来季はぜひ川崎を脅かすチームの出現に期待したいと語るセルジオ越後氏

川崎がJ1連覇を達成した。昨季と異なり、今季は決して"横綱相撲"ではなかった。主力の移籍や故障などで苦しい時期もあった。それでも4試合を残して早々と優勝決定。34節終了時点でわずか1敗、リーグ最多得点(71点)、リーグ最少失点(22点)と数字的には文句なし。素晴らしいね。

開幕当初、各チームが新外国人の合流遅れなどコロナ余波に苦しむなか、川崎は昨季までに築いたベースがモノをいい、スタートダッシュに成功。

ところが、三笘(みとま)、田中 碧が移籍し、さらに主力の故障や過密日程の影響もあり、夏場以降は相手を圧倒して勝つ試合は減った。2位の横浜Fマに勝ち点差を縮められ、逆転されてもおかしくないと思わせる時期もあった。

それでも勝ち切れたのは、GKチョン・ソンリョン、DF谷口、ジェジエウ、MF家長(いえなが)、FWレアンドロ・ダミアンといった軸となるべき選手がしっかり活躍したこと。

特にチョン・ソンリョンとダミアンの存在は大きかった。勝っているチームだからGKはどうしても目立たないんだけど、チョン・ソンリョンは安定感があり、素晴らしいセーブを連発していた。また、前線におけるダミアンの存在感は唯一無二。MVPを選ぶなら、彼らふたりのどちらかだね。

また、鬼木監督の柔軟な采配も光った。主力の移籍や故障で台所事情が苦しくなっても、5人交代枠をうまく活用し、レギュラー未満、主力未満の若手の力をうまく引き出した。ガミガミとよけいなことを言うタイプではなさそうだし、選手たちものびのびとプレーできているんじゃないかな。

今、プロ野球で注目を集めている新庄監督(日ハム)とは真逆の地味なキャラクターで、注目される機会も少ないけど、これだけ結果を出し続けているのだから、もっと評価されるべきだ。

川崎の3連覇の可能性については、現時点でなんともいえない。ただ、若手の成長を期待するにしても、補強は必須だ。

昨オフの守田、今季途中の三笘、田中 碧と主力が次々といなくなり、今季終了後にも旗手の海外移籍の可能性が噂されている。家長や小林悠など主力の高齢化もある。補強に大金を投じるようなチームカラーではないのは承知しているけど、勝ち続けるためにはある程度の投資も必要だと思う。Jリーグ王者として、来季こそはアジアチャンピオンズリーグで結果を出してほしい気持ちもあるしね。

個人的には、例えば横浜FマのMF扇原(おうぎはら)の獲得に動いたらどうかと思う。あまり注目されていないけど、今季の彼のパフォーマンスは本当に素晴らしかった。ボランチながら豊富な運動量と正確なパスで攻撃でも存在感を発揮し、チームを牽引(けんいん)した。日本代表に呼ばれないのが不思議なくらいだ。

田中 碧の抜けた穴を埋めるのはもちろん、優勝を争うライバルチームの戦力をダウンさせる意味でも面白い。実現するかどうかはともかく、そういう仕掛けがあれば、ファンも盛り上がるし、リーグ全体の注目度もアップするはずだ。

話はそれたけど、J1は来季も川崎中心にまわると思う。ただ、他チームもこのまま川崎にやられっぱなしでは情けない。J1残留争いもスリルがあって面白いけど、やっぱり優勝争いこそ一番盛り上がってほしい。来季はぜひ川崎を脅かすチームの出現に期待したいね。

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