サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第217回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、日本代表について。W杯アジア最終予選のホームでの初戦で敗戦するという、まさかの滑り出しだった日本代表。そんな日本代表について宮澤ミシェルは、「攻守で課題を抱えている」と語る。
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W杯アジア最終予選の難しさを思い出させてくれたよな。
日本代表はホームでの初戦のオマーン戦に0-1でまさかの敗戦。勝ち点3が理想だったけれど、勝ち点1でも仕方ないかなと思い始めた時間帯での失点だったからショックはあったよ。
オマーン代表がしっかり日本代表の攻撃パターンを研究してきたこともあったとはいえ、日本代表は選手同士の距離が間延びしていたし、なにより無理して走っているように映るくらい選手たちのコンディションが悪かった。
日本代表は右から左へ、左から右へとパスを展開して相手DFラインを揺さぶりながら崩したかったんだけど、パスの展開が遅いから相手に対応されていたし、リズムを全然つくり出せなかった。
失点シーンは典型的なボールウォッチャーになってやられるパターンだったね。左サイドを突破されてクロスをあげられて、そこに意識が向かったことで、ニアサイドからファーサイドへと流れた相手選手と、逆サイドから入り込んできた相手選手のマークの受け渡しに失敗して、ゴール前でCBの植田直通は何もできずにシュートを決められた。
あの状況になってしまうと、誰がCBであっても失点したと思うよ。ペナルティーエリア内でマークの受け渡しをしてもCBが対応するのは難しいからね。だから、結果論のようになるけれど、右SBの酒井宏樹が最後までシュートを決めた相手選手に付いていく方がよかったんじゃないかな。それでも失点したと思うくらい、完璧に崩されたゴールだったんだけど。
ただ、植田直通に関して言えば、自分の背後から入ってきた相手に前を取られたとしても、せめて体くらいぶつけてほしかったよ。マークを受け渡したあとに首を振って周囲を確認していたら、シュートを決められたとしても相手に体はぶつけられたはずなんだよね。同じやられるにしても、やられ方はあるからね。
植田のことは彼が高校時代から期待しているから歯がゆいんだよ。フィジカルの強さはスゴいだけに、CBとしての警戒心を備えてくれたらと思っちゃうんだ。W杯最終予選のなかで植田の力がふたたび必要になることもあるはずだから、その時は成長した姿を見せてもらいたいと思うよ。
日本代表はオマーン戦の敗戦で重たい空気がのしかかったけど、続く中国戦で相手が引いて守ってくれたことで助かった。中国代表が後半に見せた戦い方を試合当初からやっていたら、違う結果になっていたかもしれないと思わせただけにね。日本代表を初戦の敗戦から立て直してくれたのは、中国代表だったと言えるんじゃないかな。
日本代表は9月シリーズで2連勝するのが理想だったけれど1勝1敗。最低限のノルマだった勝ち点3は手にできたけど、10月シリーズはサウジアラビア、オーストラリアと対戦する。いきなり山場がやってくるんだよ。
攻守で課題を抱えている日本代表だけど、特に気がかりなのが攻撃のところだよね。ゴールを奪うためにどう崩していくかが、現状では見えてこない。中国戦は伊東純也から大迫勇也へのラインでゴールは生まれたけれど、それ以外のところをどう増やすか。
中国戦で故障した古橋亨梧の招集も難しいだろうから、そこに代わる選手を含めた招集メンバーの時点から、森保(一)監督がどういう決断をするのかが興味深いね。手堅い選択の多い森保監督だけれど、次は勝負どころだからね。手堅さのなかに、大胆さも見せてくれると期待しているよ。
振り返れば、前回W杯のアジア最終予選も黒星スタートだったんだよね。2戦目以降は勝ち点を積み上げて、出場権獲得を決めたあとの最終戦で2敗目を喫したけれど、6勝2分2敗の勝ち点20で1位通過。今回も10月シリーズで強敵2チームを叩いて、出場権獲得に向かって勢いに乗ってくれるはず。そのためには、みなさんの応援のパワーは欠かせないので、しっかり応援してくださいね!