EURO2020を振り返った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第209回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、EURO2020について。長きにわたる熱戦を終え、イタリア代表の優勝で幕を閉じたEURO2020。そんな、本大会のMVPを宮澤ミシェルが選ぶならイタリア代表のジョルジーニョだという。

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「すばらしかった!」のひと言に尽きる大会だったね。グループリーグから決勝戦まで、すべての試合のクオリティーが高くてさ。高すぎて観るのに疲れちゃったよ(笑)

イングランド代表とのPK戦を制したイタリア代表が、53年ぶり2度目の優勝を手にしたけれど、どちらのチームも勝利に値するプレーをしたよね。

この連載で以前も触れたけど、イタリア代表には衝撃を受けっぱなしだった。攻撃的なスタイルへの変貌は実に見事だったし、あのスタイルを根付かせたロベルト・マンチーニ監督の手腕は見事としか言いようがない。

36歳のキエッリーニと34歳のボヌッチのCBコンビがよく頑張ったよ。インシーニエとキエーザ、バレッラも攻撃で存在感を発揮していたけど、やっぱりMVPを選ぶとすればジョルジーニョだな。

目立たないんだけど、ゲームの流れを読めるからポジショニングが的確だし、なによりタフ。所属するチェルシーで今年はチャンピオンズリーグも獲っているけど、クラブでも重用される理由がわかるし、マンチーニ監督が信頼しているのも頷けるよ。

この大会はチーム全体の一体感が高いチームほど、上位に勝ち上がった印象だね。優勝したイタリア代表はマンチーニ監督を中心にした一体感が最後まであった。選手との信頼関係がガッチリできていたのが伝わってきたよ。

デンマーク代表もグループリーグ2連敗からよく立て直した。グループリーグ初戦で大黒柱のエリクセンが試合中に心肺停止のショッキングな状況になって、試合にも敗れたときは行く末を案じたけど、そこからシステムを変更してチーム一丸となって本来の力を取り戻したよね。

チェコ代表もいいチームだったし、オーストリア代表やウクライナ代表もチーム全体のグループ力が高くて、見応えのある試合をしていたな。

イングランド代表もチームの一体感はあったんだけど、なんで決勝戦はシステムを変えちゃったのかな? イタリア代表をリスペクトしすぎたのかな? グループリーグに苦しんだハリー・ケインがよくなっていたから、準決勝までの戦い方でもよかったんじゃないかと思ったよね。

ただ、中盤を厚くして相手を上回ろうとしたのが狙いだったと思うし、それがハマって先制点を奪うことはできたんだけどさ。そのまま勝たせてくれるほど、相手もヤワじゃないってことだよな。

ショックだったのはフランス代表だよ。決勝トーナメント1回戦でスイス代表に一時は3-1とリードしたところから追いつかれてのPK戦での敗退。ただ、振り返ってみれば、ドイツ代表とのグループリーグ初戦の内容に、この結果は隠されていたんだと思う。

試合自体は1-0でフランス代表が勝ったけど、得点はオウンゴールだし、攻撃もエムバペのカウンターだけで試合内容そのものはドイツ代表が上回っていた。でも、その時点では試合を重ねていけば、チーム全体としてのグループ力は高まると期待していたんだけど、最後まで個々の選手がバラバラだったな。

国際大会で上位に進出するような国はどこもタレントはそれほど差はないからね。最終的にグループ力がものを言うだけに、フランス代表が来年にW杯2連覇を本気で狙うなら、選手個々の特性だけに頼るサッカーをやっていたら厳しいだろうな。

スペイン代表はベスト4で敗れたけど、来年以降に向けて明るい光が差したよな。センターフォワードのところは相変わらずの人材不足で苦しんだけど、ペドリ(バルセロナ)があれほどチームの中心に成長するなんて思いもしなかったよ。まだ18歳だからね。あれだけ堂々とプレーできるんだから末恐ろしい。東京五輪にも出場するから楽しみだよ。

EURO中継の解説をやっていたから、EUROが終わると開放感があるんだけど、こうして大会を振り返っていると、次のEUROが待ち遠しくなるから不思議だね。あの熱気とクオリティーの高さに魅了されているからだし、なによりサッカーを取り巻く人や環境を含めたすべての雰囲気が最高なんだ。

次は3年後の2024年で、開催地はドイツ。今大会でレーブ監督が退任したドイツ代表が、自国開催に向けてどんな変貌を遂げるかも楽しみだよ。

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