サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第240回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、Jリーグについて。ついに開幕したJリーグの2022年シーズン。開幕節では川崎フロンターレに負けはしたが、「FC東京のサッカーは、すばらしかった」と宮澤ミシェルは語る。
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初っ端からおもしろいゲームだったよな。2022年シーズンのJリーグの幕開けとなった川崎フロンターレ対FC東京は、レアンドロ・ダミアンの一発で川崎が勝利した。
3連覇を狙う王者が、昨年の得点王のゴールで勝ったというと盤石の勝利に感じるけど、実際は違ったよな。押し込んで何度もゴールチャンスをつくったのはFC東京。2、3点は決まっていて不思議はなかったよ。
試合には負けたけど、FC東京の内容はすばらしかった。高卒大型ルーキーの松木玖生をスタメンでしっかり起用したし、チーム全体がアルベル・プッチ・オルトネダ監督のやりたいサッカーをちゃんと体現した。あのサッカーを継続できれば、今シーズンは楽しみだよ。
川崎はGKチョン・ソンリョンのビッグセーブ連発がなければ厳しかったよな。白星発進はできたけど、CB車屋紳太郎が試合中に負った故障がどれくらいで治るかは気がかりだよな。山村和也が控えているとはいえ、ジエジエウは昨季に負った怪我で欠いているから、CBにケガ人が増えてくると3連覇に黄色信号が灯ることになるんじゃないか。
ほかの試合も開幕カードに負けず劣らずの白熱した展開だったね。すべてのチームが開幕に向けて調整してきたわけだから当たり前と思うかもしれないけど、なかなか難しいんだよな。上手くチームができたと思っていても開幕戦をやってみたら「違った」ってなったりするもんなんだよ。
一進一退の攻防になる試合が多かった開幕カードで、京都サンガ対浦和レッズは波乱の結果になったね。昨季はJ2で2位となって12年ぶりにJ1に戻ってきた京都は、チョウ・キジェ監督らしい攻守の切り替えの速さと球際の強さで主導権を握ってさ。FWピーター・ウタカがチャンスでしっかり決めるあたり、さすがって唸らされたよ。
一方の浦和は綺麗にサッカーをやろうとした印象だよな。Jリーグ開幕1週前にあった川崎とのスーパーカップに勝利したことが裏目に出ちゃったのかな。確かにリカルド・ロドリゲス監督のもとで天皇杯は制したけど、彼らはまだまだチャレンジャーだってことを忘れちゃいけないよな。まあ選手たちはそんな気はないとは思うけどさ。
浦和は次節がヴィッセル神戸戦で、その先もガンバ大阪戦、川崎フロンターレ戦と続くから、開幕戦の敗戦を引きずっている暇はないよな。反省すべきは反省し、修正点を炙り出して、しっかり切り替えて臨んでもらいたいよ。
開幕カードで見違えたのは鹿島アントラーズだったよ。ガンバ大阪の本拠地に乗り込んで3対1で勝利。レネ・バイラー新監督は新型コロナウイルスの水際対策で来日できないなか、岩政大樹コーチが指揮をとったけど、「このまま岩政でいいんじゃないか?」って思うくらいだったね(笑)。
それは冗談として、たぶんバイラー監督と岩政コーチなどのスタッフが、オンライン・ミーティングなどをしっかりやってきたと思わせたよね。あそこまで自分たちからアクションを起こすサッカーに変貌していたのには驚いたし、見ていて楽しかったよな。それがたまたまなのか、狙い通りなのか。そこを含めて、ここから先も注目していきたいね。
一方のG大阪は、片野坂知宏新監督の船出を飾れなかった。不動の守護神の東口順昭が体調不良で欠場だったうえに、FWパトリックが前半38分で一発レッドで退場になったのが痛かったよ。正直あのレッドはちょっとかわいそうな気もしたけどな。
このままいくと、パトリックは次節の浦和戦は出場停止だけど、その次の川崎戦では目が離せないよ。ここでの借りを取り返せる選手だから、Jリーグで10シーズンもプレーできているわけだからね。王者を苦しめるんじゃないかって期待しているんだ。
開幕からほとんどのカードで一進一退の攻防が展開されることも珍しいんじゃないか? 本当はすべてのチームについて語りたいところだけど、次節以降を見てからじゃないと判断のつかないチームもあるんだよな。ただ、間違いなく言えることは、30年目を迎えたJリーグはおもしろいってことだよな。11月まで一緒にしっかり楽しみましょう!