今後は過去の実績や経験は関係なく、コンディションのよい選手、結果を出している選手を先発で見てみたいと語るセルジオ越後氏 今後は過去の実績や経験は関係なく、コンディションのよい選手、結果を出している選手を先発で見てみたいと語るセルジオ越後氏

なんとか落ち着いた気持ちで年を越せそうだ。

カタールW杯アジア最終予選、日本はベトナム、オマーンとのアウェー2連戦を連勝で乗り切った。手堅い試合運びに徹して共に1-0で勝利。ライバルであるオーストラリアの取りこぼしもあり、自力で本大会出場の決まるグループ2位に浮上した。W杯予選では結果が最優先。雑音の多い状況のなか、しっかり勝ち点6を稼いだことは評価すべきだ。

ただし、内容的には今回もたくさん課題があった。最初に対戦したベトナムは、誰が見てもグループで一番弱い。それなのに日本はミスが多く、チャンスもあまりつくれなかった。得失点差を考えれば、最後の最後まで貪欲に追加点を狙ってほしかったけど、逆に逃げ切りのための時間稼ぎをしていた。あれは見ていて歯がゆかったよ。

続くオマーン戦の前半はメリハリのない横パスやバックパスばかり。いくらアウェーで慎重にならざるをえないとはいえ、得点の気配をまるで感じなかった。このまま最後までいくのかなと心配していたら、後半から出場した三笘(みとま)が流れを変えてくれた。左サイドから何度も仕掛けて相手を慌てさせ、後半36分には伊東の決勝ゴールをアシストした。

2試合続けて得点を決めた伊東は、所属クラブ(ヘンク)での好調さをそのまま代表でも見せてくれた。やっぱり、あのスピードは魅力だね。

そして、オマーン戦で活躍した三笘。彼はよく「守備に課題がある」と言われるけど、今後もベルギー(サンジロワーズ)で好調を維持するなら、守備面には多少目をつぶってでも、彼を先発で起用したほうが得点力不足のチームには大きなプラスだ。

相手の裏を突くスピードが武器の伊東とドリブラーの三笘。単独で局面を打開できるふたりを左右に置くだけで攻撃の幅は広がる。あとは中央でゴールを決めてくれる選手が出てくれば、という感じだね。

だからこそ、今後は過去の実績や経験は関係なく、コンディションのよい選手、結果を出している選手を先発で見てみたい。今夏に加入したセルティックでゴールを量産している古橋、Jリーグ得点ランキングトップの前田といった候補もいるわけだし。

ただ、これまでの森保監督の采配を見るかぎり、そうした柔軟性がないのが心配。今回の2連戦も、2戦目に出場停止となった守田に代わって柴崎を起用した以外、先発メンバーは同じ。

そして長友、南野、大迫と同じ選手を途中交代させている。それだけ不動のメンバーへの信頼が厚いのだろうけど、今年9月に最終予選が開幕して以降、同じような展開での苦戦が続いているのだから、そろそろなんとかしてほしいよ。今回、前田を2試合連続でベンチ外にしたのはまったく理解できなかったね。

今の日本は吉田、冨安を中心とした守備は安定している。アジアレベルなら大崩れしない信頼感がある。

逆に攻撃は決定力不足という大きな課題を抱えている。代表は結果がすべてだから手堅いチームづくりになるのはわかるけど、今は森保監督があまりにも序列にこだわりすぎているように見える。

個性のある選手、結果を出している選手はいるのに、チーム内に健全な競争がない。そこが一番の課題だ。調子のいい選手をどんどん使う。実にシンプルな話なんだけどね。

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