来季の川崎には、今度こそアジアチャンピオンズリーグでも結果を求めたいと語るセルジオ越後氏

横綱が照ノ富士ひとりしかいない、今の大相撲と似た状況だね。

今季のJリーグ最終節、せっかく1位・川崎と2位・横浜Fマの直接対決が組まれていたのに、川崎が早々と優勝を決め(第34節終了時)、消化試合となったのは残念だった。

残留争いも面白いけど、やっぱり優勝争いは最後までもつれてほしい。横浜Fマをはじめ2位以下のチームはもう少し粘りを見せてほしかったというのが率直なところ。

もっとも、裏を返せば、それだけ今季の川崎が素晴らしかったということ。シーズン途中に主力の三笘(みとま)、田中 碧が移籍し、故障者も多く、決して1年を通して盤石ではなかった。それでも早々とリーグ連覇を決めたのは、昨季までの積み上げがあったからこそ。

特に守備陣だね。川崎といえば、破壊力のある攻撃面が注目されることが多い。でも、GKチョン・ソンリョン、DF谷口、ジェジエウを中心とした守備陣は安定感抜群。両サイドの山根と旗手(はたて)、今年日本代表に初選出されたふたりも気の利いた仕事をした。リーグ最少失点も納得だ。

ただ、MVPを選ぶならエースのレアンドロ・ダミアンで決まり。高さ、強さに加えて技術もあり、得点のバリエーションが豊富。時にはおしゃれなヒールシュートも決める。文字どおりチームの攻撃の核だ。

それでいて守備もサボらない。前線で迫力のあるチェイシングをし続ける。「俺が俺が」と偉ぶることなく、チームプレーに徹する。僕が言うのもヘンだけど、ブラジル人らしくないまじめさがあるよね。

熾烈(しれつ)な得点王争いを繰り広げた横浜Fマの前田とはチームに及ぼす影響力が全然違う。どちらが良い悪いではなく、それだけ今の川崎にとって代えの利かない選手ということ。

それこそダミアンがいなかったら、今季の川崎はどうなっていたか。中東やブラジルへの移籍も噂されるなか、先日、契約延長を発表したけど、ファンもひと安心しただろう。

昨季に続いて川崎の強さが光ったシーズンだったけど、冒頭でも言ったように、他チームにはもう少し頑張ってほしかった。コロナの影響でどこも財政面が苦しかったとは思う。

でも、例えば神戸はどうだろう。今季も楽天マネーを使って大型補強をしているのに、結局、優勝争いに絡めなかった。せっかく三木谷オーナーが大金を投じてくれているのに、それを生かし切れていない。もったいないよね。

ほかにもFC東京、G大阪、C大阪といった例年なら上位争いをするチームの低迷も残念だった。横浜Fマや名古屋、鹿島、浦和などを含めて来季の巻き返しに期待したいよ。

話を川崎に戻すと、来季は3連覇を狙うのは当然として、今度こそアジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも結果を求めたい。彼らに限らず、アジアの舞台に出る以上は負けてほしくないし、負けたらもっと悔しがってほしい。それはファンも含めてJリーグ勢の課題じゃないかな。

果たして、今季のACLで優勝したチーム(サウジアラビアのアル・ヒラル)をどれだけの人が知っているだろう。韓国のチーム(浦項/ポハン)もしっかり決勝に残っているんだけどね。負けたら後は無関心、たまに勝ち上がったときだけ「Jリーグのレベルは高くなった」と言う人もいるけど、そういう風潮には違和感を覚えるよ。

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