どのチームも今後のホームの試合での勝ち点3はマストだと語るセルジオ越後氏

ドラマチックな演出はプロスポーツに欠かせない。最後の最後まで必死に頑張る選手たちの姿は、見る人の胸を打つ。当事者である選手やスタッフ、さらにはサポーターには申し訳ないけど、Jリーグの残留争いはいつも面白いね。

今季のJ1は例年の倍となる下位4チームがJ2に自動降格。残り5節の現在、15位清水から最下位の横浜FCまで、勝ち点7差の中に6チームがひしめき合っている。

新型コロナウイルスの影響による特別ルールで降格のなかった昨季の反動もあり、今季開幕前、各チームは例年以上に補強に力を入れた。

でも結局、残留争いを演じているのは"常連"のチームばかりだ。

開幕当初、コロナのクラスター発生による活動一時休止を余儀なくされたG大阪は、その後の過密日程を考えるとかなり心配で、実際、J2降格圏内まで順位を下げ、監督も交代したけど、なんとか安全圏まで戻ってきた(13位)。

上位争いをしている神戸や名古屋を見てもわかるように、コロナ禍で入場料収入があまり見込めない状況にあって、資金が潤沢で、なおかつチーム強化に理解のあるスポンサーがどれだけいるか、それがそのまま今の順位表に表れている印象だ。

ちなみに、僕はアイスホッケー・日光アイスバックスのシニアディレクターを務めているんだけど、やはり今年は例年以上にスポンサー営業が大変だった。契約を継続してくれても、減額のケースもある。コロナの影響で世の中はどこも本当に厳しいんだ。Jリーグ各クラブの大変さも想像がつく。

個々のチームを見ると、15位の清水(勝ち点32)は、今季、Jリーグで実績のあるロティーナ新監督を迎え、日本代表GK権田を獲得するなど積極的な補強をしたんだけど、なかなかチームの形が定まらない。

清水といえば、かつては日本一のサッカーどころ。でも今はサポーターも負けにすっかり慣れてしまったようで、昔の熱を知る自分としてはちょっと寂しいね。

16位の湘南(同31)は、良くも悪くも残留争い慣れしている印象。ただ、試合ごとに不安定だけど、引き分けが多く、得失点差(-6)が少ないのは好材料だ。17位の徳島(同30)、18位の大分(同28)は、開幕前にそれぞれ監督、主力を引き抜かれたのが痛かった。

19位の仙台(同26)はここ数年来の資金難や不祥事が尾を引いている。昔の良かったときのイメージで呼び戻した手倉森監督でも再建に苦労している。20位の横浜FC(同25)は、夏に外国人選手を補強したものの、遅きに失した感が否めない。

残留予想は難しい。ただ、どのチームも今後のホームの試合での勝ち点3はマストだね。

こういう状況で大事なのは選手たちの精神面。もちろん、戦術がどうでもいいという話ではない。相手のスカウティングはいつでも重要だ。でも、今頃になっていきなりサッカーを変えるのは得策じゃない。できることは限られている。

それよりも優先すべきは、選手たちの力をどう発揮させるかだと思う。ありがちなのは、勝ちたい気持ちが強いのに、負けたくない気持ちがそれを上回って、結局、消極的なサッカーをしてしまうこと。そうではなく、多くの注目を浴びる大舞台でプレーできることを喜びに変えられるか。それができたチームが生き残るんじゃないかな。

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