サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第223回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、前回に引き続き、W杯アジア最終予選について。W杯アジア最終予選で苦戦を強いられている日本代表だが、宮澤ミシェルは、森保一監督のFWの選手の起用法に疑問があるという。
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森保一監督はもっといろんな選手を使えばいいのにな。なんで使わないんだろう。
W杯アジア最終予選の11月シリーズは、アウェーでの2連戦。11日にベトナム、16日にオマーンと対戦する。日本代表は2試合とも絶対に勝利しなくちゃダメ。
勝つためにはゴールを奪わなければいけないんだけど、「得点の匂いがするFWは誰がいる?」ってのが、いまの日本代表の状況だよな。
フォーメーションはオーストラリア戦で使った4-3-3から変えなくていい。中盤3枚の遠藤航(シュツットガルト)、田中碧(デュッセルドルフ)、守田英正(サンタ・クララ)は、攻守で抜群の距離感をつくれるからね。
じゃあ、3トップはどうするか。
右の伊東純也(ヘンク)は不動だよな。久保建英(マジョルカ)も堂安律(PSV)も怪我で11月シリーズも欠場が濃厚なようだけど、伊東がいれば安心できる。いまの日本代表の攻撃陣で唯一のレギュラーといっていいほどの存在感を示しているからね。
左は南野拓実(リヴァプール)になるんだろうけど、クラブで出場機会がないのが気がかりではある。ただ、南野はそういう状況でずっとやってきているから問題ないんじゃないかな。
南野を先発で使って、途中から三苫薫(ユニオンSG)を投入して、あのドリブルで引っ掻き回すってのも、得点を奪うには効果的だろうな。
問題は1トップを誰にするか、ここだよな。これまでスタメンで使ってきた大迫勇也(神戸)が、怪我で間に合わない可能性があるんだよね。
普通に考えれば古橋亨梧(セルティック)になるよ。DFラインの裏を取るスピードとタイミングはピカイチだよな。
懸念材料を探すとすれば、裏に抜け出す古橋にパスを出せる選手がいるかってことだね。遠藤、田中、守田の中盤の3人の場合、そこのところがどうか不透明ではあるよね。
そのために中盤の一角に鎌田大地(フランクフルト)を使う手もある。所属クラブでようやく本来の姿を取り戻しつつあるからね。でも、それがコンスタントに出せる状態にはまだ見えないから、11月シリーズで期待通りのプレーができない危うさはあるよな。
FWにオナイウ阿道(トゥールーズ)を入れて、古橋と2トップにするというのもありだと思うな。フィジカルの強いオナイウ、スピードのある古橋がゴール前で待ち構えていたら、相手DFとしたら嫌だと思うよ。
ただ、森保監督は「招集したけど使いませんでした」がよくあるからね。オナイウは次も招集されても、また使われないかもしれないね。
DFにしてみたら、一芸に秀でたタイプのFWは抑えにくいんだよ。圧倒的な高さとか、パワーがとんでもなくあるとか、めちゃめちゃ足が速いとかね。
スピードでいったら永井謙佑(FC東京)はおもしろいんじゃないか。前田大然(横浜FM)と浅野拓磨(ボーフム)と3人で前線からガンガンにプレッシャーをかけていく。3選手ともスタメンという感じではないけどね。攻撃のオプションとして、そういう起用法があっていいんじゃないかな。
前線での潰れ役がほしいなら、東京五輪でもそれで評価を上げた林大地(シント=トロイデン)もいる。高さなら同じチームの原大智は191cm。アジアレベルなら十分に圧倒できる高さだよな。
それこそ鈴木優磨(シント=トロイデン)を呼ぶ手だってある。昨シーズンはベルギーリーグで17得点を決めたのに、森保監督から一度も招集されていないんだよ。
チームのコンセプトに鈴木のプレースタイルが合わないと判断したのかどうかは知らないけれど、いまはコンセプトとか言ってる状況じゃないからね。ゴールを決めそうな気配がする選手から使うべきだと思うよ。
ベトナムとオマーンが、現状の日本代表を相手にして、どういう戦い方をしてくるかは予想できない。だけど、日本代表は相手がどんな戦い方をしてもゴールを奪えるように準備してもらいたいね。
あらゆるタイプのFWを招集して、どんな状況になっても得点を奪うための最善の手立てができる準備をしておく。これが大事なんじゃないか。ゴールが必要なのにベンチにはFWの控えがいませんっていう状況だけは見たくないからね。