10月26日にリーグ優勝を決め、選手たちに胴上げされるヤクルトの高津監督。就任2年目にして、最下位からチームを立て直した手腕が高く評価されている

10月26日、ヤクルトが6年ぶり8度目のリーグ優勝を達成。就任2年目の高津臣吾監督は、2年連続で最下位に沈んでいたチームを見事に立て直した。

今季の躍進の理由はどこにあったのか。かつて大洋(現・DeNA)などで活躍し、現在は野球解説者や野球系YouTubeの第一人者でもある高木豊氏に分析してもらった。

「まず野手陣は、新外国人のホセ・オスナ、ドミンゴ・サンタナが機能したのも大きいですが、当初2番で使っていた中村悠平がいい働きをしました。離脱していた野手がそろってきたら中村を6番に置き、オスナ、中村、サンタナという打順にし、下位打線の柔軟性が増しましたね。

中村が間に入ることで、バントやエンドランなどいろいろと仕掛けられるんです。作戦の幅が広がったから、相手は困ったでしょう。打線における戦術では、これが最大のヒットだと思います」

4番の村上宗隆を中心に、ベテランの青木宣親(のりちか)や山田哲人ら新旧の侍ジャパンが並ぶほか、1番の塩見泰隆(やすたか)の飛躍もあり、打線はより強力になった。

「1番の塩見が育ち、2番の青木はなんでもできる。続く山田、村上は任せっきりでも大丈夫。オスナも任せっきりですが、中村を"かます"ことで小技も絡めて攻撃できる。そして、サンタナにチャンスで打席が回ってきてランナーをかえす。シーズン終盤はサンタナが5番、オスナが7番を打っていたように、調子の良しあしで打順を変えたのもよかったですね」

野手陣の活躍も目立ったが、それよりも投手陣の奮闘を高木氏は高評価する。数字上でも、最下位だった2年間はチーム防御率が4.78、4.61だったが、今シーズンは3.48と大幅に改善された。

「先発投手の奥川恭伸(やすのぶ)や高橋奎二(けいじ)ら若手が伸びましたし、清水昇や今野龍太、スコット・マクガフら中継ぎ陣が確立できたことが大きいです。

先発陣のマネジメントはまったくブレなかったですね。例えば、夏場以降はカード頭で先発させていた奥川のローテーション。あれだけいい投手になってくれば登板間隔を中6日にしてもよかったと思うのですが、最後まで中10日をしっかりと空けました。

中継ぎ陣に関しては、疲れが見え始めた頃に、先発で起用していた田口麗斗(かずと)やアルバート・スアレスを配置転換して駒を増やした。クローザーも、石山泰稚(たいち)の状態がよくないとみるや、途中でマクガフを後ろに持っていきました。臨機応変さが投手陣を支えましたね。投手出身の監督だけに"先見の明"があったと思います」

長いレギュラーシーズンでは、チームをまとめ、牽引(けんいん)するベテランの存在も不可欠。野手陣では青木、投手陣では石川雅規(まさのり)らがその役割を担ったが、そんな経験豊富な選手たちへの高津監督の関わり方について高木氏はこう言う。

「投手陣には無理をさせないなかで力を出させましたが、41歳にして第一線で投げ続ける石川の存在は大きかったと思います。野手陣は青木が引っ張りましたが、高津監督がふたりに気持ちよく仕事をさせていました。それも指揮官としての大事な手腕のひとつだと思います」

高津監督は優勝争いが熾烈(しれつ)を極める9月7日、試合前のミーティングで「チーム一丸となれば絶対大丈夫!」と鼓舞。その様子はヤクルトの公式YouTubeチャンネルで公開され、ファンも一緒に盛り上がる機運をつくった。

「そういった言葉を選手たちにかけるタイミングもよかったんでしょう。優勝を成し遂げることに対して、誰も疑いを持たなかったでしょうね」

さらに高木氏は、今季の印象的な場面として、「7月6日阪神戦で相手の"サイン盗み行為"をアピールした村上が、矢野燿大(あきひろ)監督らに対して一歩も引かなかったこと」と、中日戦(9月13日)で高津監督が行なった審判に対する猛抗議を挙げた。

「あの中日戦は、ヤクルト攻撃時のミスジャッジが響いて負けてしまった。高津監督は(約14分間の)猛抗議をしたものの覆らず、その試合を落としたヤクルトは3位に落ちました。

当時、私は『これでチームに結束が生まれるか、モチベーションが下がっていくのかどちらかだな』と思ったのですが、いい方向に転んで調子を上げていきましたね。あの抗議する姿が選手たちの心を打ち、『こんなことで屈してはいけない』という雰囲気になったんだと思います」

ヤクルトは11月10日から、先に4勝したチームが日本シリーズに進出するクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージを戦う。対戦相手は巨人に決まったが、高木氏は「ヤクルトが有利」とみている。

「1戦目は奥川、2戦目は高橋でいくと予想しています。(リーグ優勝したことで)1勝のアドバンテージがありますし、今季は巨人には絶対的なエースがいません。しかも巨人はファーストステージで力がある投手を使っている。そこからファイナルステージとなると、先発投手のやりくりが非常に厳しいと思います。

ヤクルトのキーマンは、投手では奥川。奥川で初戦を取れれば日本シリーズ進出に大きく近づきます。打線では、村上がシーズンどおりに打てれば負けないでしょう。チームの雰囲気も、3チームの中でヤクルトが一番いいと感じています。シーズンを通じて保ってきたものが、CSでも好結果をもたらすはずです」