来季、本気で優勝を狙うのであれば補強が必要だと語るセルジオ越後氏

今年もこの季節がやって来たね。シーズン終盤を迎え、Jリーグ各チームとも選手、監督、スタッフの去就が取り沙汰され始めた。

そのなかでもまず注目を集めたのが、世代交代を進める浦和だ。主将のMF阿部(40歳)が引退、元日本代表のDF槙野(34歳)、DF宇賀神(33歳)が契約満了に伴い、今季限りで退団。いずれも10年以上にわたり浦和でプレーしてきた功労者だけに、インパクトは大きい。

引退する阿部に関しては長い間、本当にお疲れさまと言いたい。市原(現・千葉)ユースに所属していた16歳のときにJリーグデビュー。2007年に浦和に移籍し、10年、11年には海外(当時イングランド2部のレスター)でのプレーも経験した。

日本代表でも10年南アフリカW杯で主力となるなど通算53試合に出場。正確なキック、試合の流れを読む力、体の強さ、そしてリーダーシップと多くの武器を持ち、どのチームでも、どの監督の下でも信頼を寄せられ、存在感のあるプレーを見せてきた職人。こんな選手はなかなかいないよ。

近年は出場機会も減っていたけど、今季は開幕戦にスタメン出場を果たし、ゴールを決めた。個人的には、オシム監督の下でナビスコ杯(現ルヴァン杯)を連覇した千葉時代の印象が強い。試合ごとにみるみる成長して、20代前半で千葉のシンボルとしての貫禄を見せていた。ブラジル風にいえば、彼はチームの美しいエンジンだったね。

今後は指導者の道に進むそうだけど、いい選択だと思う。経験豊富で性格も温厚。インタビューでの発言も地に足が着いている。どんな選手でも一目置くカリスマがある。解説者などの寄り道をしないで、来季から指導の現場に飛び込んでほしい。もし僕が浦和か千葉のフロントの人間だったら、すぐにコーチのオファーを出すだろう。

一方、契約満了で退団する槙野と宇賀神は今季、出場機会を大きく減らしていた。浦和はサポーターも多く、選手のステイタスが高い。長年プレーしたからこその愛着もあると思う。

でも、いつも言っていることだけど、プロは試合に出てなんぼ。また、彼らの力を必要とするクラブはほかにあるはず。すぐに気持ちを切り替えるのは難しいかもしれないけど、ぜひ来季も元気なところを見せて、まだまだJリーグを盛り上げてほしいよ。

ベテラン3人が去る浦和は今季、ロドリゲス新監督の下、懸案の世代交代を一気に進めた。人気や実績のある選手を切るのは誰だってやりたくないこと。でも、それはその選手のためにもならない。コロナ禍で入場料収入が減ったという台所事情があったとしても、情に流されずに必要な判断をしたと思う。

ただ、若手が伸びてきたとはいっても、新たに日本代表に選ばれるような選手はまだいない。今季も途中加入のFWユンカーがいなければ、もっと下の順位だったと思う。来季、本気で優勝を狙うのであれば補強が必要だ。ベテラン3人分の年俸を減らしただけで終わるならガッカリだね。

強力な外国人はもちろん、例えばJ2降格の決まった横浜FCのMF松尾なんてどうだろう。左サイドからのドリブル突破はキレがあり、見ていて面白い。得点能力が高いのも魅力だ。もともと浦和の下部組織にいた選手だし、声をかけたら面白いんじゃないかな。いずれにしても、オフの浦和の動きには注目したい。

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