前線でターゲットになる大迫勇也のようなタイプが欲しかったと語るセルジオ越後氏

守備優先の負けないサッカーを目指す。よくも悪くも狙いのわかりやすい人選だ。東京五輪前の最終選考の場となる強化試合、6月5日のU-24ガーナ戦と12日のジャマイカ戦に臨むU-24日本代表のメンバー27人が発表された。

注目は今回から合流するオーバーエイジ(OA)の吉田、酒井、遠藤航の3人。3月のアルゼンチンとの強化試合が終わった時点で噂されていたFWの大迫勇は招集されず、全員が守備のポジションの選手となった。初戦で対戦する南アフリカはともかく、2戦目のメキシコ、3戦目のフランスという強豪を相手に、先に点を取られたくないと考えたわけだ。

実際、この3人が加わることで守備は計算が立つ。最終ラインは右から酒井、吉田、冨安、中山、ボランチは遠藤 航と田中もしくは板倉という感じかな。GKを除き、ボランチから後ろはほぼA代表みたいなもの。強さも高さも経験も十分だ。まずは守備を優先し、攻撃はカウンターとセットプレー。そういうサッカーをするなら妥当な人選だね。

ただ、裏を返せば攻撃面には不安が残る。もし先に点を取られたらどうするのか。誰が切り札になるのか。このチームの前線にはスピードもしくはドリブルを武器にした小柄な選手が多い。それは決して悪いことではないけど、やはり攻撃のバリエーションという意味で、前線でターゲットになる大迫勇のようなタイプが欲しかったのも確か。

今回、攻撃陣が機能しなければ、「なぜ大迫勇を入れなかったのか」と批判を受けるだろう。それでも森保監督は守備の安定を優先した。まあ、これは一種のギャンブルだね。難しい判断だったと思う。

そうした事情を考えれば、カギを握るのは攻撃陣の頑張り。所属クラブで活躍した堂安はもちろん、個人的には前田と三笘(みとま)に注目している。

まず、前田のあのスピード、走力は魅力だね。丸刈り頭のコワモテで相手DFにプレッシャーをかけまくる姿は迫力がある。Jリーグでも得点を決めているし、2012年ロンドン五輪代表でワントップを務めた永井みたいな存在になれればいい。

三笘は相変わらずJリーグで圧倒的なプレーを見せているけど、3月のアルゼンチン戦ではアピールに失敗した。そのリベンジに期待したい。得点力の部分でほかの選手との違いを見せられるか。彼にとっては生き残りをかけた2試合になる。

その三笘に限らず、メンバー争いは熾烈(しれつ)だ。五輪本番の登録メンバーは18人。3枠のOAを除くと、五輪世代は24人のうち9人が落選となる。五輪まで2ヵ月を切った時期にこんなにたくさん選手を呼ぶのだから、森保監督もまだメンバーを固め切れていないのだろう。

でも、2試合しかないのに、こんなにたくさんの選手を使い切れるのかな。中途半端なことにならないかな。相手のレベルも本番とは違うわけで、評価は難しいよ。

さらに言えば、森保監督はW杯2次予選を戦うA代表の活動優先で、五輪代表は横内コーチが指揮を執るそうだ。相手の弱いW杯2次予選は誰が監督をやってもなんとかなるのに。理解できないね。食材をそろえるだけで、厨房(ちゅうぼう)に入らないシェフみたいなもの。当落線上の選手からすれば、ちゃんと見てくれよと思うだろう。そういうちぐはぐさは気がかりだよ。

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