コパ・アメリカは、この状況下では開催すべきではなかったと語るセルジオ越後氏

大勢の観客がマスクを着けずに大声を出して応援している。開催中のEURO2020(欧州選手権、以下EURO)ではそんな光景が各スタジアムで見られるけど、素直にうらやましいなと思う。選手のモチベーションも上がらないわけがないよね。

もちろん、欧州でもコロナは終息したわけではない。でも、世界的に見てもワクチン接種率の高い国が多いし、サッカー界が一丸となって元の日常を取り戻そうとしている印象だ。

そんなEUROとは対照的なのがブラジルで開催中のコパ・アメリカ(南米選手権)。現地ではいまだ多くの感染者、死者が出ているにもかかわらず、無観客とはいえ大会を行なっている。そして、選手やチーム関係者などからも感染者が相次いでいる。めちゃくちゃだよ。

そもそも今回はアルゼンチンとコロンビアで共催する予定だった。でも、コロンビアは政情不安、アルゼンチンはコロナ感染拡大を理由に開催を返上。そこで急遽(きゅうきょ)、ブラジルが名乗りを上げた格好だ。

率直に言って、この状況下では開催すべきではなかったと思う。ブラジルにいる僕の友人、知人の多くも開催反対派だ。

ただ、残念だけど、ブラジルは貧富の差の大きな国。経済的に苦しく、十分な教育を受けられない人も多い。そんな彼らは、コロナの影響でさらに苦しい状況に追い込まれている。

そこで政治家、つまりボルソナロ大統領は「コロナは風邪だ」と言い、コロナ対策よりも経済優先の政策を打ち出し、自身の人気取りをもくろんでいる。コロナがまったく収束していないのに、コパ・アメリカの開催にゴーサインを出したのもその一環。

ブラジル国民にとってサッカーは酸素みたいなもの。コパ・アメリカを開催すれば、その期間中は不満を抱えている国民もおとなしくなるだろうというわけだ。

また、ブラジルだけでなく、南米サッカー連盟、各国サッカー協会にもコパ・アメリカを中止にできない理由がある。おカネだ。EUROほどの大会規模はないにしても、スポンサー料や放映権など大きな利権が動いていて、そこに依存している。

そして、ここまでの大会運営を見聞きする限り、十分なコロナ対策が取られているとは思えないし、選手やチームスタッフの安全をどこまで本気で考えているかも怪しい。まともな判断ができなくなっている。

ただ、今回はボルソナロ大統領の思惑と違い、いくらサッカーが好きなブラジルでも大会開催に対する反対の声が出ているようだね。

また、地元開催の大会でブラジル代表が優勝できなかったら、サッカー人気にも影響が出てくるかもしれない。そういう意味ではかなりリスキーだ。

この構図は日本にとっての東京五輪に似ているとも思う。もちろん、コロナの状況は全然違う。ブラジルから見れば、今の日本は安全そのものだ。ただ、実際は欧州やアメリカほどワクチン接種が進んでいるわけではない。また、コパ・アメリカ同様に大きな利権が動いているから、初めから開催ありきで中止の選択肢はなかった。

もし、大会期間中に何か大きな問題が生じたら、オリンピックが大好きな日本人はどういう反応をするのか。そんなことを思ったよ。

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