スコットランドリーグについて、福西崇史が深堀り!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第12回目のテーマは、スコットランドリーグ。セルティックに移籍した日本人選手たちの活躍により、日本での注目度が高まっているスコットランドリーグは、いったいどのようなリーグなのか? 福西崇史が解説する。

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スコットランドリーグのセルティックに移籍した日本選手たちが、目覚ましい活躍をしています。昨夏にヴィッセル神戸から移籍した古橋亨梧は、現在は怪我で離脱しているものの、それまでに見せた活躍は素晴らしかったですよね。

リーグ戦は14試合で8得点、ヨーロッパリーグでも9試合で5得点。決勝で2ゴールを決めて優勝に導いたリーグカップ戦を含めれば、26試合に出場して16ゴール。セルティックサポーターのみならず、多くの人たちから認められるのは必然のパフォーマンスです。

この古橋の活躍が好影響した面は少なからずあったと思いますが、今冬には前田大然(横浜F.マリノス→)、旗手怜央(川崎フロンターレ→)、井手口陽介(ガンバ大阪→)の3選手がセルティックに加わりました。

旗手はセルティックでのデビュー戦でスタメン出場するとマン・オブ・ザ・マッチに選ばれ、2戦目では2ゴールと衝撃的なデビューを飾りました。スタメンに定着してリーグ戦9試合で3ゴール2アシストと、結果を残しています。
 
前田も旗手がMOMに選ばれた試合にスタメンで起用されると、試合開始4分に先制ゴール。その後は日本代表活動のために一時的にチームを離れましたが、ここまでリーグ戦やリーグカップ戦などの公式戦12試合で5得点と存在感を示しています。

井手口は移籍直後に故障したこともあって苦しいスタートとなりましたが、ようやく怪我も癒えたので、ここからチーム内でのポジション争いを制し、出場機会を増やしていってもらいたいと思っています。

Jリーグから移籍した日本選手がすぐに活躍していることで、スコットランドリーグのレベルはJリーグよりも低いという捉え方もあるようですね。ただ、私はレベルどうこうというよりは、単にプレーの特長にハマっているだけと感じています。

スコットランドリーグは体が大きくて強い選手たちの揃うリーグです。そのため、"いま"は日本選手のスピードだったり、俊敏性だったり、テクニックだったりという面が通用しているということ。

"いま"を強調したのは、長いリーグ戦のなかでは、日本選手たちの疲労が蓄積してコンディションが低下したり、相手が対応策を練られたときには、苦戦する可能性はあるからです。

もうひとつ、日本選手が活躍できている理由は、セルティックを率いるのが2018年から昨夏までの4シーズン半、横浜F.マリノスを率いたアンジュ・ポステコグルー監督だからでしょうね。日本選手の特長を把握し、スコットランドリーグに通用する部分に目を向けて選手を獲得しています。そして、彼らが生きるような采配をしている。これが日本選手が活躍できている理由としては大きいでしょうね。

逆の見方をすれば、体が大きくてフィジカル強度が強いという武器を持つスコットランドリーグの選手たちを、日本選手が上回る活躍を見せられれば、もしかするとリーグのレベルが低いと言えるのかもしれませんよね。ただ、やっぱりレベルの高低よりも、大事なのは活躍がステップアップにつながるかどうかになるのだと思います。

セルティックは12チームで争うスコットランド・プレミアシップ(リーグ)では、レンジャースと並ぶ2強ですが、ヨーロッパという大きなステージで見たときには、選手がステップアップしていくためのリーグなのは否めません。これは中村俊輔(現横浜FC)が所属していた頃から変わりません。

チャンピオンズリーグ(以下CL)で言えば、スコットランドリーグから出場できるのは、2チーム。リーグの優勝チームが予選の3回戦からで、2位が予選の2回戦からとなっています。

同じくステップアップリーグに位置づけられ、日本選手が多くプレーしているベルギーリーグは18クラブあり、優勝チームがCL本大会の出場権、2位は予選3回戦からの出場権、3位はEL予選プレーオフの出場権が与えられています。

これを知ると「たいしたことない」と思われる方もいるかもしれませんね。でも、CLにしろ、ELにしろ、ヨーロッパ全土を舞台にするステージでプレーできるチームに所属していることが、ステップアップを目指すうえでは大事なのです。

しかも、スコットランドとイングランドのプレミアシップは別のリーグですが、国としては同じイギリス。当然ながらスコットランドリーグの情報は、イングランドでも共有されています。イングランドのプレミアシップは、現在は国別リーグで世界最高峰に位置しているので、そこからの視線も集めやすいという点で、セルティックに所属するメリットはありますよね。

もちろん、単に所属するだけではステップアップには繋がりません。試合に出て活躍する。当たり前ですが、これがあって初めてレベルのより高いリーグの上位クラブへのステップアップが実現するわけです。

日本代表の視点から考えると、海外リーグで活躍する日本選手が増えることは大歓迎ですよね。W杯で日本代表が上位進出を目指すためには、外国人選手の間合いや強度に慣れていることが大前提。日常的に世界トップレベルの選手とプレーしていれば、いざW杯で対戦となっても彼らに名前負けすることなく、臆せずに戦うことができます。

ただ、問題は新型コロナウイルスによって、親善試合を組むのが難しいこと。たとえば旗手がセルティックでインサイドハーフとして輝きを放ったからといって、日本代表がぶっつけ本番でインサイドハーフに旗手を起用できるかと言えば、それは得策ではないですよね。裏付けのない起用は丁半博打のようなものですからね(笑)

やはりテストマッチでチームに加えることでの収穫と課題を見極めてから本番に使いたい。だけど、それができないのが森保(一)監督にとっての悩ましいところだと思います。旗手に限らず、新たに台頭してきた戦力を加えたくても、それがしにくい状況下にありますからね。

ただ、W杯アジア最終予選でW杯出場権を勝ち取れば、W杯本大会のある11月までは時間ができます。新戦力を試しながら代表を練り上げていけるので、これから日本代表入りを狙う選手たちは、それまでは所属クラブでのパフォーマンスを上げて存在感を示し続ける。まずは終盤戦に差しかかっている今シーズンのリーグ戦で、しっかり結果を残し続けてもらいたいと思います。

■福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm
1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している

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