歴代最年少、かつ初となる元Jリーガーのチェアマンが誕生する。当然、期待は大きいね。
3月中旬に任期満了で退任する村井 満チェアマン(62歳)の後任として、J1札幌の会長を務める野々村芳和氏(49歳)が内定した。
まず規約上の上限となる4期8年を務めた村井チェアマンについては、本当にお疲れさまと言いたい。
彼はリクルートの元役員。ビジネスマンとしての実績を評価され、Jリーグ理事を務めていた。でも、本格的にサッカーをやっていたのは高校生まで。後に本人に聞いたら、まさかそんな自分がチェアマンになるとは思ってもいなかったし、1期2年で辞めるつもりだったそうだ。
そして、チェアマン就任早々の2014年3月、Jリーグの浦和vs鳥栖で差別的な横断幕がスタンドに掲出される問題が起きた。いきなり大きな決断を迫られ、世間の注目を集めた村井さんは、浦和に対してJリーグ史上初となる1試合の無観客試合という処分を科した。
当時、この処分はさまざまな議論を呼び、さいたま市にある村井さんの自宅周辺もいろいろと大変だったらしい。彼は埼玉出身で大の浦和ファンなのにね。あれは気の毒なタイミングだった。
でも、この件によってJリーグ内部、メディア、ファンに、村井さんは覚悟や信念を持った人物だなと印象づけられたとも思う。
村井さんは「俺が、俺が」という性格ではなく、誰に対しても物腰が柔らかい。実際、全国を回って現場の声に耳を傾けた。この僕にもたまに意見を求めてきた。そういうタイプのチェアマンはそれまでいなかったから新鮮だったね。
J1しかなかった昔と違って、今はJ2、J3もある。それぞれのカテゴリーでクラブの抱えている問題は違うわけで、それをひとつにまとめるのは大変だったと思う。
それでも、Jリーグや日本サッカー協会の関係者、さらにはメディア関係者など僕の知人に話を聞くと、「村井さんにもっとチェアマンを続けてほしい」「次は協会の会長をやってほしい」という声が多い。それだけ信頼されていた証拠だ。
その村井さんの後任となる野々村氏も、コロナ禍という難しい状況でのチェアマン就任。でも、逆に言えば、コロナを理由にしていろいろなことを変えるチャンスでもある。
彼のことは現役時代から知っているけど、頭がよくて、話がうまい。メディア受けが計算できる。何より札幌の社長時代には、潤沢な予算がなくても、実力面でも人気面でもしっかりと地に足の着いたチームをつくり上げた。経営者としての実績は十分だ。
もちろん、クラブの社長とJリーグのチェアマンの仕事は全然違うわけだけど、クラブ側がJリーグに対してどういう不満や問題を抱えているのかを野々村氏はよくわかっている。当然、その部分を大きく評価されて、今回のチェアマン就任となったはず。
49歳という若さは大きな武器。コロナの影響で各クラブが財政的に苦しんでいる今、リーグ全体によい変化をもたらすには時間がかかる。2年ではおそらく何もできない。その意味で若い彼は適任だと思う。前任の村井さんと同じく8年間やるつもりで、じっくりと取り組んでほしいね。