ポスティングシステムでのメジャー挑戦が報じられている広島の鈴木。打撃だけでなく守備や走力などについても評価が高く、複数球団が興味を持っているようだ

2021年のMLBは、ブレーブスの26年ぶりとなる世界一で幕を下ろし、本格的にストーブリーグが始まった。今オフ、メジャーでFA権を取得する160選手の中には、ワールドシリーズに進出したアストロズの主力野手であるカルロス・コレアなど大物もいるため、市場は大きな注目を集めている。

日本人選手では、筒香嘉智(つつごう・よしとも)と菊池雄星がそう。今季の後半から打撃が劇的に向上した筒香は、前所属のパイレーツと再契約を行なうのか。また、マリナーズとの契約オプションの破棄(球団側・選手側双方)が報じられた菊池の動向も気になるところだ。

さらに現地では、日本からメジャーを目指す選手についての報道も増えている。目下の話題は、広島の鈴木誠也だ。今オフにポスティングシステムでメジャーに挑戦すると報じられている鈴木について、どの球団が獲得するのか、契約年数や年俸はどうなるのかといった予想が盛んに行なわれている。

それらのニュースによれば、鈴木は「総額50億円以上の複数年契約になる」といわれている。ロイヤルズやマリナーズ、メッツやレンジャーズといった複数の球団が興味を示しているとされ、特にロイヤルズとマリナーズの専門メディアの関心が高いようだ。

ロイヤルズの専門メディア『ロイヤルズ・レビュー』は、「高校では投手だった鈴木の肩は右翼手に最適だ」と紹介。今季不振だったハンター・ドージャーの来季の扱いが不透明なことから、同球団でならレギュラーになれる可能性が示唆されていた。

また、マリナーズの専門メディア『ルックアウト・ランディング』は、鈴木の打力に注目し、「契約すれば外野陣は(攻守共に)劇的に向上するだろう」と、同球団の鈴木獲得を推す記事を掲載した。

鈴木の加入を望む声はほかにもある。カブス専門メディア『カブス・インサイダー』には、「5ツール(ミート力、長打力、走力、守備力、送球力)プレーヤーの獲得はリスクが少なく、鈴木はカブスにぴったりだ」と書かれ、スポーツメディア『バースツール・スポーツ』には、「鈴木はヤンキースのニーズに合っている」ともつづられていた。

現地メディアが鈴木に高い関心を寄せているのは、今夏の東京五輪も影響している。打率は.167だったが評価は落ちておらず、今年8月に『ロサンゼルス・タイムズ』は「鈴木はMLBに対応している」という記事を掲載し、MLBスカウトから「日本で最高の選手」で「5ツールを持っている」と評価されていることを紹介した。

また、米野球専門誌『ベースボール・アメリカ』の「東京五輪のトップ10プロスペクト(有望株)選手」にも選ばれている。すでに高い評価を受けている鈴木のメジャー挑戦が正式に決まれば、激しい争奪戦になることは必至だ。

鈴木以外では、楽天の田中将大の「メジャー復帰説」も話題になっている。今季は8年ぶりに日本球界でプレーしたが、今年1月の楽天入団会見時に、「アメリカでやり残したことがある」と語ったこと、楽天とは2年契約だが契約を途中で破棄できる権利を持っていることから、ニュースサイト『MLBトレード・ルーマーズ』は、「メジャー復帰は間違いなく可能性がある」と報じている。

さらに同メディアは、今オフのヤンキースの戦力補強に関する記事の中で、「田中と再契約することも考慮から外せない」とも指摘した。

今季は勝敗こそ4勝9敗だったが、変化球のキレや威力、制球力は健在で、防御率は3.01。田中を分析した米有名投手アナリストは「今でもメジャーで十分に通用する」と絶賛している。

一方、昨オフにポスティングでメジャー移籍を目指したものの、交渉が合意に至らず巨人に残留した菅野智之はあまり話題になっていない。

今季に海外FA権を取得したことから、再びメジャー移籍の可能性が出てきたものの、現時点で菅野を取り上げているのは、ホワイトソックスの専門メディア『ソックス・マシン』だけだ。

菅野が海外FAを正式に宣言すれば取り上げるメディアも増えるかもしれないが、今のところ、注目度は以前よりも落ちているように感じる。

ここまで今オフのメジャー移籍が噂される選手を取り上げたが、注目を集めている日本人選手はほかにもいる。ソフトバンクの千賀滉大(せんが・こうだい)と、オリックスの山本由伸だ。

千賀は以前からアメリカでも注目されていたが、東京五輪のアメリカ戦で見せた伝家の宝刀"お化けフォーク"で注目度はさらに増した。千賀の海外FA権取得は来年のため、今オフにポスティングで、ということがなければメジャー移籍はもう少し先の話。

しかし現地では、「ドジャースやヤンキースといった"ビッグネーム"が争奪戦に参入する」という予想がすでに立てられている。

そして、今季のパ・リーグで投手5冠(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率、最多完封)を達成した山本は、前述の『ベースボール・アメリカ』で、「制球力が高く、メジャーでも先発2番手を担うことができる」と評価されている。

パドレスのダルビッシュ有も、自身のSNS上でファンから受けた「山本由伸投手はまだメジャーでは厳しいと思いますか?」という問いに、「余裕で通用すると思います」と、その能力を評価している。

ふたりの海外移籍はまだ先になるかもしれないが、ゆくゆくは大きな注目を集めるだろう。