鹿島の前線はなかなか迫力があると語るセルジオ越後氏

今季も川崎の優位は揺るがない。そんな印象だ。

2月18日のシーズン開幕に備え、Jリーグ各チームがキャンプを行なっている。オフの移籍市場では例年同様に多くの選手が動いたものの、目を引くような大型補強をしたチームは見当たらず、全体的に地味。コロナのせいで、新外国人の獲得・来日が難しいことに加え、財政的な面でもマイナスの影響が出ているのだろう。歯がゆい状況だね。

そんななか、3連覇を目指す川崎は、オフに旗手(はたて)が海外移籍したものの、チャナティップ、瀬古を獲得し、移籍濃厚といわれていたシミッチも残留。あとは噂に上った宇佐美(G大阪)を獲得できれば話題性としても最高だったけど、それは仕方ない。少なくとも昨季からの戦力ダウンはなさそうだ。

もともとGKチョン・ソンリョン、DF谷口、ジェジエウ(故障離脱中)、MF家長、FWレアンドロ・ダミアンと軸がしっかりしているチーム。特にエースのダミアンの存在は大きい。彼が故障で長期離脱などしないかぎり、大崩れすることは考えにくい。

あとは中盤の大島がいいときのプレーを取り戻してくれれば、その分だけ上積みになると考えればいいんじゃないかな。

昨季2位の横浜Fマは前田、扇原(おうぎはら)、ティーラトンら移籍した選手の穴を埋める補強ができていない。

昨季3位の神戸も以前のような派手な補強はなし。むしろ最終ラインの要だったフェルマーレンの退団が痛い。

ただ、横浜Fマから獲得した扇原には注目だね。昨季の彼は攻守にわたって素晴らしい存在感を発揮。個人的には日本代表に選ばれてもおかしくないと思っていた。横浜Fマと神戸では前線にいる選手のタイプが違うのでかみ合うかどうかはわからないけど、新天地でも昨季と同じようなプレーを見せられれば面白い。

そのほか気になるチームを挙げるなら、"大型"ではなく"大量"の補強を行なった浦和(昨季6位)。高年俸のベテランを切って、主にJ2から有望な若手を多く獲得した。あのやり方で本当に優勝できたら大したものだけど、どうかな。

ただし、FWの枚数はどう考えても足りない。中盤の江坂と関根、さらに新加入の松尾も点を取れる選手とはいえ、彼らはストライカーじゃない。昨季故障がちだったユンカー頼みでは長いシーズンを乗り切れない。今後、補強をどうするのか、フロントのお手並み拝見だ。

そして個人的に一番注目しているのが鹿島(昨季4位)。ベルギーから2年半ぶりに復帰した鈴木は、オフのJリーグの移籍では一番の目玉だ。高さも速さも激しさもあって、得点のバリエーションも多い。ベルギーでもコンスタントに試合に出ていた。日本代表に選ばれないのが不思議だった。

ビッグマウスもプロらしくていい。鹿島ファンからすれば、入団会見での「全タイトルを獲(と)る」「2桁得点は必ず」という発言はうれしいよね。

強気なのはピッチ上のプレーも同様で、鹿島が2018年にアジアチャンピオンズリーグを制したときには、韓国の選手ともバチバチにやり合って、相手がいやがっていたくらい。そんな日本人の選手はなかなかいない。

その鈴木に加え、上田、エヴェラウドとそろう鹿島の前線はなかなか迫力がある。町田と犬飼の抜けた守備陣に不安があるけど、ひょっとするとひょっとするかもしれないね。

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