた。また、チームメイトがふがいないプレーをすれば烈火のごとく怒っていた。相手に嫌われても勝つためならお構いなし。そうやって強引にチームを引っ張って黄金時代をつくり上げた。

イニエスタはバルサでプジョル、シャビの後にキャプテンを務めたけど、グイグイとチームを引っ張るタイプではなかった。今後、神戸がリーグ戦で結果を出すには、そして、神戸にとってのイニエスタが、鹿島にとってのジーコのような存在になるためには、そういう部分での頑張りが必要になるんじゃないかな。

幸い、今の神戸は面白いメンバーがそろいつつある。エースの古橋はコンスタントに結果を出していて本当に素晴らしく、今やイニエスタと共に神戸の顔になった。そして、山口が相変わらず豊富な運動量で中盤を支え、井上や菊池といったJ2経由の若手も主力に成長してきた。

また、4月から本格的にチームに合流したブラジル人のリンコン、ケニア代表のマシカの両外国人もネームバリュー以上に能力は高そう。彼らがフィットすれば、相当面白い。今後、チームとしてバケるかもしれないという期待感はあるね。

だからこそ、イニエスタには残された2年間で、神戸をリーグ優勝に導いた上で引退してほしい。それが輝かしいキャリアを歩んできた彼の最後の宿題。実現したらJリーグ全体が盛り上がるね。

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