レッドソックス1年目の澤村は、リリーフとして50試合に登板するなどチームに欠かせない存在に。コロナ感染は心配だが、しっかり再調整して戻ってきてほしい レッドソックス1年目の澤村は、リリーフとして50試合に登板するなどチームに欠かせない存在に。コロナ感染は心配だが、しっかり再調整して戻ってきてほしい

MLBの2021年シーズンも残りわずかとなったが、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の話題は尽きることがない。

大谷は今季、「投・打・走」で大活躍を見せている。現地時間(以下同)9月6日の時点で、打者としては43本塁打、23盗塁で「40本塁打&20盗塁」というア・リーグ10年ぶりの快挙を達成。投手としては、9勝1敗、防御率2.97と自身初のメジャー2桁勝利が目前。ベーブ・ルースが1918年に残した、同一シーズン「2桁勝利&2桁本塁打」という記録に並びそうな勢いで、現地メディアは「ア・リーグMVPの最有力候補」とも報じている。

その活躍の陰で、ボストン・レッドソックスの澤村拓一も健闘していた。澤村は8月31日に新型コロナウイルスの陽性反応を示し、ケガ人リストに入ったものの(現在は復帰)、それまでは中継ぎとして50試合に登板して防御率3.09という好成績を残している。

チームがこれだけ大きな信頼を寄せるのは、6月4日の敵地でのニューヨーク・ヤンキース戦で披露した好投によるところが大きい。澤村はヤンキース打線を相手に、2イニング無安打無失点と強烈なインパクトを残し、その後もコンスタントに好投して評価を上げていった。

ただ、安定して活躍しているのはこのふたりのみ。ほかの6人の日本人選手には厳しいシーズンになっている。

今季で3年契約を終えるシアトル・マリナーズの菊池雄星は、一時は防御率3.19と好調だったが、現在の防御率は4.32まで悪化している(7勝8敗)。今季にいいパフォーマンスを見せ、球団が契約時のオプションを行使したら、今オフに最大4年総額6600万ドル(約72億4700万円)の契約を手に入れるチャンスがあった。

だが、ここまで契約延長の噂はまったく聞こえてこない。今の成績で、複数年契約のオファーをもらうのは難しそうだが、シーズン終了までに巻き返すことができるか。

今季にレイズ、ドジャースの2球団から放出された筒香だが、パイレーツ移籍後にホームランを量産。課題とされていた速球も力強く打ち返しており、今後も活躍が期待される 今季にレイズ、ドジャースの2球団から放出された筒香だが、パイレーツ移籍後にホームランを量産。課題とされていた速球も力強く打ち返しており、今後も活躍が期待される

いい意味で来季の契約がわからなくなったのは、ピッツバーグ・パイレーツの筒香嘉智。今季序盤は打撃低迷に苦しみ、タンパベイ・レイズとロサンゼルス・ドジャースから立て続けに放出されたものの、それを覆す目覚ましい活躍が大きな話題になっている。

ドジャース傘下のマイナーで打撃復調の兆しを見せていたが、パイレーツ移籍後の19試合では7本塁打という驚くべき長打力を発揮。移籍直後は「活躍に懐疑的だった」と述べていた地元紙のパーサック記者も「最高の強打者だ」と評価を一変させ、来季以降の残留を望む声も出ている。700万ドル(約7億6800万円)という高額年俸がネックだが、パイレーツを含めてどこかの球団が手を挙げることを期待したい。

一方で、現地のメディアやファンの期待を大きく下回ったサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有と、ミネソタ・ツインズの前田健太は先行きが厳しい。

今季からパドレスでプレーし、開幕投手も務めたダルビッシュは、中盤から成績を落として防御率4.05の7勝9敗。ケガの影響もあるが、変化球のキレは鳴りを潜め、昨季8勝3敗でナ・リーグのサイ・ヤング賞の投票で2位になった投手とは思えないほど苦しんでいる。

優勝を目指し、昨オフに大型補強を敢行したチームにとっても予想外だろう。もしパドレスがプレーオフを逃せば、来季以降にチームに残れるかも不透明。これまでの実績を考えれば獲得する球団はあるだろうが、今季のように「先発ローテーションの1番手」という信頼を得るのは厳しいかもしれない。

前田も大乱調のシーズンになっており、今季は21試合の登板で6勝5敗。防御率4.66は自己ワーストだ。序盤から不調の前田に、地元紙のミラー記者も「今季の前田は10点中4点。キャリア最悪で予想外です」と驚きを隠せないでいた。

9月1日に右肘内側側副靱帯を再建するトミー・ジョン手術を受けた前田に対し、同記者は「マウンドでのオーラは印象的で、打者を圧倒していただけに何かがおかしかった」と違和感を覚えていた。その原因が故障だったということで「逆に安心した」とも述べ、早期復帰と本来の投球力が戻ることに期待を込めた。

ケガでその評価が難しくなっているのは、メジャー1年目の有原航平(テキサス・レンジャーズ)もそう。5月に右肩動脈瘤の手術を受け、9月1日にようやく復帰。予定していた「3回、または50球前後」を投げて1失点という内容に、ウッドワード監督は「あれこそ期待した投球だった」と高く評価した。今後は、来期以降につなげる投球を重ねていきたいところだ。

シンシナティ・レッズの秋山翔吾の2年目は浮上の兆しが見えてこない。開幕前、現地メディアは「最低でも打率.256は打てる」と期待していたが、現時点での打率は.199と大不調。

地元紙のナイチンゲール記者は「バックアップとして重要な役目を果たしている」と外野守備を高く評価するも、打撃については「レッズとしてはもう少しパワーが欲しかっただろう」とコメント。続けて同記者は、ケガで開幕から出遅れたことも踏まえ、「残念ながら今季、実力を示す機会があまりない」と同情を寄せるが、今後にチャンスはあるのか。

ここまでのように、今季の日本人選手の成績は明暗がはっきりと分かれている。現時点では評価が低い選手も多いが、筒香のように、簡単に評価を覆せるのがMLB。今後の奮闘で評価を一変させてほしいところだ。