チャンピオンズリーグについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第218回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、チャンピオンズリーグについて。2021-22シーズンのUEFAチャンピオンズリーグがいよいよ開幕。グループステージの組み合わせの印象を中心に宮澤ミシェルが語る。

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欧州各国のリーグ戦が開幕してから1ヶ月ほど経つけれど、やっぱりチャンピオンズリーグ(CL)が始まると、欧州のサッカーシーンが本格的に動き出した感じがするね。

第1節に行われたグループAからHまでの全16試合のうち、6試合でレッドカードが飛び出した。一概には言えないんだけど、これは今季のレフェリングの基準を示したと捉えることもできるし、見方を変えれば選手たちの意気込みの表れでもあると思うよ。

そのレッドカードの提示によって、さっそく波乱が起きたよね。グループFでマンチェスター・ユナイテッド(プレミア)が、スイスのヤングボーイズに1対2で敗戦。ユナイテッドはC・ロナウドのゴールで先制したけど、退場者が出たことで苦しい展開になったね。

ヤングボーイズといえば、以前(2013-2016)まで元日本代表の久保裕也が所属していたよな。昨年1月にメジャーリーグサッカーのシンシナティに移籍して、今季はボランチでプレーしているって聞いたな。実際にプレーを見てないから、どのレベルにあるのかわからないけど、まだ27歳だから、もうひと花もふた花も咲かせてほしいところだね。

このグループにはアタランタ(イタリア)、ビジャレアル(スペイン)もいて、両者が対戦した初戦は引き分け。そのビジャレアルの次戦はユナイテッド。ユナイテッドにしたら2連敗すると勝ち抜けが厳しくなるけど、簡単な相手じゃないから注目だよな。

グループAではパリ・サンジェルマン(フランス)が、メッシ、ネイマール、エムバペの"MNM"をスタメンで揃い踏みさせたね。だけど、噛み合わなくて、クラブ・ブルッヘ(ベルギー)に1-1の引き分け。グループAのもう1試合はマンチェスター・シティ(プレミア)が、ライプツィヒ(ドイツ)との打ち合いを制して6-3で勝利した。勝ちはしたものの、マンCの守備は心配だね。

一方のライプツィヒはもっと苦戦するかなと思っていたんだ。今季を迎える前にナーゲルスマン監督と22歳のフランス代表CBダヨ・ウパメカノ、27歳のオーストリア代表MFマルセル・ザビツァーという、チームの骨格がバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)に引き抜かれた。

だけど、昨季までオーストリアのザルツブルクを指揮したジェシー・マーシュ新監督のもとでダイナミックな攻撃を繰り広げていたね。ザルツブルク時代に南野拓実(現リヴァプール)やアーリング・ハートランド(現ドルトムント)をビッグクラブに送り出した手腕は侮れないよ。

グループAは、順当に行けばマンCとPSGが勝ち抜けだろうけど、クラブ・ブルッヘもライプツィヒも虎視眈々とチャンスを狙っている。グループAに限らないことだけど、チームの核に故障者が出たり、油断が生まれたりしたら、波乱が起きてビッグクラブが足元をすくわれる可能性はある。それがCLの怖さだよな。

その点でグループBは今季のCLでもっとも熾烈な組合せになった。リヴァプール、アトレティコ・マドリード、ポルト、ミラン。最近の実績ではリヴァプールとアトレティコが抜けているけど、ポルトもミランも力はあるからね。どこのクラブが決勝トーナメントに進んでも不思議はないよな。

今年のCLで注目しているのがスペイン勢。レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリードの3クラブがCLでの権勢を誇ってきた。だけど、そこからC・ロナウドが抜け、今季からはメッシも抜けて、ここ数シーズンはプレミア勢の後塵を拝してきた。このままプレミア勢の時代が本格化するのか。それともふたたびスペインの時代になるのか。今季の行方から見えてくると思うんだよ。

第1節の結果はアトレティコがポルトと引き分け。グループDのレアル・マドリードはインテル(イタリア)に勝利。ビジャレアルは引き分けで、グループGのセビージャはザルツブルクに引き分けた。

心配なのがグループEのバルセロナだよな。初戦でバイエルンに0-3の完敗。この敗戦が薬になって攻守に改善されていけばいいけれど、サッカーはそう簡単なものではないからね。

この組はほかにベンフィカ(ポルトガル)とディナモ・キエフ(ウクライナ)がいるんだけど、いまのバルセロナの力でグループ2位以内に入って決勝トーナメントに進めるのかと言えば、危ういところにいると思うよ。次のベンフィカ戦、その次のディナモ・キエフ戦が大きなカギを持ってくるんじゃないか。

それにしてもグループEは、CLグループステージの醍醐味の見本のような組分けだよね。ビッグクラブ同士の対戦が見られて、ここでしか見られない国のリーグのチームも見られるんだから。

全6節で行われるグループリーグの第2節は、9月29・30日。最終節は12月8・9日で、決勝トーナメントは来年2月と捉えると、先の長い戦いだなと感じちゃう。だけど、悠長に構えていると、あっという間に消化されていっちゃうんだよな(笑)。みなさんもしっかりグループステージから追いかけて、CLをどっぷり堪能してくださいね。

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