日本代表の得点力不足について、福西崇史が深堀り!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第6回目のテーマは、日本代表の得点力不足。W杯アジア最終予選では、6試合で5得点と満足のいく結果が残せていない攻撃陣。彼らが得点力を上げるには、コンビネーションを高める必要があると福西崇史は語る。

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心配していたことが現実のものとなってしまいましたね。キャプテンの吉田麻也(サンプドリア)に続き、冨安健洋(アーセナル)もW杯アジア最終予選を故障によって欠場になりました。

DFの要である両選手を欠く日本代表は、代表経験の面では代替CBコンビに不安を残します。でも、だからといって後ろ重心になることなく戦って欲しいですね。メリハリのある攻撃をするほど、ゴールという結果が生まれる確率も高まるのはもちろんですが、DFラインの選手というのは守りやすくなりますからね。

その日本代表の攻撃陣は、W杯アジア最終予選で奪ったゴール数が昨年は6試合で5得点。同グループで下から二番目の得点力と満足のいくものではありませんでしたし、これが前半戦で苦戦した理由でもありました。

その要因は、攻撃が単発になりがちだった点が挙げられます。もし日本代表にロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン/ポーランド代表)やズラタン・イブラヒモビッチ(ミラン/スウェーデン代表)のようなCFがいれば、それでも問題はありません。ゴール前にボールを入れてしまえば、あとはCFが個の力でゴールを決めてくれるからです。

でも、そんなCFは日本代表にはいません。これは日本代表だけの問題ではなく、あれだけ大柄な選手が多くて技術力もあるドイツ代表でさえもCFとなると人材不足に苦しんでいる。それくらいCFというのは世界的にも育てるのが難しいポジションなので、取っ替え引っ替えしたところで大きな差が表れるものではありません。

それでは日本代表はどうやって得点を決める確率を高めればいいのか。それにはやっぱりコンビネーションが重要になるでしょうね。選手が連携・連動しながら相手守備陣形を崩していき、生まれた隙を突いていくのがもっとも理に適った攻撃だと思います。

日本代表の得点シーンでいえば、11月のオマーン戦が理想的なゴールの奪い方でした。左サイドから左SBの中山雄太(ズウォレ)のパスから左ウインガーの三笘薫(サン・ジロワーズ)が縦へと抜け出し、ゴール前で大迫勇(神戸)が相手CBを引きつけたところに、三笘からのクロスボールを右ウインガーの伊東純也(ヘンク)が押し込んだシーンです。

ひとりの力だけではなく、プレーにかかわった選手が同じイメージを描いたからこそ生まれたゴールでした。ただ、このゴールシーンは選手同士のコンビネーションというよりは、攻撃パターンから次の次くらいまでのプレーが、どうなるかを予測しやすかったことで、大迫や伊東が連動できたことで生まれたものでした。

これが選手同士のコンビネーション力で取れるようになると、得点力はもっと高まっていくわけです。なぜなら展開頼みのケースというのは、サッカーの教科書に載っていることだからです。経験値や能力の優れた相手になればなるほど、展開から次のプレーを読んでくるため、チャンスになる前に止められてしまう確率が高まるからです。

ただ、日本代表の攻撃面で相手を崩していけるコンビネーションを構築している組み合わせは限られているように思います。

南野拓実(リヴァプール)が1.5列目のようなトップ下でプレーする場合の、大迫勇也(神戸)とのライン。南野が左サイドアタッカーのポジションに入った場合は、距離感の問題もあってコンビネーションが生まれにくいように感じます。

東京五輪で見せた堂安律(PSV)と久保建英(マジョルカ)のラインもコンビネーションで相手を崩していけるでしょうね。ふたりがポジションチェンジをしながら、互いの持ち味を生かすプレーを日本代表でも見せてくれたら、攻撃のチャンスをつくり出せると思います。

元川崎Fの田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタクララ)のラインもコンビネーションでボールを動かせるのが強みです。ただ、この2選手はゴール前がメインの仕事場ではないので、本来はここに旗手怜央(セルティック)や三笘が絡んでくれば、強力で厚みのある攻撃が生まれるはずです。

あと、今回の代表戦では見ることは出来ませんが、鎌田大地(フランクフルト)と古橋亨梧(セルティック)の組み合わせにも期待しています。DFラインの一瞬の隙を突いて裏に抜け出す古橋の抜群のスピードを生かすには、鎌田のようなパサーが不可欠ですから。

ただ、ここに挙げたいずれのケースでもコンビネーションは2選手間でのものなんですね。これだと相手に研究されたり、試合中に適応されたら通じなくなることもあります。もうひとり、もうふたりが絡んでコンビネーションを構築できれば、日本代表の攻撃力は高まっていくんですけどね。

コンビネーションが限られているなかでは、個人的には柴崎岳(レガネス)をチームがもう少し上手に使えばいいのになと思います。いまの代表メンバーを見渡して、ゲームをつくる能力が一番高い選手は誰かといえば、やはり柴崎ですから。

森保監督のもとでの日本代表は堅守速攻をテーマにしていますが、アジア相手ではそれができないことも多くあります。ボールを保持しながら、ペース配分を考え、攻撃のスイッチを切り替える。ボールが柴崎を経由することで、攻撃が遅くなるという見方もありますが、メリハリのある攻撃を組み立てられる選手であることは間違いありません。吉田が欠場するなかでは彼の試合を読む柴崎の能力はさらに重要になってくるのかなと思います。

いずれにしろ、1月27日の中国戦ですよね。ここを乗り切れれば、次のサウジアラビア戦に向けてDFラインに自信がつきます。日本代表の攻撃陣が奮起してゴールラッシュで経験値の低いCB陣を助ける。そんな試合になることを期待しています。

■福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm
1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している

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