サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第211回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、バルセロナについて。メッシと残留合意したバルセロナは新シーズンCL優勝を狙えるのか? 宮澤ミシェルが分析する。
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メッシがバルセロナへの残留に合意したらしいね。本当によかったと思うし、ひと安心だよ。
34歳になって、さすがのメッシにも衰えが少しは見られるようになってはいるけれど、まだまだ世界で指折りの選手なのは間違いないからね。
トップレベルでのプレーが厳しくなったキャリアの晩年なら別だけど、やっぱりメッシにはバルセロナのブラウグラナ(青色とえんじ色)以外のユニフォームに袖を通してもらいたくなかったんだ。
それにしても、メッシの年俸には驚かされたよな。残留が決まって明らかになったこれまでの年俸が191億8800万円!
ここから2026年までの5年契約では、その額の半額になるらしいんだけど、それでも単純計算で95億9400万円だぜ。そりゃあバルセロナが資金難にもなるってものだよな。
でも、メッシが残留しても新シーズンのバルセロナが、チャンピオンズリーグで世界の頂点を狙える体制になったというわけではないんだよな。
21-22シーズンもバルセロナが普通にやれば、リーグタイトルは間違いなく優勝を争うよ。メッシ退団騒動に揺れた昨季は、開幕から調子に乗れず苦しんで、優勝はアトレティコ・マドリードに譲ったけれど、最終的には3位。メッシだって序盤戦は全然ゴールが決まらかなかったのに、終わってみれば5年連続8回目のリーグ得点王だからね。
でも、問題はそこじゃない。チャンピオンズリーグのタイトルを狙えるかっていうところ。
バルセロナは14-15シーズンにCL優勝して以降は、15-16シーズンからは3シーズン連続で準々決勝敗退。18-19シーズンは準決勝で優勝したリヴァプールに、第1戦は3-0で勝利していながら、第2戦に0-4で敗れて敗退。
新型コロナ禍の影響で集中開催になった19-20シーズンの決勝トーナメント準々決勝では、優勝したバイエルンに8-2で蹴散らされ、20-21シーズンもパリ・サンジェルマンに決勝トーナメント1回戦で負けた。
勘違いしてもらいたくないのは、これは運が悪かったりギリギリの勝負を落としてトーナメントを勝ち上がれなかったわけではないってこと。バルセロナにはタイトルを獲る力がなかったよ。
じゃあ「今シーズンはどうなんだ!?」となるんだけど、現時点までの補強を見ていると心配になっちゃう。
新たに獲得した大物はといえば、契約満了で移籍金のかからない33歳のセルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)と、27歳のメンフィス・デパイ(リヨン)。ふたりともFWとしての実績は抜群だけど、チームとしての課題を解消する存在ではないよな。
バルサが本当に必要なのは中盤でしっかり守備のできる選手。メッシが相手ボールのときはほとんど守備をしないから、それを補ってあまりあるくらいの選手が必要。もしかすると、今季はその役割をデ・ヨングが担えると踏んでいるのかもしれないけど、果たしてどうなるのか。
バルサとしたらは18歳のペドリがブレイクしたから、しっかり補強してCLタイトルを争うチームに仕上げて、王道をメッシからペドリへと継がせていきたいところだよな。そのためにもメッシに年俸を半額にしてもらったんだろうしさ。
新型コロナ禍でどこのクラブも財政難なうえに、この夏はEURO2020もあったから、移籍市場の動きは鈍いのも当然のこと。でも、移籍市場は現地時間の8月31日の午後11時まで開いているから、ここから大きな動きがあるのかもしれないよな。
ラ・リーガの開幕は8月13日。ただ、ビッグクラブは主力選手がバカンスモードからコンディションを戻して、チームができあがるのは9月になってからなのが例年のこと。逆を言えばアイドリング状態でも序盤戦はなんとかなっちゃう。
だから、それまでの間にしっかり補強を進めて、ヨーロッパの舞台で輝くチーム力をつくりあげてくれるのを期待しているよ。