年々、影響力を増すYouTube。最近は有名人の参入も珍しくなく、芸能からスポーツまでそのジャンルは幅広い。

そして今回注目したのが「ランニング系」だ。市民ランナーの増加、毎年1月2、3日に開催される箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の人気もあり、チャンネル数を増やしている。

今では駅伝強豪大学卒のユーチューバーも目につくが、その先駆けとして知られるのが帝京大学OBのたむじょー(本名:田村丈哉/たむら・じょうや)」である。

たむじょーは帝京大学2年時(2018年)に箱根駅伝の8区を走り、その後、実業団からの誘いもあるなか、大学卒業と同時にランニングと笑いをミックスした動画を上げるチャンネル『たむじょー【Tamujo】』を開設した。

――箱根駅伝を走った選手が、なぜユーチューバーに?

たむじょー 昔からお笑いや漫才が好きでひそかに芸人になりたいと思っていたんですけど、相方が見つからず......。それで、動画を投稿するだけで収入を得られるユーチューバーもいいかなと思って(笑)。学生時代からSNSに動画をアップしたりしていたので根拠のない自信もあったというか。結局、就職活動はせず、一度もスーツを着ることなく今に至る感じです。

――2年時に8区を走って区間11位。当時の思い出は?

たむじょー 緊張することもなく、楽しんで走れました。ただ、区間11位で快走したわけでもないし、チームも総合9位で一応シード権は獲得しましたけど、目標はもっと高かったので。走れた喜びと安堵感、残念な思いとかいろんな気持ちがありましたね。

あとは、コロナ前だから沿道に多くの人がいて、とにかく声援がスゴかったです。応援に来た人にとっては、目の前を選手が走るのは一瞬。だから全力で大声を出すんですよ。選手は約20kmの距離を1時間ほどかけて走るなか、左側からずっと叫ばれている感じで。レース後は左耳がキーンとなって、しばらく何も聞こえなかったですね。

――レース後の反響は?

たむじょー 家族や友達とかみんなが喜んでくれたので、頑張ってよかったなと。でも、帝京大学は優勝経験もないし、正直、他校に比べて目立たないので、走ってる姿がテレビに映っても、すぐに画面を切り替えられてしまう。「もう少し紹介してよ」という気持ちはありました(苦笑)。

ちなみに、僕が走ったのは2年の1回だけですけど、箱根を走るなら2年が一番と言いたいです。なぜなら、その翌週に成人式がありますから。みんなから「出てたじゃん!」「見てたよ!」なんて祝ってもらって、完全にヒーローでした(笑)。

――その箱根を走るメンバー争いは熾烈(しれつ)だと聞きます。

たむじょー だいたい12月の頭に20人くらいが選ばれて合宿があり、そこで12月10日に発表されるエントリーメンバーの16人に絞られます。その時点で、エース格の選手はだいたい何区を走るかがわかりますね。

その後、29日の区間エントリー(10人)に向けて2回くらい合宿があって、そこでの学内選考会で最終決定します。実力が8番目から12番目くらいの微妙な選手は最後までまったく気が抜けません。僕も実力的にはそのあたりで、2年時はそこでいい走りができて、監督から「8区をよく見ておけ」と声をかけられて、「これで箱根を走れる!」と。

逆に4年のときは、年間を通して調子がよかったのにそこだけミスしてしまい、区間エントリーから漏れました。選考会の前になると、寮内は食事のときもピリピリした空気感がありますし、あの緊張感は体に悪い。僕の場合、変なものを食べたわけでもないのにおなかを壊したりと、体に異変が起きました(笑)。

――選ばれた選手はどんな年越しを過ごす?

たむじょー 大晦日も寮はいつもどおりに22時に消灯です。たぶん、箱根駅伝を走る選手が一番静かに年を越しているんじゃないですかね(笑)。

コロナ禍での開催となった前回大会はコース沿道での観戦自粛が呼びかけられるなか、最終10区での大逆転劇の末、駒澤大学が13年ぶりの総合優勝。近年は各大学の戦力が拮抗(きっこう)しているが、迎える98回大会はどの大学が制するのか。

――優勝予想をお願いします。

たむじょー 本命は駒澤大学ですね。田澤 廉選手(3年)という絶対的なエースがいて、選手層も厚い。11月の全日本大学駅伝でも3区終了時点で11位と出遅れていたのに、そこから巻き返しての優勝。しかも、5月の日本選手権10000mで3位の鈴木芽吹選手(2年)をケガで欠いていたんです。その鈴木選手も箱根には間に合うみたいですから。

対抗は青山学院大学。選手のレベルの平均値は一番高いんじゃないですか。15年から4連覇して、一度優勝を逃してそのまま落ちるのかなと思ったら20年にまた勝ってと、安定した強さがある。原 晋監督がメディアにたくさん出ることに賛否もあるみたいですけど、ちゃんと結果を出していてスゴいと思います。

たむじょー氏が推す帝京大学の遠藤大地選手(右、4年)。箱根は3年連続3区で3位、2位、4位

――そのほか、個人的に注目している選手はいますか。

たむじょー 母校の帝京大学の2コ下の後輩、遠藤大地選手(4年)です。何がスゴいって、彼は1年から3年連続で3区を走り、2年時には駒澤大学の田澤選手にも勝っているんです。そのときの記録は今も3区の日本人選手の区間記録として残っていますから。3年だった前回も8人抜きの激走を見せています。

しかも、彼は今はやりの厚底シューズではなく、昔ながらの薄底のシューズで走っていますから。こうやって僕が名前を出すことで本人のプレッシャーになったら申し訳ないですけど......彼は今回の箱根で競技生活を終えると聞いていますし、最後に全力を出し切ってほしいです!

●たむじょー 
1997年生まれ。2018年、帝京大学2年時に箱根駅伝8区を走り区間11位(チームは総合9位)。卒業後の20年3月にランニング×コメディ系の動画を上げる『たむじょー【Tamujo】』開設。マラソン自己ベストは2時間26分09秒(21年)。