大事なのはこれからも活躍を続けて、よりいいリーグ、チームにステップアップできるかどうかだと語るセルジオ越後氏

明るいニュースだね。この冬、セルティックに移籍した日本人選手たちが順調なスタートを切った。

井手口が故障で出遅れたものの、旗手(はたて)がデビュー2戦目で強烈なミドルシュートを決め、さらにレンジャーズとの大一番で2得点1アシスト。前田も順調にゴールを重ねている。昨夏の移籍後すぐにインパクトを残した古橋(故障離脱中)に続いている。

スコットランドリーグのレベルについて言えば、セルティックとレンジャーズの2強とそれ以外のチームで力の差がかなりある。イングランドやスペイン、イタリア、ドイツなど欧州の主要リーグとは比べるまでもない。

また、セルティックには日本人選手の持ち味を理解するポステコグルー監督(前・横浜Fマ監督)がいるし、相手との力関係から攻撃の時間が長く、前線の選手はそもそも得点のチャンスが多い。

ただ、そうは言っても、名門チームだけにファンの見る目は厳しい。ダメなプレーをすればメディアに叩かれる。特に外国人選手は"助っ人"だから、目に見える結果をすぐに求められる。その意味では、旗手も前田もよくやっていると思うし、まずはファンの心をつかむことには成功したね。

セルティックはファンも多くて、スタジアムの雰囲気もすごい。旗手が「こんなにたくさんのお客さんの前でプレーしたことがない」とコメントしていたけど、ふたりともプレーするのが楽しくて仕方ないだろう。

でも、日本代表や日本サッカー全体のレベルアップを考えるなら、古橋を含めた彼らには今の状況に満足してほしくない。大事なのはこれからも活躍を続けて、よりいいリーグ、チームにステップアップできるかどうかだ。

昔と比べて、日本人の海外移籍のハードルは低くなった。Jリーグで大した実績を残していなくても、代理人がなんとかしてくれるケースもある。でも、その大半はベルギーやスコットランド、ポルトガル、オランダ、ドイツ2部など。そこから主要リーグにステップアップできた選手となると、その数はグッと減る。

特に攻撃的なポジションの選手は難易度が高く、ヒデ(中田英寿)、香川、本田、南野などひと握り。残念ながら、彼らもビッグクラブでは壁にぶち当たったけど、まずはそうした環境に身を置くことに意義がある。

もちろん、そこで成功できれば最高。でも、ヒデはスーパースターのトッティとポジション争いをしたわけだからね。世界のトップとの差がどれほどあるのか、挑戦しなければわからなかった。そして今度はそうしたクラブでレギュラーを取って、世界のトッププレーヤーとして認められる選手に出てきてほしい。

だからこそ、旗手や前田、古橋にはいち早くスコットランドからの脱出を目指してほしい。例えば旗手はあれだけパンチ力があるのだから、得点数を増やすためにFKも蹴ったほうがいい。前田や古橋も同様で、PKの場面で「俺に蹴らせろ」と自己主張するくらいでちょうどいい。

彼らはこれまで日本代表では出場機会に恵まれていない。森保監督とすれば、長い間代表でプレーしていて、チームのやり方をわかっているベテランのほうが安心感があるのだろう。そういう選手たちを上回るためにも、所属クラブで圧倒的な結果を出すしかないんだ。今後も活躍に期待したいね。

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