PSGについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第214回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、パリ・サンジェルマンついて。メッシをはじめ、セルヒオ・ラモスなども加入し世界屈指のタレント軍団となったPSG。そんな、彼らがCLを制覇するためのカギを宮澤ミシェルが語る。

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メッシが加入したパリ・サンジェルマン(PSG)を、マウリシオ・ポチェッティーノ監督がどうやって機能させていくのか興味深いね。

ネイマールとエムバペがいるところに、メッシが加わるわけだから、攻撃陣に注目が集まるのは仕方ないよ。エムバペはレアル・マドリードへの移籍話も浮上しているけど、移籍するにしても1試合はメッシとネイマールと揃い踏みを実現してからにしてほしいね。

ただ、メッシを獲得したということは、昨年までバルセロナが苦しんだ課題を、そっくりそのままPSGが引き継いだということでもあるんだよ。1試合の走行距離で8kmに満たないこともあるメッシがいることで、守備への負担はとんでもなく大きいよ。

PSGは今季、GKにイタリア代表ドンナルンマをミランから、CBにセルヒオ・ラモスをレアル・マドリードから、中盤にはオランダ代表MFのワイナルドゥムをリヴァプールから獲得した。

もともとのメンバーが豪華だったところに、これだけの補強をした。リーグ戦はもちろんのこと、チャンピオンズリーグ制覇への意欲が十分に伝わってくる。だけど、それを達成できるかは、メッシ起用で生じる守備の負担を、PSGのメンバーが解消できるかにあるだろうね。

たとえば、ポチェッティーノ監督が「メッシは70分までプレーしたら交代」というのをメッシに納得させて実現できたら、これはもうPSGの弱点はだいぶ解消されるよ。選手というものは90分間フルに戦いたいんだけど、晩年になればそれによってチームへのしわ寄せも増える。メッシだってそう。そこを同じアルゼンチン人のポチェッティーノ監督がメッシに伝えられれば、PSGのシーズンもだいぶ戦いやすくなると思う。

もちろん1シーズンに30ゴール近くは決めるメッシが加わった効果も間違いなく大きい。ネイマールはいままで以上に自由にプレーできるだろうからね。PSGに移籍してから少し失っていたインパクトの大きさを取り戻すんじゃないかと期待しているよ。

それにPSGにしたら2019-2020シーズンは決勝まで勝ち上がったけど、バイエルン・ミュンヘンに屈した。昨季はベスト4で優勝したマンチェスター・シティに負けた。大舞台で勝てないと『勝者のメンタリティーがなかった』という言い方がよくされるけど、ここクラスになると世界トップレベルの選手たちばかりだから、『勝者のメンタリティー』をみんなが持っているもの。単にCLの決勝トーナメントの勝ち方を知らないだけなんだけど、そこをメッシとセルヒオ・ラモスの獲得で埋めるんだろうな。

PSGの陣容は、いまや世界屈指のタレント軍団といっていいほどだけど、常勝チームになれるかのカギは、グループ力をどう高めていけるかにあると思うよ。すでにフランスのリーグ・アンは開幕しているけど、9月頃にメッシがリーグ戦に出るようになってからグループ力を高めていくことになるんだろうね。

そのポイントになるのが、中盤の構成だね。ワイナルドゥムが加わったけど、ここにはイタリア代表のマルコ・ヴェラッティ、セネガル代表のイドリッサ・ゲイェがいて、開幕戦で起用された元ポルトガル代表のダニーロ・ペレイラと元スペイン代表のアンデル・エレーラもいる。ここをどういう組み合わせにするのか。攻守の要になるポジションだから、ポチェッティーノ監督の腕の見せどころだよ。

それとベンチに座る選手たちのコントロールが重要だよな。これだけのメンバーがいたら、各国代表の主力選手だろうとベンチ要員になる。試合に出られなければ不満分子になることが多いし、実際にビッグクラブを率いる監督が気を一番使っている部分でもある。ここをポチェッティーノ監督がコントロールできるかも興味深い。

いずれにしろ今シーズンは、PSGがリーグ・アンやCLだけではなく、サッカーシーン全体の中心にいるのは間違いないよな。ここから彼らの戦いぶりをしっかり注目していきましょう!

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