個人的な理由で開幕から欠場していたウィザーズの八村が復帰。出場時間が限られ得点数もまだ少ないが、まずはスタメン奪取を目指す

「ウェルカムバック、ルイ・ハチムラ!」

現地時間1月11日、八村 塁(はちむら・るい)にとって今シーズン初のホームゲームとなったオクラホマシティ・サンダー戦。場内MCのシャウトがワシントンD.C.のキャピタル・ワン・アリーナに響き渡ると、観客席のワシントン・ウィザーズファンから温かい拍手と大きな歓声が送られた。

八村が交代出場した第1クオーター途中までは空席が目立っていたが、熱心な地元ファンが"背番号8"の帰還を待ちわびていたことは、アリーナの雰囲気からも明らかだった。

その2日前、オーランドでのマジック戦でNBA3年目のスタートを切った際には「気持ちよかったですね。こんなにバスケの試合をしなかったのは今までないと思う。バスケが恋しかったので、こうやって戻れて本当にうれしいです」とコメントしたが、その喜びをあらためて噛(か)み締めただろう。

ここまで長い道のりだった。昨夏、日本代表の一員として東京五輪に出場した八村は、"個人的な理由"で9月下旬からのウィザーズのトレーニングキャンプ、オープン戦を欠場。10月中旬には「ワシントンD.C.入りした」と伝えられたが、シーズン開幕後も欠場が続いた。

ようやくコートに戻ってきたのは今季40戦目のこと。そのマジック戦後、八村はメディアからのさまざまな質問に辛抱強く答えたが、最後まで"個人的な理由"の内容については明かさなかった。それでも、ここまでの約10年間を振り返った言葉を聞けば、"足を止める時間"が必要だったことが伝わってくる。

「13歳からバスケットボールを始めて以降、ノンストップでした。日本にはバスケのシーズンといえるものはなく、一年中プレーします。(アメリカとは)違うんです。カレッジ時代も夏の間は日本代表に参加していましたし、去年もシーズン後に日本に帰って、日本代表として(東京五輪で)プレーしました。厳しかったですよ。ようやく少し落ち着いて、こうしてコートに戻れてハッピーです」

ゴンザガ大時代にNCAAトーナメントに進出、日本人初のNBAドラフト1巡目指名、旗手も務めた東京五輪への出場......慌ただしく華やかな日々を過ごしてきた八村は、同時に大きな重圧を背負ってきた。今回、短期間でもバスケットボールから離れてリフレッシュできたのであれば、この期間は今後のキャリアにとって大きなプラスになるかもしれない。

ただ、復帰した八村にスタメンの地位が約束されているわけではない。ウィザーズは開幕から予想以上の健闘を見せ、1月17日のゲームを終えた時点で23勝21敗。イースタン・カンファレンス8位で、昨季に続いてプレーオフ進出(東西のカンファレンスから上位8チームが進出)の可能性も十分にある。

2年前、ロサンゼルス・レイカーズで優勝を経験したカイル・クーズマやケンテイビアス・コールドウェル=ポープらが加わり、チームの層は確実に厚くなった。現に、復帰後の5戦はすべてベンチスタート。出場期間も15分前後に限られ、2桁得点を記録したのは1試合のみだ。

それでも、伸びしろをたっぷり残した23歳の八村が試合勘を取り戻せば、チームにもたらすものは多いはずだ。

「(離脱中に)多くのことを学びました。自分のハイライトシーンをたくさん見ましたね(笑)。ウィザーズのゲームも見て、自分が『バスケットボールが大好きだ』ということを学んだんです」

バスケへの愛情を取り戻した八村は、どんな物語を紡いでいくか。ドラマチックな復帰からの今後が楽しみだ。

ラプターズの渡邊は、昨年中こそ攻守で活躍していたものの、プロトコル入りした年明けから調子が下降気味。後半戦で巻き返せるか

一方で、NBA4年目を迎えたトロント・ラプターズの渡邊雄太も波乱のシーズンを過ごしている。

昨年10月のオープン戦で左足を負傷し、八村と同じように開幕から数試合を欠場。それでも11月24日のメンフィス・グリズリーズ戦で実戦復帰を果たすと、持ち前の運動量、守備力を武器にすぐさま活躍した。

ラプターズの戦術を完璧に理解していることに加え、課題だったオフェンスの向上もあり、チーム内のローテーションに定着した。

12月13日には、地元トロントでのサクラメント・キングス戦で12得点、10リバウンドと、NBAで初の"ダブルダブル"を達成。勢いは続き、主力選手の多くが欠場した12月26日のクリーブランド・キャバリアーズ戦ではエースのようなプレーを披露。自己最高の26得点、13リバウンドをマークした。

「もちろん体が強くなっているとか、スキルが向上したこともあります。でも、より自信を持ってプレーできているのが、自分の中では一番大きいのかなと思っています」

キャバリアーズ戦後、「自信」という言葉を盛んに口にしていた27歳の渡邊は、このまま上昇気流に乗っていくかと思われた。

ところが――。「好事魔多し」とも言うが、好調の渡邊を不運が襲った。新年早々の1月4日にラプターズは、渡邊がNBAによる新型コロナウイルス感染対策の「安全衛生プロトコル」に入ったことを発表。規定により、再び離脱を余儀なくされたのだ。

結果として、1月4日から9日までの4試合を欠場。11日のフェニックス・サンズ戦では復帰初戦でスタメン出場したものの、躍動感を欠いて無得点に終わった。さらに、その日からの3試合でフィールドゴール成功がゼロと、プロトコル入りと同時にリズムを見失った感がある。

八村のウィザーズ同様、ラプターズもプレーオフに手が届く位置にいる(1月17日時点でイースタン・カンファレンス9位)。後半戦はチーム内のプレータイム争いも激しくなるはずで、ここでのスランプは致命傷になりかねない。

これまでさまざまな困難を克服し、無名の選手からNBA本契約を勝ち取った渡邊は、パンデミック下ならではの試練も乗り越えられるのか。"アメリカンドリーム"の継続へ、後半戦に入り新たな正念場を迎えている。